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これは責任婚のはずでしたが、初恋の騎士様の愛が重すぎます~部下の責任を取ると求婚してきた副団長が外堀を埋めて溺愛してきます  作者: 青海きのこ


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第60話 5人の会食

今夜は魔獣料理を出す下町の店を、デリックが予約した。


(今世でも魔獣の肉を出す店は限られている。珍味的な扱いだ。前世的に言うと、ジビエ料理みたいなものかしら)


テーブルには、ドンッとステーキやら、揚げ物やら、スープやらが所せましと並んだ。


「デリック様、よくこんなお店知っているわね」

「私は結構魔獣料理が好きで、魔獣の薬の話を聞いたら食べたくなっちゃって」


小汚い店に、キラキラしたレスターが妙に浮いている。

周囲の客も、店員も、場に合わないキラキラオーラが気になっているようだ。


(やっぱり、誘ったのは早まったかしら……。考えてみたら、マチルダは平民だし、デリック様は男爵と言えど元は豪農ということもあって割と下町で食事には慣れているし、エルトン様は子爵家出身だけれど我が道を行くタイプだ。私も庶民的なお店には元々慣れているけど……。考えてみたらレスターは高位貴族だ。キラキラオーラを身にまといながら、お酒を飲む姿は正直――……)


「レスター、なんかお前店に似合わないな」


エルトンがキラキラオーラを纏いながら、酒を飲むレスターに突っ込んだ。


「そうですか。別に下町の店には騎士団の連中とも一緒に来ますし」

「そうなのか」

「似合わないって言うのなら、エルトン先輩だって別に似合ってはいないと思いますけど」

「そうか?」


エルトンは庶民には珍しい水色のサラサラヘアを、後ろで無造作に束ねている。


(確かに……。レスターほどではないけど、エルトン様もちょっと浮いているわね)


「店選び間違いましたか?」


デリックが少し心配そうに、エルトンとレスターを見た。


「いや。別にそんなことない。魔獣料理には興味もあるし。遠征中は魔獣を野外で調理することもある」

「そのなの!?」


サラは驚いてレスターを見た。

レスターはきょとんとして「そんなに意外か?」と言いながら、魔獣料理を口にした。


「うん。うまい。野外料理はここまで手を掛けないから、こういう凝った魔獣料理は新鮮だ」

「副団長に喜んでもらえて良かったです」


デリックも豪快に骨付き肉にぱくつき、から揚げを頬張っている。


「サラ、これおいしい。下味もしっかりしているから、臭みも感じないし」


マチルダそう言いながら、サラにから揚げを勧めるとレスターがサラの皿に取り分けたうえに、ナイフとフォークで食べやすいように小さく切った。その様子を見たマチルダが、ふふっとサラを見た。


「あ……レスター。ありがとう」


食べやすい大きさに切られたお肉をサラは口に入れた。

マチルダのニヤニヤ笑いと、エルトンの呆れ顔、デリックの見てない振りのリアクションに囲まれながら、なんとなく居心地が悪い。レスターはその様子は全く意に介さず、ステーキ肉も小さく切り分けていた。


「レスター、お前さ。過保護な父親みたいだな」


エルトンは、甲斐甲斐しく面倒を見るレスターにボソッと言った。

レスターは一瞬手を止め、「父親?」と聞いた。


「そんなに年は離れていません」

「そうだろうけど――。そんなだから、サラが子ども扱いされているって勘違いするんじゃないのか?」


遠慮のないエルトンに、レスターの眉間にしわが寄った。


「……なんであなたにそんなことを言われなきゃならないんですか? それに俺はサラを子ども扱いなんて」

「しているだろう。子ども用のぬいぐるみプレゼントしたり、夜会で酒飲ませなかったり、初夜……」


マチルダがとんでもない発言をしようとしているエルトンの口を慌てて封じた。


(なっ……なんてことを――)


サラは冷や汗が止まらなかった。


「エルトン様、何をおっしゃっているんですかぁあ?」


マチルダはエルトンの口を笑顔で封じながら、目で「黙れ」と告げていた。

サラはチラッとレスターを見たが、レスターがその様子に動じる様子はなかった。


(……大丈夫、かしら)


「そんなことより、副団長! 魔獣の野外料理の件ですが、どんなものを作られるんですか?」


デリックがあからさまに、会話を変えにかかった。

レスターは魔獣料理をナイフとフォークできれいに切り分けながら、上品に口に運んでいる。


「どんなものって……。串刺しで焼くことが多いな。あとはスープか。あまり繊細なものはない」

「そうなんですね。私は遠征に同行したことがないので、そういう新鮮な魔獣料理を口にすることがないので、すごく興味があります!」


デリックは必死にレスターと魔獣の話を続けている間、マチルダはエルトンの耳にごにょごにょと言っている。エルトンは「分かった、分かった」と言っていたが、本当に分かっているのか怪しいものだった。


「サラ、飲み物何か頼むか?」


空になりそうなグラスを見て、レスターが声をかけた。


「あ……うん」


(さっきまではお茶を飲んでいたけど――。なんかエルトン様にあんなこと言われると、レスターが飲ませてないみたいで頼みにくい)


「サラ、ワインならボトルであるぞ。グラスもらうか?」


エルトンがまた空気を読まず、サラに声をかけた。


「え? あ……」


返答に困っていると、レスターが「グラスをもらうか?」と聞いて来た。

サラを見るレスターの表情は、いつもの穏やかなものだった。


(飲みすぎなければ……いいのよね)


サラはレスターの問いに、こくんと頷いた。

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