表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/10

第七話 『催眠、やってみます!』



「というわけで!」


月曜日の昼休み。


私は机をばんっと叩いた。


「今日は催眠をやります!」


「うわ始まった」


悠真くんが、

即座に顔をしかめる。


ひまりちゃんは、

目を輝かせた。


「さいみん!?」


「この前言ってたやつ!?」


「そう!」


私は、

かなりテンションが上がっていた。


土曜日のショー以来。


頭の中が、

ずっと催眠でいっぱいなのだ。


本も読んだ。


動画も見た。


メモも取った。


つまり。


理論は完璧。


たぶん。



「で、

何するの?」


さくらちゃんが、

半分呆れながら聞いてくる。


私は、

得意げに腕を組んだ。


「まずはリラックス!」


「催眠は安心感が大事!」


「へえー」


「だから!」


私は、

悠真くんを指さす。


「被験者よろしく!」


「なんで!?」


「いつもの!」


「嫌な“いつもの”だなあ……」


でも。


悠真くんは、

結局逃げなかった。


優しい。



「では始めます」


私は、

ちょっと低めの声を出す。


「深呼吸してください」


悠真くんが、

ちょっと笑いをこらえながら息を吸う。


「力を抜いて……」


「うん」


「だんだん眠くなって……」


「いやならないけど」


早い。


私は少しむっとした。


「ちゃんとやって!」


「やってるって」


ひまりちゃんは、

もう笑い始めている。


さくらちゃんは、

本を読みながらこっち見てた。



私は気を取り直す。


ショーを思い出せ。


雰囲気だ。


空気感だ。


「今から、

手がだんだん重くなります」


「重くなるー」


悠真くん、

棒読み。


「もっと本気で!」


「いや本気だけど!」


「じゃあ次!」


私は、

人差し指を向ける。


「この指を見てください」


「うん」


「だんだん、

目が離せなく――」


その瞬間。


ガラッ。


教室のドアが開いた。


「おー何やってんだー?」


大地くん登場。


空気、

崩壊。


ひまりちゃん、

吹き出す。


悠真くんも、

耐えきれず笑い始めた。


「だめだこれ!」


「笑うなー!」


私は机を叩いた。



「いやでもさ」


大地くんが、

椅子へ座りながら笑う。


「催眠って、

もっとこう……」


「ぱちん!ってやったら寝るやつじゃね?」


「それはショー演出もあると思う!」


私は即反論する。


「催眠は安心感と想像力が――」


「愛衣、

急に詳しくなるなあ……」


さくらちゃんが呆れる。


でも。


私は本気だった。


「絶対できるもん!」


「人って、

想像で反応変わるんだから!」


その時。


ひまりちゃんが、

ぱっと手を挙げた。


「はい!」


「私やる!」


「えっ」


「愛衣ちゃんの催眠、

ちょっと楽しそう!」


私は、

少し嬉しくなる。


「じゃあやる!」



数分後。


「……どう?」


私は真剣な顔で聞いた。


ひまりちゃんは、

数秒黙ってから。


「なんか、

ぽかぽかした!」


「おお!」


私は立ち上がる。


「成功!?」


「でもたぶん、

今日暑いだけ!」


「ですよねー!」


教室、

爆笑。


私は机へ突っ伏した。



「……失敗した」


放課後。


私はぐったりしていた。


悠真くんが、

苦笑する。


「まあ、

そんなすぐできないだろ」


「でもショーではできてたもん!」


「プロだし……」


ぐうの音も出ない。


私は、

机へ頬を乗せながら呟く。


「むずかしいなあ」


すると。


さくらちゃんが、

本を閉じながら言った。


「でもさ」


「ん?」


「愛衣の話って、

なんか聞いちゃう感じはあるよ」


私は、

少しだけ顔を上げる。


「えっ」


「なんていうか……

勢いあるし」


「あと、

楽しそうだから」


ひまりちゃんも、

うんうん頷いた。


「わかる!」


「なんかつい乗っちゃう!」


その言葉を聞いて。


私は、

少しだけ元気になる。


「……つまり!」


「才能ある!?」


「調子乗るの早いなあ」


悠真くんが笑う。


でも。


失敗したのに。


なんだか、

ちょっと楽しかった。


たぶん。


催眠そのものより。


みんなで、

“なんでそうなるの?”

って笑ってる時間が、

好きだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ