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「いや、でもだって…!」
リンに詰め寄るガイの鼻先を抑えて引き離す。
「…確かに」
エレオノーラとクロヴィスがリンの顔をまじまじと眺めた。
目鼻立ちも勿論そうだが、何となく雰囲気も似てる…気がする。
「気のせいだ!大体、俺はあんなに甘くねぇっ」
「…リン、俺の妹だったんだ」
「ぶっ殺すぞ、てめぇ!」
にじにじと詰め寄るガイを、リンが怒鳴りつける。
「えぇー!あたし結構、深刻なことを伝えたと思うんだけど」
気にするところはそこなのか、とサクラが口をとがらせる。
もっと国の根幹とか、世界を揺るがすとかそういう話のはずだ。
間違っても生き別れの兄妹の再会ドキュメンタリーなんていう規模の話ではない。
「とにかくガイの止まっていた時が動きだしたんだと思うの」
サクラがはっきりと告げた。
今、自分にできることは事実を告げることだけだ。
そう確信している目だった。
「それは妹の言っていた、ドラゴンの魔力を昇華できる状況が整ったってことだと思うよ」
サクラがリンを見つめた。
「リンの設計する魔方陣がガイの魔力を放出させることができるゲートになってるの。まあ、ドラゴンの魔力に惹かれて暴発しそうになってたみたいだけど、それも何とかしてくれそうなんでしょ?」
そのまま、リンの背後に視線をずらす。
カイルが検証データを取ろうと、装置を忙しく動かしているところだった。
「ん?ああ。ガイ君が誘発されそうな細々としたドラゴン系の小物は封じることは可能だと思うよ」
忙しく手を動かすカイルは、それ以上は語らず黙々と作業に戻る。
「そうか。ではあとは王家の不始末についてだな…」
それまで黙っていたクロヴィスが苦い顔で呟いた。
ガイが目を丸くする。
「ええー?先祖のやらかしまで背負いこんじゃうの、殿下」
あまりに屈託ない顔で言われて、クロヴィスも思わず苦笑した。
恐らく本気で言っているのだろう。
「まぁ、昨日のことも覚えてられねぇ鳥頭だからな。殿下がやったこと以外は殿下が気にする必要ねぇだろ」
リンもクロヴィスの頭をかき混ぜて笑う。
「二人がそう言ったとしても、俺は為政者として見過ごすわけにはいかないんだ」
クロヴィスの顔は国を治める者の顔だった。
「真面目ー」
「早死にしそうだな」
リンとガイは顔を見合わせて肩をすくめる。
けじめとか、そういったメンツにかかわることは自分たちには理解できない。
気の済むようにしてもらうしかない。
「お前たちが望んでいるわけでもないのに、すまないな」
「いーや。殿下が早死にしなきゃいいよ」
「適当にお詫びの品でもちょうだいね?」
何一つ解決してないが、随分とすっきりした気持ちで二人はクロヴィスの肩を叩いた。
この可愛い弟分があんまり気にしすぎないといいと、すこしだけ心配しながら。
「さて、あなた達のどうでもいい過去の話は置いとくとして」
エレオノーラがパシリと扇子を打った。
「どうでもいいだってさ」
「酷いよね」
チラリと視線を流して、エレオノーラが二人を黙らせる。
「あなた達にやってもらう仕事がまだあるのよ」
二人が目を瞬かせた。
「沈黙の海蛇……」
短く告げられた海賊団の名前にリンとガイが首をかしげる。
「私の可愛いリリアーヌをつけ狙った海賊団がこの世に存在すること自体が許しがたいのよ」
その目が海の向こうの海賊団を捉えるように細くなる。
不敵な唇がゆっくりと持ち上がった。
「分かるわね?十分にお仕置きしていらっしゃい」
今回のガイの暴走もそもそもはあいつらのせいだ。
リンとガイの目が不穏に光った。
なんだかんだで、暴れ足りていない。
「そりゃ、そうだ」
「色々お礼をしないとね」
二人は、過去と今の様々な鬱憤を晴らす絶好の標的を見つけた。




