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これは責任婚のはずでしたが、初恋の騎士様の愛が重すぎます~部下の責任を取ると求婚してきた副団長が外堀を埋めて溺愛してきます  作者: 青海きのこ


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第45話 重すぎる結婚式(後編)

(――この日をどれほど待ち焦がれていたか!)


サラを式場で待つレスターは、平静な顔を装いながらも、内心は長年の思いが爆発しそうだった。聖堂の扉が開かれた瞬間、サラと花嫁介添え人のユーニスが現れた。レスターの目にはウエディングドレス姿のサラが神々しく輝いて見えていた。


(ああ、最高にきれいだ……)


あの日サラが選んだ大人びたドレスは、内心レスターを驚かせていた。


(大胆に背中が見えるデザインを選んだときは、正直、理性を保てるか自信がなかった……。サラの肌を他の男も目にするのかと思うと、内心腹立たしくも思ったし――。でも、あのドレスは確かにサラの美しさを引き立てている……)


レスターの眼前には、ウェディングドレスを美しく着こなすサラがいた。


(これだけ美しい姿を見られるとは……。ああ、長めのヴェールで背中は隠したつもりだったが、透けて見えるのが余計に艶めかしい……)


レスターはサラの姿に見惚れながら、激しい喜びと嫉妬心とでおかしくなりそうだった。

6年間、レスターはサラを遠くで見守っていた――。

あどけなかったはずの少女を、美しい大人の女性に成長させるには十分過ぎる月日だった。


(あの頃は邪な思いは抱いていないと言っていたが……。今のサラには――正直、邪な思いしか抱いていない。馬車の中で口づけをしたときは、本当は少しだけ触れるつもりだったのに、離せなくなってしまったし……。うっとり俺を見るサラが可愛すぎて)


ユーニスはレスターにサラを預けると、小声で「……顔」とつぶやいて席へと戻った。


(しまった。また、緩んでいたか)


レスターはサラのドレス姿に満足して目を細めていたが、少し顔を引き締めると、サラの耳元に「きれいだ」と囁いた。ヴェール越しでも、サラの顔が赤らんだのが分かった。


(かっ……かわいい!)


レスターは顔面がまた崩壊しないように気を遣いながら、サラをエスコートし司教と向き合った。司教は聖書に手を置きながら恭しく儀式を執り行った。


「レスター・ウェズリー・ヴィヴィアン」

「はい」

「サラ・ジャスミン・ハーヴィー」

「はい」

「二人の婚姻を女神の御前に誓います。互いを愛し、慈しみながら、王の良き臣下として、国のために力を尽くすことを女神に誓えますか」


司教が女神像に向かい、二人に恭しく問いかけた。


「「誓います」」


二人の声は静かに重なった。

ヴェール越しのサラの顔は、穏やかにほほ笑んでいる。

改めて向き合うと、レスターは逸る気持ちを抑え、サラの指に結婚指輪をはめた。


(これで……本当にサラは俺の――)


内心の興奮を必死に隠しながら、レスターはサラのヴェールをそっと上げた。

レスターはゴクリと息を飲んだ。

ヴェール越しに見ていたサラも美しいと思っていたが……。

レスターの顔を見るサラの頬が、ポッと赤らんだのが分かった。

そして、そっと目を閉じた。

レスターはその顔を見た瞬間、馬車で口づけしたときのサラを思い出した。


(こんなところで……止められなくなったら困るな……)


レスターは唇に激しく触れたい思いを抑え、サラの柔らかな頬にそっと優しい口づけを落とした。

その瞬間、大きな拍手で包まれ、二人の婚姻を祝福する鐘が高らかに響き渡った。


(ああ、最高だ。この日を、この瞬間を、何度夢見たことか)


レスターは招待客に笑顔を振りまきながら、サラをエスコートして聖堂を出た。


◆◆◆


「サラ、とても素敵なドレスね」


招待客に挨拶しているレスターと離れていたサラに、メアリーとイヴが声をかけてくれた。


「メアリー様! 今日はありがとうございます」

「とても素敵な式だったわ」

「レスターもサラも王子さまとお姫さまみたいよ」

「ありがとう、イヴ。イヴも今日のドレス、とっても素敵だわ」


イヴのドレスはおとぎ話の妖精のようにふわふわした愛らしいドレスだった。


「ありがとう、サラ」

「サラ、今日はおめでとう。この前は飲ませすぎてすまなかったな」


頭を掻く団長をメアリーが肘で突いていた。


「いえ。こちらこそ。ご迷惑をおかけしてしまって……」

「大丈夫だったか?」


サラはあの日のレスターを思い出した。


(大丈夫かと言われると……まあ)


「――……ええ。なんか、疲れが溜まっていたのかもしれませんね」

「今日は大丈夫か?」


団長は招待客と話すレスターをチラッと見た。

特にいつもと様子は変わらない。


「まあ、大丈夫そうだな。サラは何を飲む?」


団長がシャンパンとジュースを運んで来た使用人を呼び止めた。


「じゃあ、シャンパンを」


そういうと、団長はシャンパングラスをサラに渡した。


「ありがとうございます」

「この前のことに懲りずに、またいつでも遊びに来てくれ」

「ええ。今度はぜひ我が家にも」

「わあ! レスターとサラのお屋敷? 行きたい!」

「イヴ、レスターたちの生活が落ち着いたらだぞ」

「分かってるわよ。きっとよ、サラ」

「ええ、もちろん」


そう言って団長家族と別れて、お義母様たちに挨拶をしようとしていると、背後からレスターが現れた。サラとサラのグラスをチラッと見た。


「レスター、もう挨拶はいいの?」

「ああ。一通り終わったよ。一人にしてすまなかった。話過ぎて喉が渇いた」

「あ、じゃあ、飲み物を……」

「これ、少し貰ってもいい?」


そう言って、サラが持っていたシャンパングラスを取った。


「え? シャンパンなら新しいものを……」


そう言いかけていると、サラの手からグラスを取るとシャンパンを飲んでしまった。


「あ……」

「ごめん。飲んじゃった。すぐ飲み物をもらって来るよ」

「いえ、それはいいんだけど……。お酒、大丈夫?」


サラが心配そうにレスターを見ると、レスターは気まずそうに笑った。


「平気だよ。この前醜態さらしたから偉そうな顔はできないけど、これくらいで普段は酔わない。今日は気分がいいしね」


そういうと、レスターは近くの使用人からジュースを受け取るとサラに渡した。


「どうぞ」

「あ……ありがとう」


サラはジュースに口をつけながら、レスターが持ってきたグラスを不思議に見た。


(さっきまでシャンパンを飲んでいたの分かっているはずなのに)


「レスター」

「ん?」

「私、お酒、飲めるのよ」

「うん」


レスターは不思議そうな顔のサラに、笑顔を向けた。

サラはその笑顔に不思議な圧を感じていた。


「いつも……ジュースを持って来てくれるから、飲めないと思っているのかと思って」

「ああ、そうだったかな?」


サラは先ほどレスターが持ってきたジュースをチラッと見た。

レスターはサラの頬をそっと撫でた。


「ちょっと赤くなっているから」

「え? あ……そう?」


レスターはこくんと頷いた。


「俺が言うと説得力ないけど――。あんまり酔った姿を見せるのは危ないから」

「……危ない?」


(レスターはよく危ないとか言うけど……一体何があるというのかしら。彼はお兄さま以上に過保護なのかも……)


レスターは頷くと、今度は一緒に他の招待客へと挨拶をしに向かった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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