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しがない悪役令嬢ですが今度こそは幸せになりたい ~義妹に立場を奪われた私、死に戻ったので精霊使いとして生きようと思います  作者: 奏多


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50:理由がわからないまま精霊花を咲かせます

 まずは、目の前にある発芽した種を、精霊花に転化をすることにした。

 魔力を操る分には大丈夫みたいなので、まずはある程度成長させる。

 さもないと、神聖力を受けた時に枯れてしまうからだ。


「双葉、四つ葉……うん、これでいい」


 十個の種を、つぼみができる前で成長を止めておく。

 それから精霊花に変える。


「昔は完璧にしようとしてたけど、そうじゃなくても転化はできる。だから、これでやって行こう」


 一つ一つ、私は茎に触れながら神聖力を入れ込んでいく。

 魔花はイヤイヤをするようにくねくねうごくけど、成長しきっていない分だけまだ抵抗はゆるい。


 ぼわっと魔力を放出しても、魔術の形にはならず、ちょっと影響を受けた私が気持ち悪くなるだけだ。

 むしろ神聖力を注ぐ方がやりにくくて辛い。


 それでも三つ、精霊花に変えた。

 薄青に銀の粉を散らしたような花を咲かせた精霊花は、以前見た時よりも細く、丈も低くて花も小さい。


「でも、父だって実物をそんなに沢山見たことがあるわけないし。これを見せてもおかしいとは思わないでしょ……渡すかどうかはあれだけど」


 これを渡すふりをして気をそらし、他の物で相手を倒して逃げるという手もある。

 この魔力を増強する精霊花には、残念だけれど他者を攻撃できる方法がないのだ。

 ただただ、花を使った人の魔力を上げるだけで。


「今思うと、私が反抗しないようにってことでこれを選んだ可能性もあるのかな」


 そんなことを考えつつ、休憩する。

 やっぱり神聖力を操るのが極端にやりにくい。

 私は首につけられた首輪に触れる。


 何かでちぎれそうな革とか布ではない。

 太めの鎖を連ねているような感じだ。

 もちろん私の腕力ではどうにもできない。


 そして首輪と同じだろう鎖が、そのまま近くの棚の足につながっている。

 もちろん私の力だと動かせない。

 下手をすると棚が倒れてきて、私が下敷きになってしまう。


「精霊花が使えれば良かったんだけど……」


 誰もいないので、ポケットから家から持ってきていた魔花を出す。

 ごく短い、手の平二つ分ぐらいの長さの杖にしてあるけど、相変わらずちょっと禍々しい。


 私が使えるとしたら、この魔花ぐらいだ。

 でも魔力が強すぎるから、神聖力を抑えられている状態だとどうにも制御できなさそう。


「この首輪も、神聖力を抑えているなら魔術がかけられているんだろうし」


 どうして神聖力だけなんだろうと考えて、ふっと理解する。

 父は精霊使いのことを詳しくは知らない。

 神聖力を使うことは、どこかでうっすら聞き覚えたのかもしれない。


「むしろ魔花を扱うから、私が神官みたいに神聖力で制圧したり、浄化するのだと思っているのかな? 私は魔力は扱えるのに……魔術が使えないから勘違いされた可能性はあるか」


 じーっと魔花を見る。

 すると、ある思いつきが湧いて、私の頭の中をじわじわと浸食していく。


「時間との勝負になる……」


 その思い付きを実行するのは、かなり危険だ。

 助けが来たとわかる時まで待ちたい。


 だから私は、時間をかけて魔力を強める精霊花を育て始めた。

 合間に一つ、それを杖に変えてこっそり持っておく。


 茎を折り取ったその精霊花はしおしおと枯れていく。

 この精霊花の場合、花が咲く一本しか茎が伸びないのでこうなる。

 私はその精霊花と、咲かせた三つを鉢に植えておいた。


 精霊花の育て方をよくわからない父らしく、出入り口の水瓶に植物用だろう水がたっぷり入っていた。

 私も何も知らないふりをして水を普通に与えておく。


 精霊花は、植物の形をしていても精霊なのだ。

 水は必ずしも必要ではなかったりする。

 この精霊花の場合は、近くの大気や土から魔力を吸収して生きるので心配いらない。


 当然、父は上手く咲かなかった状態なんて全て把握しているわけがない。

 なので上手く騙すことができるだろう。


 そうして翌日。

 朝、投げ込まれるように与えられた水とパンを食べた頃、再び父がやってきた。


 入ってくるなり、棚に咲いた花が三つしかないことに腹を立てる。


「なんだこれは! 種は十五もあったというのに。しかも一つは咲かなかっただと!?」


 ダン、と足を踏み鳴らして怒る。

 私は怯えているふりをしてやり過ごすことにした。


 まだ、父の真意がわからない。

 どうしてこの花が必要なのか。

 売るため?

 私をルディアス様の庇護下にあるってわかっていながら強引にさらうには、ちょっと理由が弱すぎる。


 聖騎士家と敵対したら、フィディアス伯爵家は周囲全てから顔を背けられるようになる。

 マリーシアだってうまくお嫁にいけなくなる。

 だからこの、魔力を強める精霊花になにか他の使い道があるのかと思ったけど……。

 

 父の背後から、一人の男が顔をのぞかせる。


「三つあればひとまずはいいでしょう。荷物をまとめて、後で送ることにして、ご自身だけ移動なさればいい」


「移動……?」


 精霊花で魔力を上げて、移動ってどういうこと?

 私、魔術についてもそんなに詳しくないから、一体何をしようとしているのかわからない。


「ふん、もちろんお前など連れていかんからな」


 父が私のつぶやきを聞いて、そう言う。

 連れて行くというのなら、やっぱりどこかへ移動するのだろう。

 でも家があるのに、どこへ? 領地?

 そもそも父と一緒に行動なんかしたくないのだけど。

 私が混乱していると、父がとんでもないことを言い出した。


「私はもう役割を果たしたようなものだからな。契約通りにこの国とは縁を切るのだ。代わりに、全ての罪をお前が背負うことになっているからな」


 笑い出す父。

 そして私は、ぼうぜんとした。


 またありもしない罪を着せられそうになってるの!?

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