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しがない悪役令嬢ですが今度こそは幸せになりたい ~義妹に立場を奪われた私、死に戻ったので精霊使いとして生きようと思います  作者: 奏多


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18:マリーシアの忠告

 服のことなどそっちのけで、手に持っていた袋から何かを取り出そうとする。


「これちょっと持っていてくださいます?」


 まず横に来た青年に、キャベツを渡す。

 まさかあの野菜……さっき買ったばっかり?

 目を疑っていると、、宝飾品を入れた小さな鞄を取り出した。


「あ……」


 見覚えがある。

 確か母が、実家から持ち込んだそのまた母から譲られたという鞄だ。

 両手の上に乗る大きさだから、ほんとうにハンカチとか小さな物しか入らない、貴婦人用の鞄。

 マリーシアはそれを私に差し出した。


「お姉様の、お母様の物だと思うのです。見つけたので、ぜひお返ししたいと思いまして」


「え、あ、ありがと……?」


「えへへへ」


 御礼を言うと、はにかむように笑うマリーシア。


(前は、父からマリーシアに『家にあったから』と与えられたのよね。気に入ってパーティーへ持って行くのを見たことがあるけど……。今回はどうして返してくれたんだろう?)


 わからないけど、今回のマリーシアは特別害意がなさそう。

 もしかして、マリーシアの母親の方に何か変化があったんだろうか?

 二人で八百屋をしていただなんて、前回はなかったわけだし。

 困惑しつつもお礼を言った私に、マリーシアはほっとしたように微笑む。


「あと、これから何かあった時のため、お姉様を助けに動ける者を紹介しますわ! 直接ご紹介した方が、連絡しやすいかと思いますので」


「え?」


 マリーシアはどんどん話を進めていく。

 そして自分の横に並んだ青年達を紹介していった。


「こちら、ダントン商会のご子息でエルマー様。こちらはドウェイン子爵家のハインリヒ様、そしてこの方はルパート公爵家のジオ様」


 それぞれが名前を呼ばれると一礼してくれる。


「え、あの、すごいお友達ね」


(驚いた。前回はこの人達と出会うまで、一年はかかってたのに)


 前回の人生で、マリーシアはハインリヒ・ドウェインとジオ・ルパートとは仲が良かった。何度か屋敷に招いていたから私も見たことがある。

 主に父がマリーシアと結婚させたい相手として選び、仲良くなるよう仕向けた相手だったはず。


 エルマー・ダントンは不思議な人選だ。

 交流があってもおかしくはないのだけど、父はお金持ちの商人を下に見ていたし、その影響なのか好みなのか、マリーシアも興味を示したという話は聞いたことがなかったから。


 でも今回、マリーシアが伯爵家に引き取られて約一か月ぐらいしか経ってない。

 どうやってこんな短期間で知り合ったあげく、連れ歩くような状況になったのか。


「王宮のパーティーへ伺わせていただいた時に、知り合った方々ばかりなのです」


「も、もう?」


 思わず口から疑問が出てしまう。

 だって前回のマリーシアは、貴族らしい礼儀作法の基本を習うだけで、半年はかかっていたはず。

 さすがに礼儀作法が及第点に至っていなければ、体面を気にする父がマリーシアをパーティーへ行かせるわけもない。


「私の礼儀作法は完璧だと、訪問客だったどこだかの貴族婦人にお墨付きをいただきまして、退屈だからとパーティーへ行かせてもらっているのです」


 一瞬、マリーシアが何か勘違いをしているのかと思ったが、一緒についてきた青年達が言う。


「マリーはカップの持ち方も気品があって、生粋の令嬢とそん色ない美しい所作だよ」


「ありがとう、ジオ」


「ダンスもとても上手だ。貴族令嬢のダンスの講師としてあちこちの家に招かれるジェンナー伯爵夫人も褒めていらしたよ」


「まぁ本当? ハインリヒ。とても嬉しいわ」


「ドレスのセンスどころか、君は装飾品の合わせ方も素敵だよね。どこで学んだのか教えてほしいぐらいだ」


「うふふ。教えたら、その知識で他のご令嬢やご婦人に沢山の宝石やティアラ、ネックレスを売るつもりでしょう? わかってるわエルマー」


 三者三様にマリーシアを褒める。

 それを聞く限り、マリーシアや父が嘘をついているわけではないらしいけど。


(どこで礼儀作法を覚えたの!? やっぱりマリーシアの母が、何か心変わりしたのかしら)


 もしかしたら引き取られるかもしれないし、と娘に令嬢教育をほどこしたとか?


(そうすると八百屋とのつながりがわからない……。令嬢教育をしたいなら、一番引き離したいというか、自分で買うなんて恥ずかしいことだって教育されると思うんだけど)


 貴族は自分達が特別であると示すために、

 そして男性貴族は、女性達に不自由をさせていない裕福さを示すために、


 困惑するレイナに、もっととんでもないことを言うマリーシア。


「彼らに関連するお店などをメモしておきました。もし助けが必要でしたら、私の名前を出してこのお店に言づけてくださいませ。私がすぐに出られなくとも、彼らがあちこちのお店の店員にお姉様を助けるよう指示しておいてくださっていますから」



 ずらずらと書かれていたのは、ダントン商会の店舗の場所、子爵家が出資している喫茶店、公爵家が強く関わる王都の騎士がいる場所。


(あれ、なんかとんでもなくない?)


 そもそも、家出をして平民として暮らすつもりの私としては、ダントン商会以外は用がない場所ばかりだ。


「あのマリーシア、私は貴族が運営に関わるお店に、そんなに出入りしないと思うのよ」


 必要があるとは思えないのだけど、マリーシアは人差し指を振って言う。


「実は、お父様の行動が不穏なのです。お姉様の居場所を探させようとしておりましたのを、小耳にはさみました。貴族のお父様に対抗して隠せるのは、貴族が後ろにいるお店しかないと思いますの」


「そんなことになってるの……。私のこと、捨て置くだろうと思ったのに」


 貴族令嬢というより、住み込みの使用人みたいな生活をさせていたのに。

 私がいない方が、早々にマリーシアの身元を偽れるだろうから、追いかけないと思ってた。


「お姉様は能力がおありですから、それが目当てだと思いますの」


 マリーシアは真面目な表情でそう言う。


「能力って、精霊使いのこと?」


 うなずくマリーシア。


「現在、この王国にはほとんど精霊花は流通しておりません。冠婚葬祭でどうしても古式ゆかしい方法を望む時や、病などで必要な時、他国の精霊花を購入するのが常です。それで聖職者を沢山集めて、なんとか精霊を生み出すのだと聞きましたわ」


 神聖力が沢山集まれば精霊を生み出すことはできなくもないけど……王侯貴族でもなければ、そんな方法は使えない。


「他の入手手段は、ひっそりと辺境でお暮しの精霊使いをなんとか見つけて、信頼できる商人を経由してしか、市場に出ることはありません。だけど一人、王都には精霊使いの末裔と呼ばれている人がいました」


「その人に協力を頼めばいいのに……」


「その末裔というのは、実はお姉様なのです」


「…………は?」

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