表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは責任婚のはずでしたが、なぜか夫の愛が重すぎます  作者: 青海きのこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/39

第12話 強かなお披露目

レスターは口元に笑みを称えたまま、シミオンを見ている。


(なんだか、空気が冷えたような……。何なの?)


不穏な空気を感じて二人を見たが、シミオンはのほほんとした調子を崩さない。


(私の、気のせい?)


「ユーニス、じゃあそろそろ私たちも、挨拶回りをしようか」


そう言って、シミオンはにこやかにユーニスを見た。


「お姉さま、シミオン様、また後で。今日は久しぶりにお話できて嬉しかったです」

「うん。サラちゃん、今度良かったらモンロー子爵家にも遊びに来てね。――ヴィヴィアン侯爵と」


シミオンはそういうとレスターに意味深な笑顔を向けた。


(本当に、なんなのこの空気……)


不思議に思っていると、レスターは今度は穏やかな笑みで「ぜひ」と答えていた。


「俺も遊びに行くよ」

「お兄さまもあんまりサラばかり構っていないで、そろそろ真剣にお相手を探した方がいいわよ」

「ユーニスまでそんなこと言うのかよ」

「今日の夜会、少しは頑張った方がいいわ。なんだったら、私のお友達を紹介しましょうか」


「はいはい、分かったよ」と、面倒そうに答えると、レスターに「じゃあ、サラを頼むよ」と声をかけて人混みの中へ消え、シミオンもユーニスの手を取って、のほほんとした笑顔のまま会釈して去っていた。


(二人きりに、なっちゃった……)


いつもよりも視線が近いレスターをチラッと見る。

心臓の鼓動が早くなるのを感じる。


(夜会仕様のレスターは、いつも以上にかっこいい。いつもの騎士服もかっこいいけれど、ブラウンのタキシードも最高に似合っている。私の……髪色に合わせてくれたのかしら? なんだか、こういうの、くすぐったい)


「サラは、ああ言う男が好みなのか?」

「――え?」


レスターに見惚れていると、思わぬ真剣な瞳がサラを射抜いた。


「モンロー次期子爵。ユーニスの夫だ。ああいう――……なよなよした男が、タイプなのか?」


レスターの声が、いつもより低い。


(なよなよって……なんか、ちょっと悪意が――)


「は? え? なんで?」

「褒められて、顔を赤くしていただろう」


(それは――……身内以外に褒められ慣れていないだけで……)


「レスターが褒めてくれたときだって、赤くなったと思うけど……」

「それはいいんだ」


(レスターはよくて、シミオンはだめ? そんな怒るようなこと?)


レスターの態度がよく分からないと思ったが、ハッとした。


(そうだ。お姉さまとの婚約は、シミオン様がいたからダメだったんだ。ということ……レスターにとって、シミオン様は鬼門? 癒し系のシミオン様と、少し無表情な美形のレスターではタイプはかなり違う。――もしかして、レスターは、シミオン様にコンプレックスを……?)


サラはレスターの態度に合点が言った。


「レスター、誤解しないで。確かにシミオン様の笑顔には癒されるけど、ときめいていたわけじゃないの。それより、さっきからレスターのタキシードが素敵だなって、見惚れていたのよ。本当に」

「え?」


レスターはサラの必死の弁明に耳を赤くした。


「そうなの、か?」

「ええ! とってもかっこいいって思っていたの」

「そ……そう、か。君に――……そう、思っていただけるのは、光栄だ」


レスターはサラに少し照れながら微笑んだ。

レスターの微笑みに、周囲の貴族女性からも小さく悲鳴が上がった。


(分かる。レスターの笑顔は、破壊力があるわよね。レスターもいつもの様子に戻ったみたいで良かった)


思わず声を上げた女性に、共感してしまう。


「じゃあ、一緒に挨拶に回ろうか?」

「え、ええ、もちろん」


(とは言ったものの、レスターのあいさつ回りに付いて歩くなんて、本当に婚約者になったみたい。いいのかしら。緊張するわ)


「サラは微笑んでいればいいから、あまり気を遣わないで」


そう言われると、国王一家への挨拶の列にサラはレスターと並んだ。


(国王一家へのご挨拶は、デビュタントのとき以来だわ。緊張する……)


「レスター、今日は可愛いお嬢さんをお連れなんだな。婚約した話はまだ聞いていないな」


サラとレスターを見て、国王はにやっと笑い、気さくにレスターに声をかけた。

ヴィヴィアン侯爵家は、王家とのつながりも深い。

普段から交流があるのかもしれない。


「ええ、いま口説いている真っ最中ですから」


レスターはさらっと国王にとんでもないことを言った。

レスターの言葉に、国王一家だけではなく、周囲にいた貴族たちも、当事者のサラも驚きに目を見開いた。


「え!? レ、レスター?」


私の慌てっぷりを見て、王妃は思わずクスクスと笑った。


「レスターは中々浮いた話がないから心配していたけど、可愛らしいお嬢さんがお好みだったのね」

「サラの魅力は見た目の愛らしさだけではありませんが」

「あら、そう。ずいぶんと入れ込んでいるのね」


(レスター、王妃殿下を前に……一体、何を考えているの。お兄さまも外堀がどうのって言っていたけれど、確かになんだかどんどん断る方向の道は塞がれている気がする。こうやって自然と道を塞ぐやり方も――……前世で読んだ詐欺師の手口と重なってしまう。いや、レスターは違うって分かっているんだけど。でも、こんな風に、用意周到に立ち回られると……)


国王一家との会話の最中も、なんとも言えない不安が募っていた。


(ああ、ただ微笑んでいるだけが、こんなに大変だとは思わなかった)


「サラ、と言ったかしら?」

「は……はい。サラ・ジャスミン・ハーヴィーと申します。ハーヴィー伯爵の次女でございます」

「ふふ、レスターを宜しくね」


王妃に意味深にほほ笑まれ、なんと返答して良いか分からず、曖昧な返答をして切り抜けた。


国王一家の挨拶がなんとか終わると、気が抜けて足がふら付いた。


「大丈夫? サラ」

「き……緊張、しました」

「大丈夫、問題なかったよ」

「レスターが……変なこと、言うから……」

「変なこと? 変なことなんて言ってないだろう。私は事実しか口にしていないよ」


レスターはサラに余裕の微笑みを浮かべる。


(うっ……全然、勝てる気がしない)


「疲れた? 飲み物を取ってこようか?」


レスターがそう言った瞬間、彼を呼ぶ声に引き留められた。


「レスター!」


レスターより10歳は年上だろうか。

日に焼けた逞しい身体の男性――騎士団長が奥さまを連れだって、声をかけてきた。


王宮で見かけたことはあったが、こんな風に対面するのは初めてだ。

かなりいかつい見た目ではあるが、穏やかな笑顔が印象的だ。


(騎士団長も、奥さまも、お優しそうだわ)


ホッとしたのもつかの間、騎士団長の発言に激しく動揺した。


「こちらが、レスターが溺愛しているという噂のご令嬢かな」

「で、で、溺愛!?」


ふふふ、と騎士団長夫妻が楽しそうに微笑む。


「ええ、サラです」


レスターは平然と私を紹介してくる。


(さっきから、レスターはなんで平気なの)


サラはなんとか内心の動揺を押し殺し、カーテシーをした。


「サラ・ジャスミン・ハーヴィーと申します。ハーヴィー伯爵家の次女で、魔法3課に勤めております」

「ああ、3課には優秀な新人が入ったと聞いているよ」

「それは間違いなく、サラのことですね」

「なんでレスター、君がそんなに得意気なんだ」


騎士団長もレスターの珍しい態度に、楽しそうに笑っている。

団長と副団長が揃っているからか、騎士団の方々が挨拶に集まって来た。

先ほどから甘々なレスターも、さすがに職場モードの顔で挨拶をしている。


「サラ、喉が渇いただろう?」


レスターが給仕から飲み物をもらってくれていた。

サラに差し出したものは、オレンジジュース。


(え? 夜会で、ジュース? 私、お酒が飲めないわけではないんだけど……)


ちょっと不思議に思いながらも、サラはレスターからジュースを受け取った。


(なんか……子ども扱い、されているみたい)


オレンジジュースを飲むサラを見て、騎士団長の奥さまが「レスターったら、本当に過保護なのね」と笑っていた。


「過保護と言いますか……。子ども扱いなのではないかと……」

「あら、そんなことはないでしょう?」


レスターと団長は、まだ次々来る騎士団員と話している。


(仕事場の顔は、いつもと違うけど――……それはそれで素敵だわ)


ぼやっと彼の横顔に見惚れていると、騎士団長の奥さまが「酔われると心配なのよ」と、耳元で囁いた。


(そう……なのかな?)


レスターに渡されたオレンジジュースを眺めていたら、騎士団長の言葉に、サラの心臓がビクッと跳ねた。


「デニスか」


レスターの後ろに立つ私を見て、デニスはハッとしたような顔をした。


「サ……サラ?」


デニスはドレスアップした私の姿に、驚いたような声をあげた。


「デニス、()()サラを気安く呼ばないでくれないか」


レスターは、デニスのつぶやきに反応し、鋭い視線をデニスに向けた。


「あ、副団長……も、申し訳、ございません――」


(デニスも、噂を聞いているのかもしれない。マリアがあることないこと話していそうだけど……)


デニスの隣には――マリアが当然のように寄り添っている。

今日のデニスとマリアは、デニスの瞳の色であるブルー系の衣裳で合わせている。

レスターが3課に来たとき以来、マリアからは直接攻撃はされていない。


ただ、何かにつけて睨みつけられてはいた。


今日も今日とて、マリアはサラの頭のてっぺんからつまさきまでを眺めた。

視線が何往復かしたかと思うと、いつもの冷笑ではなく、苛烈な瞳を向けられた。


(なんだっていうのよ……)

次回、ついに2人との対決のときです。

続きが気になっていただける方は、ぜひブクマお願いします。リアクションや感想、ご評価などもいただけますの励みになります!宜しくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ