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第八話 『ちょっとだけ成功?』



「リベンジします!」


昼休み。


私は再び机を叩いた。


悠真くんが、

すごく嫌そうな顔をする。


「嫌な予感しかしない」


「今回はちゃんと勉強してきたから!」


「前も言ってなかった?」


「前よりもっと!」


私は、

どや顔でノートを取り出した。


そこには、


> ・安心感が大事

> ・無理やりやらない

> ・想像しやすくする

> ・楽しい雰囲気


など、

細かくメモされている。


さくらちゃんが、

少し引いた顔をした。


「研究熱心だなあ……」


「心理学は観察と実験が大事だから!」


「完全に理科のテンション」



でも。


今回は前と違う。


ちゃんと考えたのだ。


前回失敗した理由。


それは。


“催眠をかけようとしすぎた”


こと。


ショーのお姉さんも言っていた。


安心。


想像。


力を抜く。


つまり。


まず、

楽しくないとダメなのだ。



「というわけで」


私は、

ひまりちゃんを見る。


「ひまりちゃん」


「はい!」


「レモン想像して」


「レモン?」


「うん」


ひまりちゃんは、

素直に目を閉じる。


「黄色くて、

すっぱそうなレモン」


「切った瞬間、

じゅわってなる感じ」


「……あ」


ひまりちゃんが、

口を押さえた。


「なんかすっぱくなった!」


「でしょ!?」


私は机を叩く。


「これも想像に引っ張られてる!」


大地くんが、

「おおー」と声を出した。


「なんかほんとにそれっぽいな」



私は、

少し調子に乗る。


「じゃあ次!」


「手を前に出してください!」


ひまりちゃんが、

わくわくしながら両手を出す。


「右手には重たい辞書!」


「左手には風船!」


「辞書はどんどん重くなる!」


「風船はどんどん浮く!」


私は、

できるだけゆっくり言った。


ショーを思い出しながら。


静かに。


想像しやすく。


「……」


数秒後。


「あっ」


悠真くんが声を出す。


ひまりちゃんの両手の高さが、

少し変わっていた。


右手が下がり。


左手が上がっている。


「えっ!?」


ひまりちゃん本人が、

一番びっくりしていた。


「なんで!?」


私は、

思わず立ち上がる。


「成功したー!!」



教室がざわつく。


「ほんとに動いてる!」

「えー!?」


大地くんまで、

身を乗り出していた。


「やらせじゃね!?」


「してないよ!」


ひまりちゃんは、

本気で驚いている。


さくらちゃんも、

珍しく本を閉じていた。


「……思ったより動いた」


「でしょ!?」


私はもう、

かなりテンションが高かった。


「人って、

想像だけで結構変わるんだよ!」



そのあと。


大地くんでも試した。


「お前絶対動かねーだろ」


と言っていたのに。


少しだけ手が動いた瞬間。


「うわっ!?」


本人が一番びっくりしていた。


私はもう、

笑いが止まらない。


「大地くん、

素直だから!」


「うるせえ!」


「図星だ!」


教室、

爆笑。



そして。


最後に。


悠真くんが、

ぽつりと言った。


「……なんかさ」


「ん?」


「愛衣、

前よりそれっぽくなったよな」


私は、

少しだけ止まる。


「ほんと?」


「うん」


「なんか、

ちゃんと“安心させよう”

としてる感じする」


その言葉が、

妙に嬉しかった。


私は、

少しだけ考える。


ショーのお姉さん。


あの日の空気。


優しい声。


たぶん。


私は、

あの感じが好きだったんだと思う。


“人を驚かせる”

だけじゃなくて。


“安心して楽しめる感じ”。


それが。


なんだか、

すごく心地よかった。



「よーし!」


私は、

勢いよく立ち上がる。


「もっと研究する!」


「うわ出た」


「次はもっとすごいのやる!」


「ほどほどにね……」


悠真くんが苦笑する。


でも。


みんな、

ちゃんと笑っていた。


教室の真ん中で。


私は今日も、

わくわくしていた。


人の心って。


やっぱり、

とっても面白い。


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