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しがない悪役令嬢ですが今度こそは幸せになりたい ~義妹に立場を奪われた私、死に戻ったので精霊使いとして生きようと思います  作者: 奏多


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35:ひとまずエルマーさんに協力を仰ぐ

 とにかく今は、クロトのことだ。

 私はエルマーさんに頼んで、まずは葬儀の花になる魔花を探してもらうことにした。


 問題の魔花の絵を、他の図鑑から写し、色も詳細にわかるように描く。

 種を取る方法も書いておく。

 花そのものを持ち歩くわけではないので、より確実にクロトの元へ花を運べるようになるだろう。

 それをエルマーさんに渡しておいた。


「何より、人に任せられるのなら……ルディアス様に黙っておける時間が増える」


 いずれはバレてしまうけど。

 でも、ぎりぎりまでは……。


「ダメだと言って、妨害されてしまいそうだもの」


 幸いなことに、一つだけ伝手はある。

 名目上、ダントン商会を紹介者にしてルディアス様の館に勤め始めた知り合いがいるのだ。


「なんにせよ、魔花が見つかるまでは待たないと」


 その間は、一瞬で精霊花を成長させる練習を積む。

 実は前回の人生では、葬儀の花《天の鳥》を咲かせたことがなかった。

 ただ精霊使い達の記録だけで学んだ知識しかない。


 だから一つ、自分の家で咲かせてみてから、クロトの所へ行く予定だ。

 伝手を使ってクロトから購入したい物があるという形で、ダントン商会を呼んでもらい、その従業員として私もついていくという計画だ。


 なのでクロトの側にいられる時間は長くない。

 でも《天の鳥》は、咲かせるのに少し時間がかかるみたいだ。

 一日とかとんでもない時間ではないけど、訪問している間にどうにかするには、練習が必要だと思った。


 あと、クロトの神聖力の多さを考えると、一度では治らない。

 三度くらいは試みるつもりだ。

 さらには精霊が鳥の姿で飛んでいくので、注目を集めやすい。

 気をそらせる方法があればいいんだけどと思い、エルマーさんともう一度話し合った。

 するとびっくりな解決策を一つ提示してくれた。


「マリーが、そのうち一日なら注目を自分が集めて長居しても気にならないようにする、と言っていましたけれど……」


「え、一体何をするんです?」


「それは詳しくは聞いておりませんが、マリーなら何かしてくれるでしょう」


 わからないことが一番怖い……。

 でも、マリーシアに頼る方が安全だろう。


 間接的にだけではなく、直接的にもマリーシアに恩ができてしまった。

 今度どうにか返さなくてはならないわね、と私は心の中にメモをしておいた。


(でも、今でもマリーシアはあの精霊花が欲しいかしら? 魔法を使ってどうこうしているようには見えないんだけど)


 本人の意向を聞くことができなければ、以前マリーシアにあげていた精霊花にしようと思う。

 何かしら使えるだろうし。


 そうして精霊花を咲かせては、町の商店へ卸す日々を一週間ほど過ごした。

 おかげで最近、この町では『明かり代わりになる精霊花が売られている』と有名になってきているらしい。


 この『明かり代わりの精霊花』というのが、意外と絶妙だったようで。

 ものすごく価値があるわけでもなく、微妙にどこででも役に立つのだ。

 だからお金持ちで珍しい物が好きな人が買っていくけれど、そんなに沢山の人が殺到するわけでもない、という感じになっている。


 それでも人の往来が増えたせいなのか、ルディアス様が心配しているようで。

 私としてはクロトの治療計画を悟られないようにしたいし……と、ルディアス様と採取にも出かけた。


 一度行動を一緒にしたら、大丈夫だとわかると思って。

 それでいつもと違う場所へ行ったら、暗い滝の側にある魔花を見つけた。


 普通の魔花なら黒いはずなのに、その花は茎にも葉にも銀色のラインが入っている。

 暗がりで見つけやすそうに思えるけど、側に滝があってそちらが光を一部反射するからか、紛れて最初は気づかなかった。


(これ、魔力を上げる精霊花だ)


 ちょうどいいからと採取して、私は精霊花を咲かせた。

 出来上がったのは、全てが銀で作られたような金属質の花。


「おかげで装飾品みたいに見えるから、マリーシアはよくこの花を飾りに使ってたのよね」


 万が一にも落ちないように、胸に飾ることが多かった。

 今となっては、遠い記憶みたいな思い出だ。

 それでも少し、穏やかな気持ちで記憶を思い返すことができるようになったなと感じる。


 たぶん私が何かしたからじゃない。

 マリーシアがどうにか私のためになろうと、奔走したりそれを証明してみせたからだろう。

 母の遺品を返してくれたり、私のやりたいことを支援してくれる人を用意したり……。

 危険な人ではなくなって、私に好意的であろうとしてくれる……というのを、私が納得できるようになったのが大きいんだと思う。

 しかも私が受け入れなくても、ドン引きしても、かまわずにそれを実行している。


「やっぱり、マリーシアも時間を戻っているのかもしれない」 


 ただ時間を戻っただけでは、こんな行動はしないだろう。

 私が亡くなった後、後悔するようなことがあったのかもしれない。


(そのうち聞いてみよう)


 さらに三日後、待っていた《天の鳥》の種をエルマーさんが持ってきた。

 魔花が種をつくるよう促すのは、精霊使いではなくともできる。

 攻撃し、瀕死の状態になると魔花は種を作って命を繋ぐのだ。


 それは次世代ではない。

 魔花自身が、自分の分身をつくる行為。


 エルマーさんが雇った冒険者は、無事にそれをやりおおせてくれた。

 そして今後も、持ち運びが楽だから、他の種が欲しかったら請け負うと言ってくれたらしい。


 思いがけず、魔花の入手ルートができて嬉しい。

 その日のうちに私は《天の鳥》を一つ精霊花に変え、精霊を飛び立たせることに成功。

 咲かせる速度も、思ったよりは早かった。


「よし」


 準備は整った。

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