表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エトワール  作者: 都望偲
12/15

不安定な日々

その日から、エイジは少し変わった。

前のように快活ではなくなった。

エイジは、毎朝外出し、旋風が森をうろつくようになった。

そして毎夕、肩を落として帰ってきた。


「エイジくん、やっぱりみずきさんは見つからなかったのね。」

「ああ…。あいつは何処に行ったんだろう…。」

エイジはため息をついた。

「尚美さん、やっぱり僕、警察に行こうかな。」

「それは駄目よ。エイジくん、そんな事したら、あなたのこれからの人生が台無しになるわ。」

「でも…。」

「大丈夫よ。きっとみずきさんは、無事に生きてるわ…。」


それから数日後の事である。

真っ青な顔をしたエイジが、昼過ぎ頃に帰ってきた。

「尚美さん、大変だ!僕、渓谷の辺りをウロウロしてたんだけどね、川辺に雪に埋まった、人の死体の様なものが、チラッと見えたんだ。随分下の方で距離があったから、はっきりとはわからなかったんだけど、服の感じとか…あれ、あさりさんじゃないのかな…。」

「…エイジくん。あなた、疲れてるのよ。疲れて、頭も目もどうかしちゃったのよ。今、あなたが探してるのはみずきさんでしょ。」

尚美は、エイジをソファに座らせて、手をギュッと握った。

「大丈夫よ。今日はぐっすり眠って、明日からしばらく家でゆっくりしてね。あなたには、休養が必要よ。」


エイジを部屋で休ませた後、尚美は一人で考えた。

今後の事を…。

私はどうなってもいい。でも、エイジだけは守りたい。

尚美は、便箋と封筒を取り出した。そして、長い手紙を書きだした。


その頃、東雲たにしは、また勝田と相対していた。

「たにし君、君、何か隠してるね?うちの事務所のエイジと、今度は坂出みずきまでいなくなってしまったんだよ。前に、みずきが君と話してるのを見たって奴がいるんだよ。その直後にみずきがいなくなってしまった。正直に話してくれないかな。でないと、警察を呼ぶよ。」

警察と聞いて怖気づいたたにしは、とうとう、勝田に一切を白状した。

勝田は、すぐにもつむじ山の「オーベルジュ・シェル・エトワール」まで車を飛ばしたかったが、生憎の大雪で当分は動けそうもなかった…。


翌日と翌々日の二日間、エイジは外出しなかった。

エイジはずっと、窓辺の椅子に座って外を眺めながら、ボーっとしていた。

尚美はその日、朝のうちにチェーンを巻いた車で近所の市場に出かけて、いろんな食料品を買いこんだ。

そして二日目の夜、久々にエイジの為にフレンチのフルコースを作ってくれた。

それは、エイジが初めて「オーベルジュ・シェル・エトワール」を訪れた時のスペシャルメニューに近いものだった。

今回は、二人でテーブルに着き、すべての料理をテーブルいっぱいに並べて、一緒に食べた。

「あの時のようには、材料は揃えられなかったけど、できるだけ近づけてみたの。」

尚美が微笑んだ。

「美味しいよ。ものすごく…。」エイジが、感動して声を詰まらせた。

食事の後、二人はテラスに出て、満天の星空を眺めて過ごした。

二人はぴったりくっついていた。尚美はエイジの膝の上に座り、二人で一緒に綿布団に包まっていた。

ものすごく寒い夜だったが、二人は寒さを忘れてお互いのぬくもりを感じていた。

エイジにとって、その日は久々に幸福感に包まれた一日だった。


三日目の朝、エイジが起きだしてきた時には、すでに尚美の姿はなかった。

「尚美さん、尚美さん。」

エイジは屋敷中を尚美の名前を呼びながら、探し回ったが、尚美は何処にもいなかった。

ただ、ダイニングテーブルの上に一枚のカードが置かれていた。


「エイジくん、あなたと一緒にいられて、私は本当に幸せでした。あなたは、誰からも愛される素晴らしい人よ。きっと、紛れもない本物のスターになるわ。私は空の星になって、あなたのこれからの活躍を楽しみに見ています。いままでありがとう。尚美」


エイジは茫然とした。一体、何が起こったのか、理解出来ないでいた。


それから数時間後、警察がやってきて、エイジは連れ出された。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ