表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しがない悪役令嬢ですが今度こそは幸せになりたい ~義妹に立場を奪われた私、死に戻ったので精霊使いとして生きようと思います  作者: 奏多


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/54

33:ルディアスはしぶしぶ情報交換をする


 夜、ルディアスは王宮へ来ていた。

 そもそも人と話すことが好きな国王や王妃は、貴族がいつでも来られるようにしているくらいなので、誰がいても――貴族でありさえすれば、王宮内に入る理由を尋ねられることはほとんどないのだ。


 そうしてやってきたのは、あのメモに書かれていた場所だ。

 さくさくと、踏みしめるたびに芝が音をたてる。

 整備された小道から外れた場所が、指定されているからだ。

 

 そうしてたどりついたのは、小さな庭師の道具小屋。

 さらに外側の、鉢植えが並べられている場所の裏に、箱が置かれていた。


「屋根が張り出している場所で、箱に入れているから大丈夫だと思ったのか」


 もしくは隠す時に、庭師を懐柔してそこに置かせてと頼んだ可能性もある。

 そんなことを考えつつ、ルディアスは箱を取り出し、簡単な金具を操作して開いた。


「なるほど」


 中にあったのは紙を複数枚重ねて、糸で綴った冊子だ。

 細かな数字が沢山あるのだろうそれを持ち出し……。おそらくは複製を元の場所に置いたのかもしれない。


 そこへ、足音が近づいてくる。

 誰が見に来るかをたしかめに来たのだろう。

 顔を上げると、緊張した表情のマリーシア・フィディアスが歩いて来ていた。


「これは帳簿か」


「裏帳簿よ」


 マリーシアが答える。


「人を使って、帳簿を探ってまとめたものよ。父は複製の帳簿を持っているから、まだ気づいていないわ。そして父の不正を告発するのは、これでもできると思うのよ」


「誤魔化す方法はいくらでもあると思うが?」


「ダントン商会の伝手で、購入した側の裏取りもしているわ。それにちゃんと隣国の名前入りの証書も入っているわよ?」


 確かに、ここに本来あってはいけない、隣国貴族との取引に関する契約書も冊子にはさめられていた。

 貴族の印章は、偽造ができないようにしてある。

 王家でもこの貴族との取引はあるので、比べて同じであると証明されれば、フィディアス伯爵が王家に許可なく密輸をしたという証明になるだろう。


「しかし隣国との取引には王も絡んでいる可能性が高い。そちらに根回しか、王に不利な話でも湧いてこなければ、お前が勝手に捏造したとでも言われて終わるだろう。国家の存亡をかけているような問題だろうに、その程度で参りました、はい降参です、なんて大人しく謝ってもらえるとでも?」


「ひどい、一生懸命考えて見つけてきたのに!」


 憤慨したマリーシアに睨まれたが、ルディアスは正直に問題点を挙げただけだ。

 怒ったところで全ての障害が無くなるわけではない。


「結果が出なければ、いくら考えたところで目的は達せない。それともお前は、そこで安心して、敵に全て証拠隠滅されたうえで姉を殺されても、「でもがんばった」などと言えるのか?」


 正直に思ったことを言うと、マリーシアは悔し気な顔になった。


「うぅぅ……。じゃあ、どうしたらいいの。お姉様が殺されたら困るのよ!」


 その言葉が本当なのかどうか、ルディアスに確かめるすべはない。

 が、一応彼女は『自分の後ろ盾であるはずの父親の不正の証拠』を持ち出してきたのだ。

 それが明かされれば、自分も破滅するかもしれないというのに。


(なにより……一応レイナのために立ちまわっているらしいのも確かではあるか)


 だからその分、ルディアスは誠実に受け答えするつもりだった。


「一応、これは無駄ではない。証拠の一部にはなる。むしろ無くなったことで探し回って、奴らが行動を起こしてくれたら、衆目の前で罪を露見させることができる。……目撃者が多くなればなるほど、罪は隠せなくなる」


「そんな都合よくいくかしら……。あ」


 そこでマリーシアは何かを思いついたようだった。


「うふふ。それならいっそ探し回らせましょう」


「一番にお前が疑われるのではないか?」


 フィディアス伯爵家で何をするかわからない筆頭が、マリーシアだろう。


「多少は仕方ありません。でも私……死なないためならなんでもできるし。投石で殺されるよりマシですわよ」


 その言葉で、ルディアスは間違いないと断定した。


「それは、精霊使いがいなくなった時期に病を撒く魔花が増えた結果、のことを言っているのか?」


 マリーシアはふん、と鼻を鳴らす。


「やっぱりそれを知っているのね。なら、精霊使いを探しまわった人達が、お姉様が精霊使いだったことや、そんなお姉様が身投げした原因が何だったのかわかったせいで、騒ぎになったこともご存じなのね?」


 うなずいたルディアスが言う。


「それを明るみにしたのは、私だ。結果、レイナが亡くなる原因を作ったフィディアス伯爵は断罪された」


「そして王子妃だった私も加担してたとみなされましたわ。そして離宮へ送られ……。私がそこにいることを知った人々が押し掛け、石を投げられて死んだのですわ」


 ルディアスの記憶と、相違がない。

 確認がとれたことでルディアスは長くため息をついた。


「…………お前も、時間を戻ったんだな」


「それを言うのなら、あなたもですわね聖騎士様」


 お互いににらみ合う。

 ややあって、マリーシアは言った。


「何回ですの? 私は七回ですわ」


 その分、沢山知っているのだと言わんばかりにマウントしてくる。

 むっとしてルディアスも言い返した。


「こっちだって七回だ」


 そう、七回。

 ルディアスは数年間を七度繰り返している。

 そしてレイナが亡くなってしばらくすると、時間が戻ってしまうのだ。


「……お姉様が希望の光だということは、ご存じですよね?」


「お前もさすがに、それを学習したようだな」


 ルディアスに言われてぐぬぬとうなるマリー。


「私、何度もお姉様を守ろうとしたのですわ。あなただって私が回帰した人生で失敗続きでしたでしょ。今度こそ必ず守ってくださいませね」


「言われなくとも」


 ルディアスだってそのつもりだ。

 ただ七回もかかってしまったのは、最初はどうして時間を戻るのかわからなかったから。


 最初の数回は、弟クロトを誘拐されないように試行錯誤しつつ、上手く救えないことで自暴自棄になっていると、レイナに出会い……ということを繰り返していた。


 まさか『レイナ』が時間を戻る起点だなどとはわからなかったから。


 戻る時期は、最初は三年ほど。

 だからいつもは準備の時間があった。

 今回はあまりに戻る時間が短すぎたのが気になるところだった。


 マリーシアの方も、似たような感じだろうか……と思ったが、あまりにもいつもより変わりすぎている。


「お前の方は、今回はずいぶん行動が違うようだが?」


 尋ねてみると、マリーシアは「ふふん」と鼻で笑う。


「これまでのようなやり方では、無理だとわかったのですわ。せっかく数年前に戻れたのですから、今後のことも考えて商人の道への勉強をしつつ、早々にお姉様をお助けできる者を集めることにしたのです」


 どうやらマリーシアの取り巻きが今回様子が違うのは、レイナと出会う前からの活動の結果だったようだ。

 今までとは違う方法を試した結果、レイナが引くほどのとんちきさになったらしい。


「これまでの経験から、お姉様の自主性に任せつつも最大限のサポートをすることが大事なのですわ。直接手を出して守ろうとしすぎると、より酷いことになってお姉様を助けられなくなってしまいますもの……。だからお姉様のための、親衛隊を組織したのです」


 親衛隊?

 ルディアスは内心で首をかしげて、思い当たる。

 なるほど。あのいつも近くにいる三人は、マリーシアの親衛隊という形ではあるものの、レイナの助けになる人間を集めたようだ。


 そしてマリーシアはびしっとルディアスを指さして言う。


「とにかく、この証拠を最大限上手く使ってくださいまし。そしてなんとしてもお姉様を守るのですわ! 私はそれが言いたくて、この証拠を探しに来るだろう人間を見張っていたのですわ」


「言われなくとも」


 そう答えつつ、どうしてマリーシアがレイナにメモを握らせてきたのかわかった。

 マリーシアの方も、ルディアスが時間を戻ったのかどうかを知りたかったのだろう。

 そして、ルディアスが来るだろうことを期待して、釘を刺すためにここへ来たのだ。


 それぐらい本気でレイナを守る気があるなら、ひとまずは大目に見てやろうと思うルディアスだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ