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「リン、ガイ!久しぶりね!あ、あとクロヴィス殿下も!」
鏡越しに聖女サクラが明るく声をかけた。
リンとクロヴィスは少し首を傾げた。
「聖女、なんか年が違わねぇ?」
「リン、言い方…。少し大人になられたか?」
記憶のサクラはクロヴィスと同じ年だったはずだ。
鏡に映る女性は二十代半ば以上に見える。
「失礼ね!まだピチピチの27歳よ!」
「へえ?そうなんだ」
ガイだけが初対面のような気軽さでサクラに接した。
クロヴィスが何か言いたそうな顔をしたが、リンが短く制した。
「あいつにとって必要ない情報は記憶してねぇ」
「そ、そうか」
それは同時に問題ないから構うなという意味でもある。
「本当に感謝してるわ。あのまま遅れてたら帰っても浦島太郎だったもん」
「ウラシマ…なに?」
「こっちとそっちじゃ、時間の流れが違うってこと」
サクラがざっくりとまとめた。
今、そのことは重要ではない。
「二人のこと。あの時よりもう少し見えたの」
「…見えた?」
時間の流れが違うと言った。
サクラにとってはカイルに報告を受けた時よりかなり時間が経っているのだろう。
徐々にはっきりとしてきたという聖女の夢の話が始まった。
「過去のことだと思うよ」
語られた内容は先ほどリンがクロヴィスに見せられた歴史の内容と同じものだ。
「それは、さっき本で読んだぜ?」
「あ、そうなんだ。じゃあ、それ以外のことね」
サクラの目が金色に輝いた。
悪戯っぽく笑う。
「聖女の魔力、ピンクじゃなかったわ」
「どうでもいいわ!」
聖女の魔力について語ろうとするサクラをリンが怒鳴りつけた。
「気が短いな、相変わらず」
笑いながらサクラは鏡に自分の見たものを映し出した。
うっすらと鏡が発光し、揺らめいたと思うと古い型の服を着たガイが現れた。
傍には少し年下の少女がいる。
「……俺?」
ガイが首をかしげた。リンが肘で脇を小突く。
「黙ってみてろ」
『お兄ちゃん、大丈夫なの?』
『問題ないよ。俺はもともと魔力がでかいから心配ないって陛下も太鼓判くれたし』
『だけど、危ないよ!』
『大丈夫。これがうまくいったらお前の薬代も免除されるんだ』
鏡の中で交わされる兄妹の会話。
それだけで状況をくみ取ることは容易い。
クロヴィスの眉間の皺が深くなった。
リンは鏡面を食い入るように見つめている。
場面が切り替わった。
『お兄ちゃん!しっかりして、お兄ちゃん!!!』
『ご…めん…。リナ…、おれ…』
取り囲んだ兵士たちが一斉に弓矢を構えた。
『星喰いの集積塔でも扱いきれないほどの魔力だ、気を抜くな』
『いやっ!――やめて!!!!』
ガイを中心に周りを取り囲み、一斉に矢が放たれた。
少女の悲鳴が切り裂くように響いた。
――再び場面が変わる。
『……お兄ちゃん、死んじゃダメよ』
『リナ…』
少女の体が光をまとう。
眩い光は鏡面を真っ白に染め上げた。
『おれの体には収まりきらない魔力だったな…』
『ダメ、しっかりして!』
『この力は器を失って暴発する、逃げろ…リナ』
『いやよ…きっとその魔力を昇華する方法があるから!』
――少女の声だけが残り、鏡面はまたサクラを映し出した。
聖女の目はもとの色に戻っている。
「あの人、ガイだと思う」
「大分古い時代だよな?」
「妹のリナって子が、ガイの時を止めてたってことよ」
沈黙が落ちる。
ガイが恐る恐る声を出した。
「ねぇ…そのリナって子、リンに似てない?」
「言うな!!!」
どんな時でもとりあえず気になったことを先に突っ込みたい。
例えどんなことだったとしても。




