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これは責任婚のはずでしたが、初恋の騎士様の愛が重すぎます~部下の責任を取ると求婚してきた副団長が外堀を埋めて溺愛してきます  作者: 青海きのこ


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第21話 事件の後始末

「サラ!」

「マチルダ!」


診療所に飛び込んで来たマチルダに、サラはぎゅっと抱き留められた。


「大丈夫? なんとかなったようだって、マリアから聞いたけど」

「――マリア?」


団長も、課長も、その名に目を眇め、デニスは驚きの表情をした。


「そこに、いたのよ。心配で手伝いに来たって言っていたけど……」

「……部屋には――入って来なかったのね。入りにくかったのかしら?」


そう言いながらも、マリアがそんな性格か、疑問が過った。


(もしかしたら、私のミスを見に来たのかもしれないわね。マリアのことを気にしたからって、私のミスが消えるわけじゃない。気にしたって仕方ないわ)


扉を開けても、そこにはもうマリアの姿はなかった。


「戻ったのかしら――……」

「変ね。マリアだったら、手伝いに来たことをアピールしそうなのに」


マチルダはぽつりとつぶやいた。

デニスはその発言にピクッと反応した。


「アピールって……」

「あ、やだ。すみません。デニス様がいると気が付かず……」


マチルダは、慌てて口を手で隠した。


「いや、その――。それは、どういうことなんだ?」

「どうって……」


マチルダは気まずそうに視線を彷徨わせた。

課長も、サラも、目を伏せた。

その様子を見て、団長が一つため息をついた。


「デニス。おまえは、人間の表面上の姿を信じすぎる」

「表面、上――?」

「他国と戦になれば、互いに裏の書き合いだ。その人間の本質を見抜く力を身に付けないと身を亡ぼすぞ」

「……――はい」


デニスは団長の言葉に、深刻な顔をして黙り込んだ。


「ところで……。全員の無事が確認できたところで、話を聞こうか」


騎士団長が、鋭い眼光をサラと課長に向けた。

場所は診療所の奥にある別室。そこには責任者である3課の課長と、当事者であるサラが呼び出されていた。


「サラ・ハーヴィー。君の功績は大きい。だが、それとこれとは話が別だ。なぜ、君ほどの人物が、ミツリン草などという初歩的な混入ミスを犯した?」

「それは――……」


サラは唇を噛んだ。

採取した薬草のチェックは、マチルダや他の職員も含めて何度も行った。


(自分でも……情けないとしか言いようがない……。レスターのことで浮かれていたのかしら……。だとしたら、本当に恥ずかしいミスだわ)


「弁明の……しようもございません」

「サラくん、君個人のミスではない。全ては管理者である私の責任だ」


課長はサラを庇うように、強い口調で団長に告げた。


(いつもは……押しが弱い課長なのに。こんなときばかり――)


団長は、課長とサラを一瞥すると厳しい表情をした。


「責任の所在は後日事故報告とともに確認するとして――。なぜ、このようなことが起こったのか。再発がないように、徹底しなければ意味がない。この件については、あらゆる可能性を考えて徹底調査し、包み隠さず私に報告するように」

「分かりました」


課長とサラは、団長に頭を下げた。


◇◇◇


その後、調査はすぐに始まった。

3課の人間は、今日は課長、サラ、マチルダを除き退勤していた。

ひとまず、採取時にも一緒にいたマチルダとともに時系列に確認しようとなった。


「サラはミツリン草が混入していないか、何度も確認していました」


マチルダは採取時の様子をそんな風に課長に報告してくれていた。

基本的には自ら採取した薬草を使用するため、他職員が採取した薬草を混ぜることはない。


「私も一緒に確認していましたが、ミツリン草が混入していたとは……」

「でも、サラくんが作った回復薬からミツリン草の成分が検出されている。いつ、どこで、混入したのか。採取時でないのならば、精製中に混入させたか」


課長は、おでこを抑えながら考え込んでいた。


「サラ、精製中は何もなかったの? いつもと違うことは?」

「え……と、何も――……」


(延々と作業していただけだから、いつもと違うことなんて……)


「――そういえば、私がマリアくんにサラくんを呼んできたもらったときがあったな」

「あ……そういえば」

「あのときは、この部屋に鍵をかけたか?」

「鍵? いえ、特に……。短時間の打ち合わせだと思ったので――。課長と話したのは10分程度でしたし、事務所内だったので。不審者が侵入したら分かりますし……」

「まあ、そうだな」

「私が――……採取の際、見落としたんだと思います……」


(課長やマチルダは、それ以外の可能性を考えてくれているようだけれど。どう考えても、私の凡ミスだ)


「いや、サラくん。君の気持ちは分かるが、団長にもあらゆる可能性を、と言われているんだ。君のミスの可能性は濃厚かもしれないが、そうではない可能性も検討しておかないと……」

「はい……」


課長がそう言った瞬間、ノック音が聞こえた。


「なんだ?」


「課長、お客さまです」

「客?」


課長がそういうと、「2課のデリック・ビッツと申します。課長に大切なお話が」とデリックが現れた。


(デリック様が、一体――……なぜ?)


「やあ、サラくん」

「デリック様……、どう、なさったんですか?」

「いや、エルトン様に回復薬の件を聞いて――」

「あ……」


(そういえば、エルトン様とデリック様は親交があるようだった)


「そうなんです……。私のミスで――」


デリックは、眼鏡の蔓をクイッと持ち上げた。


「それ、本当に君のミスなのか?」

「え?」

「ビッツくん、君、何か知っているのか?」


課長が自信満々のデリックに、一縷の望みを託したようだった。

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