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これは責任婚のはずでしたが、初恋の騎士様の愛が重すぎます~部下の責任を取ると求婚してきた副団長が外堀を埋めて溺愛してきます  作者: 青海きのこ


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第59話 レスターの影

「サラ、良いことあったでしょう?」


カフェテリアで食事を取っていると、マチルダに指摘された。


「えっ……あ、その……」


マチルダには散々相談に乗ってもらったので話す予定だったが、何と切り出してよいかが分からずにいた。


(いま……言う、べきよね)


サラはこくんと頷いた。


「その……実は――」


サラは赤面しながら、レスターと思いを打ち明け合えたことを説明した。


「なるほどねぇ。それでサラは朝から幸せオーラ全開でぼや~としているわけね」


マチルダはサラを見てニヤニヤ笑った。


「えっ! あ、それは……」


「そんなことない」と言いたかったが、今日の会議中も何度もレスターのことを思い出してしまっていたので、否定できなかった。

サラは赤くなった頬を抑えながら「ごめんなさい……」と言った。


「いいよ。ようやく両想いになったんだから、そりゃあ仕事どころじゃないわよね」

「そんなことっ……! 新薬開発には興味もあるし……」


(今世でははじめての新薬開発だし正直わくわくする。この前の様子を見ても、治癒魔法以外にも助けになるものが増えれば騎士団の助けにもなるはずだもの)


「そうだね! それにしても、人員補充のおかげで研修もできるようになったし、新しいことも考える余裕もできるし、副団長様々だね」


マチルダは照れるサラを冷やかした。

すると――カフェテリアに現れたエルトンが、当然とばかりに二人の席に同席した。

以前カフェテリアで会って以来、エルトンの昼食時間があえばこうしてマチルダやデリックなどと一緒に食事を取ることもあった。

サラはエルトンの顔を見た瞬間、レスターを思い出してドキッとした。


「なんだ……?」

「やっ……あの、その――」


『少しは警戒心を持ってくれ……』


そう言って切なげな視線で眉根を寄せたレスターの姿が蘇った。


(別にマチルダもいるし、お酒を飲んでいるわけじゃないし……そんなに気にしなくていいわよね。急に態度変えてもエルトン様にも失礼だし)


「なんだ今日はずいぶん挙動不審だな」

「そうなんですよ、エルトン様。サラ、今日はとっても変なんです」


マチルダはにやにやとサラを見た。

エルトンはその視線の意味は気にしていない。


「診療所の治療以来だな」

「あ……はい」

「君の夫は元気か? あの日はずいぶん機嫌が悪かったみたいだが」


(さすがにレスターの慇懃無礼な態度は、伝わっていたみたい……)


「あっ……先日は――すみませんでした」

「別に私は気にしていないが――。一体なんでレスターはあんな苛立っていたんだ? 疲れていたのか?」

「あ……それは――」


サラが何から説明しようかと迷っていると、「エルトン様」とマチルダがエルトンの耳元でひそひそと何やら伝えた。


「え! そうか。あいつは男色ではなかったのか」


エルトンはあまり興味がなさそうにつぶやいた。


「デリック様の説の方が当たりでしたね」


マチルダはいたずらっぽく笑った。サラの恋が実ったことをマチルダも喜んでくれているようだ。


「そのようだな。しかし、よく分からんやつだ。好きだったのならさっさと言えばいいものを。わけが分からん。やはり私は、人間よりも魔法の方が検証のしがいがある」


ぼそっとつぶやいたエルトンは、自分の説が外れたことには少しがっかりしているようだった。


「そうですか? あっ! エルトン様、そういえば、先ほど新薬開発の話で……」


マチルダがエルトンに魔力を活用した新薬について話した。


「ふむ。なるほど――。また君たちは面白そうなことを考えているんだな。この前の治療も、中々ユニークな発想で良かった」

「もし、実現化したらぜひご協力ください」

「そうだな」


エルトンはマチルダに微笑みかけた。


(そうか。1課に協力を求めると、エルトン様との接点もまたできるのか……)


サラはレスターの言葉をまた思い出していた。


(……別に、仕事上で関わるなとか、そいうことではないものね。でも、それでレスターが嫌な思いをしていたら私も嫌だし)


またサラはぼんやりとレスターのことを考えていた。


「サラ? ねえ、いいの?」


また、ぼんやりしていたサラにマチルダは声をかけた。


「え? あっ、うんって……何?」

「聞いてなかったの? また、デリック様も誘って夜ご飯でもって相談していたの」

「え?」

「新薬の話もしたいし」

「また新しい治療法を考えるのもいい」

「えっと――」

「何かあるのか?」

「その……」


盛り上がる二人に、サラは水を差せずにいた。


(この前はレスターの遠征のときだったけど……今は――)


「なんか、用事でも……。あ、そっか。副団長が戻って来ているんだから、夜の外出は難しいわよね」

「えっ……あ、その――」


マチルダはニヤニヤとサラを見た。


「この前は副団長もいなかったものね」

「えっと、その……はい」

「なんだ? レスターが家にいるといけなくなるのか?」

「そんなことはありませんけど……」


(レスターが心狭い夫だと思われるのも……)


「エルトン様、新婚なんですから」

「レスターも誘えばいいんじゃないか?」

「え?」


エルトンが思わぬ提案をした。

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