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第九話 『先生にバレた』



「聞いた?」


「四年二組で、

催眠やってるらしいよ」


「えっ、なにそれ!」


最近。


教室の外から、

そんな声が聞こえるようになった。


私は最初、

ちょっと嬉しかった。


“心理学”が広まってる!


みたいな気分だったのだ。


でも。


問題は。


“催眠”

という言葉のインパクトが、

思ったより強かったことである。



「愛衣ちゃん!」


昼休み。


知らないクラスの子が、

教室へやって来た。


「催眠できるってほんと!?」


「えっ」


「やってやって!」


「えーっと……」


周りにも、

人が集まってくる。


私は少し困った。


別に、

“なんでも操れる”

わけじゃない。


でも。


説明しようとすると、

余計怪しくなる。


「なんか、

手が動くやつ見た!」


「眠くなるんでしょ!?」


「洗脳!?」


「それは違う!」


私は慌てて否定した。


でも。


その瞬間。


教室の後ろから、

静かな声がした。


「……愛衣さん?」


ぴたり。


空気が止まる。



担任の、

佐藤先生だった。


やばい。


私は本能で察した。


先生は、

少し困った顔をしている。


「ちょっと、

先生にも話聞かせてもらえる?」


「……はい」


ひまりちゃんが、

小声で言った。


「終わった……」


「まだ終わってないもん!」


でも。


たぶんちょっと終わってた。



放課後。


私は職員室へ呼ばれた。


もちろん。


悠真くんたちも一緒だ。


「えーっと」


佐藤先生が、

少し困ったように頭をかく。


「まず確認なんだけど」


「危ないことはしてないよね?」


「してません!」


私は即答した。


「ほんとに!」


「人を操ったりとか、

そういうのじゃなくて!」


「うーん……」


先生は、

少し悩んだ顔をする。


「でも“催眠”って聞くと、

怖いイメージ持つ人もいるからねえ」


確かに。


私は少し考える。


自分では、

“楽しい心理実験”

くらいの感覚だった。


でも。


知らない人から見ると、

違うのかもしれない。



すると。


さくらちゃんが、

静かに口を開いた。


「先生」


「ん?」


「愛衣、

悪いことしようとしてるわけじゃないです」


「ただ、

人の反応見るの好きなだけで」


「あと、

みんなちゃんと自分で参加してます」


先生は、

少し驚いた顔をした。


次に。


ひまりちゃんが勢いよく言う。


「そうです!」


「むしろ楽しいです!」


「愛衣ちゃん、

変なこと無理やりしないし!」


大地くんまで腕を組む。


「まあ、

騒がしいけど危なくはねーよ」


「お前ら……」


私は、

少しだけ胸が熱くなる。



先生は、

しばらく考えてからため息をついた。


「うーん……」


「とりあえず」


私はごくりと唾を飲む。


「授業中は禁止ね」


「それはそう!」


即答だった。


先生、

思わず笑う。


「あと、

嫌がる子にはやらないこと」


「はい!」


「“催眠”って言葉は、

もうちょっと気をつけようか」


「……はい」


私は、

少しだけ反省する。


でも。


完全禁止ではなかった。



職員室を出たあと。


私は、

ほっと息を吐いた。


「怒られるかと思った……」


「半分怒られてたよ」


悠真くんが言う。


「でもまあ、

思ったより軽かったな」


大地くんも頷く。


すると。


さくらちゃんが、

小さく笑った。


「愛衣、

ちゃんと“楽しませよう”

としてるの伝わってるんだと思う」


その言葉が、

少し嬉しかった。



でも。


その時。


私たちはまだ知らなかった。


この数日後。


“保護者面談”

という、

さらに大きなイベントが待っていることを。


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