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しがない悪役令嬢ですが今度こそは幸せになりたい ~義妹に立場を奪われた私、死に戻ったので精霊使いとして生きようと思います  作者: 奏多


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52/54

52:そうして騒動は決着した

「レイナ!」


 剣を鞘に収めて駆け寄ってくる。

 そして私を抱えあげるように抱きしめた。


「無事でよかった」


 私は無事に生き残れたことも、助けに来てくれたのがルディアス様だったことも嬉しくて、思わず抱きしめ返した。

 ルディアス様が少し驚いたように腕がびくりとしたけど、さらに強く抱きしめてくる。

 え、あの、ちょっと。


「ルディアス、様、苦し……」


「すまない!」


 慌てて離してくれたルディアス様が、私をその場に立たせてくれる。

 そうして私の顔を見て、あちこち確認した。


「怪我はしていないようだな?」


「はい。あの、助けに来てくれて、ありがとうございます」


 何度目かの御礼を言う。

 いつもこの人は、私を探し出して助けてくれる。

 どうしてそこまでしてくれるのか。

 そう思っていたけど、今はわかる。


(たぶん、どうしてか私のことを好きでいてくれるみたい)


 ためらいなく抱きしめてくる腕の力に、なぜかルディアス様の気持ちを感じてしまった。

 私も、それが嫌じゃない。


(むしろ、この人に助けに来てほしかったと思ってる)

 

 他の人に助けてもらえても有難いけど、ルディアス様だったことが本当に嬉しい。

 そんな自分の気持ちに、気づいた。

 でもそれを今言う時じゃない。


「あの、今どうなっていたんですか?」


 本当に安全になったのかどうか、聞きたいことは沢山ある。


「君を探していたら、魔花が暴れ出したせいだろう、悲鳴が聞こえたから押し入ったんだ。ここは王都郊外の町中の館で、ルーフェンの町とは王都を挟んで反対側だな」


 そんな場所なら、一晩見つからなくてもおかしくはない。


「私も持ち主がフィディアス伯爵の建物を探していたんだが、ここは少し違うようだ。だが、君の義妹が父親に監視をつけていて、その監視がここに君の父が出入りしていたと言うので、探しに来ていたんだが」


 ルディアス様は言葉を切って、私に尋ねる。


「あの魔花は、君が?」


「はい。家に女性が置いて言った魔花から、分化した物なんです。偶然、それを持ったまま捕まったので、殺されそうな気配があったので騒ぎにしようと成長させてみたのです」


「それで急に魔花が出現したのか。納得した。でも危険なことを……」


 心配そうな表情をされて、私は言い訳をしてしまう。


「あの、精霊花がありましたので、魔花の攻撃は避けられましたし。もう少し時間が経っていたら、その精霊花も耐えられなかったかもしれませんが」


 私がそう言うと、ルディアス様が苦々しい口調で言った。


「いや、君には落ち度はない。性悪な女の計画が、半端だったからいけないんだ。先に私に知らせると邪魔されると思って隠しているわ、君が拉致された場所も、いつもあの伯爵が使っていた君を閉じ込めそうな場所とは違うところだったから、見つけるのに手間取って……」


「性悪な女?」


 なんのことを言っているんだろう。


「君のことではない」


 即刻否定された。

 一瞬たりとも誤解されたくないように。


「性悪な女とは、こうなるよう仕向けた原因を作ったマリーシアで……」


「え? マリーシア?」


 父の行動に、何か関係していたのだろうか。

 困惑する私に、ルディアス様が話してくれる。


「実はあの女が、君の父が隣国からの密輸をしている証拠である帳簿を手に入れたんだが」


 え、マリーシアってそんなことしてたの?


「しかし精査してみると、帳簿だけで貴族であるフィディアス伯爵を捕まえ、牢に入れるには証拠としては弱かった。言い逃れできないようしなくてはならないと言ったんだが……。どうやら帳簿がすり替えられたとわかるようにして、フィディアス伯爵が行動をすぐにでも起こすよう仕向けたらしい」


 父は、誰かにことが露見したと思って、すぐさま国外逃亡しようとした。

 で、私に罪を着せて騒動を起こしている間に逃げればいいと考えたのだろう、とルディアス様が言う。


「秘密裏に君に魔花の種を渡し、それが発芽したら「魔花の所持」で逮捕し、君が全てやったことにするつもりだったんだろうな。また、その禁忌の魔花を君が転化できないだろうとふんで、ルーフェンの町が魔花で騒動になれば、時間が稼げると考えたようだ」


「私を犯人にするって、そういうことだったんですね」


「だけど魔花は転化させて、精霊花しか残っていなかった。大騒ぎして警備兵も動員したというのに、面目が立たなくなったようだ」


「あ、うちの私兵だけじゃなかったんですね、私の家に押し掛けたのって」


 ルディアス様がうなずく。


「それでもう一つ君が犯人になるように仕向けるため、魔花の種をさらに渡し、急いで逃げるつもりだったようだ」


「そういえば、私に精霊花を作らせようとしてたんですよ。それが魔力増強のできる精霊花になる魔花で……それを私の犯罪の証拠にしようとしてたんでしょうか」


「大きな魔術を使えば、一瞬で遠くへ移動ができる。それを使って逃げるつもりで、その精霊花を奪い、残った魔花は転化できないだろうと見越してそんなことを命じたのかもしれないな。さすがに、今までしっぽを出さずにいただけあって、手の込んだことをする……」


 父は、あくまで自分がしたことではないと見せかけるために、腐心していたようだ。

 それで種だけ他人に依頼して渡させたり、魔力を増やす精霊花になる種を渡したり、私がすぐには罠だとわからないような形で陥れようとしていたわけだ。


「でも父が、逃げたはずで……」


 捕まえないと、私がまた冤罪をなすりつけられるのではないかと思ったその時だった。


「捕まえたわ!」


 元気のいい声がした。

 何があったのか知りたくて、私はルディアス様と一緒に声のした場所へ行く。

 壊れた倉庫の外から、それほど遠くない立ち木が並ぶ地点。


 そこで、マリーシアが彼女のお友達である三人を後ろにしたがえて仁王立ちになり、兵士達が父とあのフードを被っていた魔術師を取り押されていた。

 マリーシアはフードがとれて顔があらわになった中年の男の側に近寄り、にんまりと笑う。


「前はこの隣国人を捕まえそこねて、この親父を取り逃がし、全部私のせいにされたわ! うふふ、嬉しいわぁ」


 なんだかわからないけど、目的を達成したらしい。


「マリーシア……」


 声をかけると、マリーシアはこちらを見て微笑んだ。


「お姉様ご無事でしたか! 聖騎士がいれば大丈夫だとは思いましたけど!」


 そして続けて言う。


「お姉様には申し訳ないけど、囮になってくださって助かりましたわ! これで私達姉妹の潔白は証明されて、無罪放免よおぉぉぉぉ! ひゃっはー!」


 両手を広げて天を仰ぎ、喜びを表現するマリーシア。

 捕まって縄で巻かれた父がそれを見て言った。


「何を言っているマリーシア! お前はっ! お前は貴族令嬢でいたくないのか!?」


 理解できないと吼える父を、マリーシアはあざ笑う。


「あなたが父である以上、貴族令嬢として安泰な人生はないのです。王家にバレたら爵位取り上げになりそうなことをしておいて、よくもまぁそんなことが言えますわ!」


「おおおお、お前は、父親になんてことを言うんだ!」


「父親ですってぇぇぇ? ろくに養育費も渡さないし、最初は男じゃないからいらないとか母に言ってたそうですし? それで母が苦労したんですけどぉぉ?」


 そこでふと、私はマリーシアがお金や貴金属品や身分にこだわる理由を理解した。

 苦労したことがきっかけだったのかな、と。


「迎えに来たと思ったら密輸の片棒を担がせようとしたり、王子に利益をちらつかせて仲間にするため、契約の証に私を結婚させようとしたり? 王子が抱き込めない時には隣国に娘を嫁がせるふりをして、結婚祝いに魔花の種を大量に国内に密輸させる父親ってぇぇぇ、娘を物扱いしてきてとんでもない存在ですわね?」


 父は目を白黒していた。


「何を言ってる!? 隣国になど嫁がせていないだろうが!」


「あなたはやるんですのよ! そして元凶にされた私は病の呪いで怒り心頭の人々に、石を投げられて殺されるんですの! 何度も、何度も、何度もっ!」


 マリーシアは吼える。

 その確信がこもった内容や、経験してきたかのような言葉に、私は「ああ」と思った。


 マリーシアは、間違いなく私のように時間を戻っているんだ。

 そして私が一回だけ戻っている中、マリーシアは何度も死んでは戻っているんだろう。

 今回、その時の恨みを一気に晴らして――喜んでいるのだ。


「とにかく証拠は全部そろったわ! 王家の牢へ引っ張っていってくださいまし!」


 マリーシアがそう言うと、兵士達が近くにいた騎士達の指示で父と魔術師を連れていく。

 そして私は。


「終わったんだ……」


 ほっとしてその場に座り込んでしまったのだった。

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