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これは責任婚のはずでしたが、初恋の騎士様の愛が重すぎます~部下の責任を取ると求婚してきた副団長が外堀を埋めて溺愛してきます  作者: 青海きのこ


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第44話 重すぎる結婚式(前編)

予定よりも3時間も前から、レスターは花婿衣裳を着て控室で待機していた。

窓際からこれから挙式を行う式場をかれこれ1時間は眺めていた。


(ダメだ。顔が……にやける)


窓ガラスには、レスターの端正な顔立ちが反射している。


(昨日は嬉しすぎて、よく眠れなかった……。ああ、ついに、今日、サラは――……俺のサラになる!)


レスターは密かにガッツポーズをしていた。


(これでもう、誰にも何も言わせない。ユーニスとの関係を誤解されかけたときは、焦ったがサラも信じてくれたし。これからは慌てることはない。じっくりとサラの心も……身体も、手に入れていけばいい……。何事も焦りは禁物。ここまでどれだけ待ったと思っているんだ)


思わずまた口元がにやけそうになるのを、レスターは引き締めた。


「ずいぶん楽しそうだな、レスター」


背後から慣れた声が聞こえた。窓ガラスに反射した姿を確認すると、ローレンスだった。


「お前っ……勝手に入って来るなよ」

「ハンナに何度も声をかけてもらったよ。お前がずっとニヤニヤニヤニヤしているから悪いんだろうが……」


侍女長のハンナが困り顔でレスターを見た。

ハンナはレスターの乳母も勤めた女性で、今後はサラのサポートをしてもらう予定だ。


「別に……ニヤニヤなど――していない」


ローレンスとソファにかけ、ハンナが入れてくれたお茶を口にした。


「ついにお前が俺の義弟になるのか」


ローレンスは澄ました顔を取り繕うレスターに言った。


「お義兄さまとでも呼べばいいか?」

「やめろ。気持ちが悪い。それにしても――……お前、3時間前からいるって? 花嫁じゃあるまいし、どんな準備があるんだよ」

「いいだろう、別に」

「家にいてもそわそわするからか? そういえば、サラも朝から落ち着かない様子だったな」

「サラも!? サラに会ったのか?」


レスターはサラの名に過剰に反応した。


(本当こいつ、俺の前で取り繕うの、やめたと思ったら分かりやすい反応するな)


ローレンスは内心呆れながら、「俺はサラの兄だからな。朝の様子も、ドレスに着替えてからも、会いたい放題だ」と、謎のマウントを取った。


レスターはローレンスの謎のマウントにギラッと目を光らせたが、少しすると「まあ、これからは俺がサラに会いたい放題になるんだな」と、やり返した。


(シスコンのローレンスはさぞ悔しかろう……。アカデミーの頃から、成績でも競い合っていたが、まさかサラを巡って競い合う日が来るとは思ってもみなかったが。今回は俺に軍配が上がったな……)


また、レスターがニヤニヤすると、ローレンスは呆れた顔をした。


「レスター、式までにもう少し顔なんとかしろ」

「なんとかって……」

「ニヤニヤニヤニヤニヤ、気持ち悪い」


ローレンスの歯に衣着せぬ物言いで言い放った。

レスターは少しむくれつつも、表情を戻しながら「仕方ないだろう」と言った。


「俺がこの日を何年待ったと思っているんだ。母の妨害に遭い、ハーヴィー伯爵には相手にされず、デニスの馬鹿に先を越され……。サラに会うとおかしくなりそうだから、婚約するまで遠くで見るだけで我慢し続けたんだ」


(……おかしくなりそうって……思った以上にやばいのか。こいつは)


シスコンのローレンスでも、レスターの発言には若干引くほどの重さを感じていた。


「――……なんだよ」


レスターはローレンスの視線に気づき、睨んだ。


「いや……、ちょっとサラの身が心配に……」

「俺を獣かなんかだとでも思っているのか。この前のだって、誤解だって言っただろう」

「それは分かったが……飢えた狼の前にかわいい兎を差し出す心境だ」

「やっぱり俺を獣だと――……」


レスターはギロッとローレンスを睨んだ。


「これからは……――ちゃんと、サラの気持ちを待つ」


レスターはローレンスにポツッとつぶやいた。


(ここまで強引に進めた自覚はあったんだな……)


「もう、今日から俺のサラなんだ。焦る必要はない」


レスターの顔が自信に漲っていた。

かと思ったら、「――……焦って、嫌われたく……ない」とぽつりとつぶやいた。


ローレンスはそんなレスターの様子に瞠目した。


(おっ……乙女なのか。お前は。鬼の副団長じゃないのかよ……)


「別に――サラはお前を嫌ってないだろう」


ローレンスの声音には初恋を拗らせた哀れな親友への同情が混じっていた。

レスターは縋るように、ローレンスを見た。


「子どもの頃からレスターには懐いていたし」

「兄のように慕っていただけだろう」

「サラはああ見えて自分の意思もしっかりある。流されて嫌なヤツと婚約なんかしないだろうし」

「それは……そうかもしれないが、ローレンスが言っていたんだろう。サラが泣いていたって」

「え? なに、まだそのこと気にしていたのか?」

「気にするだろう、そりゃ。結局サラが落ち込んでいた理由も分かってないし」


ローレンスは、そういえばレスターは真面目な男だったと思い出した。


(あの日は心配していたけど……あの後は心配な様子はなかったし――)


「まあ、大丈夫だろう」

「なんだよ、それ」

「結婚前、女性は精神不安になるものらしいし……」

「精神不安!?」

「一般的な話だ。サラは今日は――……」


朝から早く起きてそわそわしていたサラを、ローレンスは思い出していた。


「今日は?」

「今日は……レスターとの結婚式が楽しみみたいで、そわそわしていた」


ローレンスがそういうと、レスターが引き締めていた顔がまた崩れてしまった。

お読みいただきありがとうございます。

ようやく結婚まで辿り着きました。

また、タイトル変更しました。

引き続きよろしくお願いします。

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