chapter19 「CVP(損益分岐点)分析」って何!?
ある日の放課後。
今年の文化祭「けやき祭」で、例年通りパソコンの早打ち大会と、なぜか中庭での模擬店として「焼きそば屋」を出店することになったパソコン部。
部長のお姉は、企画書作成のため頭を悩ませていた…
「さて…パソコンの早打ち大会で用意するのは「賞状」だけだから、今は放置していいとして…問題は、中庭での焼きそば屋ね…」
「そんな難しく考えなくても、テキトーにやればいいんじゃない!?」
「そういう訳には行かないのよ…例年、中庭の模擬店で計上された利益は、全額慈善団体に寄付することになっているから…」
「そっかー。展示ブースみたいに、装飾やら何やらにお金を使っておしまい!って訳にはいかないのか…」
「だったら…CVP分析をして、販売個数を決めればいいんじゃない?」
「私も今、それを考えていたところなのよ!」
「ただ、この前の授業で「名前」だけ出てきただけだから、CVP分析って何なのか、は詳しく知らないんだよねぇ…」
「確か…Cは「コスト」で、Vは「ビクトリー」、Pは…「パラダイス」…な訳ないか…」
「「費用に勝利して楽園へ…」って…なまじ間違っているとも言えない気がするけど…」
「CVP分析っていうのは、「コスト(費用)・ボリューム(販売量)・プロフィット(利益)」の関係を分析することを言うの。」
「ここで重要になってくるのが「BEP」ね!」
「「BEP」!?」
「「BEP」…「Break Even Point」。つり合いの取れた点の分かれ目。即ち「損益分岐点」のことで『この点の販売量で、利益は0になる』ということね。」
「なるほど!その点が分かれば、最低でも販売しなければならない個数も分かる、ということだね!」
「そういうことよ。CVP分析では、各原価要素を「固定費」と「変動費」に分けて考え、「固定費+変動費=売上高」となる販売個数を算出するのよ。」
「つまり、その販売個数が「BEP(損益分岐点)の販売個数」ということか。」
「そういうことね。グラフにすると、こうなるわ。」
「…普通、グラフって「0」の点がスタートになるものだけど、「固定費が発生するところから変動費がスタート」で考えるんだね!」
「そうね。例えば、工場の土地を他人から借りていると「支払地代」が発生するけど、これは毎月固定された賃借料を支払うことになるわ。」
「工場が稼働していても休止していても、地主に毎月支払わなければならない費用だから「固定費」として考えるのね。」
「電気代・ガス代・水道代の「基本料金(基本使用料)」や、工員に支払う賃金のうち「固定給(仕事があってもなくても、毎月支払うことを約束した部分の給料)」に該当する部分なんかも「固定費」になりそうだね!」
「そうね。」
「今回の文化祭に当てはめると、固定費は差し当たり「機材のレンタル料」「貸テント代」「調理用具代」といった所ね。」
「確かに、鉄板や燃料、テントをレンタルしたり、調理するための器具を用意するにはお金が必要だけど、これらのお金は「販売量が0でも発生する固定費」だよね~」
「今回、この固定費は全部まとめて2万円で抑える予定よ。」
「あとは、変動費と販売単価だけど…」
「今回の変動費だけど、調理をする私たちに報酬を支払う必要がないから、単純に焼きそば1人前に対する「材料費」ね。」
「焼きそばの材料になる「麺」「野菜」「肉」と…あっ!調理した焼きそばを提供する時の「器」や「割りばし」も考えないとだよね!」
「そうね!今回、焼きそばの材料と、提供時に使う器や割りばし代等を全部ひっくるめて、1人前50円が原価になると計算したわ。」
「そして、提供価格はお客さんでもある中学生にも優しい 100円 って設定よ。」
「となると…」
きゅっきゅっきゅっ…
「固定費の20,000円がスタートになって、それに販売量が1個増える毎に変動費の50円が発生。一方で売上は1個当たり100円だから、損益分岐点の販売量をxとすると、売上高=変動費+固定費で
100x=50x+20,000 になり…
100x-50x=20,000
50x=20,000
x=400
つまり「400個売れば損もしないし得もしない」ということね!」
「そういうことね!つまり、私たちは4万円の売上高を目指せばいいってことね!」
「慈善団体への寄付金を多くするためにも、販売目標は600食だね!」
「600食か…口では簡単に言えるけど、調理する人間がもっと必要よね…」
「美琴!これは煉先輩にも来てもらわなきゃかもよ…」
「大丈夫!煉先輩は、もともと私と一緒に、当日校内をデートする予定だったから…」
「そっ…そう…」
「(先輩…美琴とのデートを楽しみに来る予定なんじゃ…)」
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「はっくしゅん!!」
「どうした~煉。風邪か!?」
「いやっ。大丈夫だ!」
「何だか、嫌な予感がする…」
chapter20 に続く