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第五話 『ガキ大将』



「おーい!」


昼休み。


廊下に、

やたら大きな声が響いた。


その瞬間。


クラスの何人かが、

「あっ」みたいな顔をする。


私は、

窓際からそちらを見た。


そこにいたのは。


背の高い男の子。


ちょっと日に焼けていて。


声も大きくて。


歩き方もどこか偉そう。


いわゆる。


“ガキ大将”って感じの子だった。


「四組の大地くんだ」


ひまりちゃんが小声で教えてくれる。


「有名なの?」


「めっちゃ有名!」


「いつも騒いでる!」


なるほど。


確かに、

存在感がすごい。



「おっ」


大地くんが、

こっちを見た。


「なんか最近、

心理学ごっこ流行ってるんだって?」


「ごっこじゃないもん!」


私は即反論する。


すると。


大地くんは、

にやっと笑った。


「じゃあ俺もやってみろよ!」


その瞬間。


クラスがざわつく。


「えっ」

「大丈夫かな……」


でも。


私はちょっとわくわくした。


新しいタイプだ。


しかも。


かなりわかりやすそう。



「じゃあ実験!」


私は机へ身を乗り出す。


「大地くんって、

褒められるの弱いでしょ」


「はぁ!?」


即反応。


声大きい。


わかりやすい。


「弱くねーし!」


「ほんとに?」


「おう!」


私は、

にやっと笑った。


「じゃあ大地くんって、

意外と面倒見いいよね」


「っ」


一瞬止まる。


「この前、

一年生助けてたし」


「……別に普通だろ」


少しだけ、

目を逸らした。


私は、

思わず笑う。


「ほら」


「褒められると照れる!」


「照れてねー!!」


クラス、

爆笑。


大地くんは、

顔を真っ赤にしていた。



でも。


少し話してわかった。


大地くんは、

見た目ほど怖くない。


むしろ。


かなり素直だ。


「お前、

絶対今俺のこと観察してるだろ」


「してる!」


「即答かよ!」


「だって面白いし」


「何がだよ!」


私は、

少し考える。


「大地くんって、

強そうに見せたいのに、

褒められるとすぐ困る」


「うっ」


「あと、

頼られると断れない」


「うぐっ」


「図星だ!」


ひまりちゃんが笑う。


大地くんは、

悔しそうに机を叩いた。


「なんでわかるんだよ!」


「顔!」


「またそれかー!」



その時。


さくらちゃんが、

本を読みながらぽつりと言った。


「でも大地くんって、

言われたらちゃんと反応するよね」


「ん?」


「嫌なら無視すればいいのに」


大地くんは、

少しだけ止まる。


そのあと。


頭をかきながら言った。


「……まあ、

なんか面白いし」


私は、

その言葉を聞いて少し嬉しくなった。


やっぱり。


心理学って、

人を嫌な気持ちにするものじゃなくて。


“面白い”

って思える方が楽しい。



帰り際。


大地くんが、

教室のドアから顔を出す。


「おーい愛衣!」


「ん?」


「次またなんかやる時、

俺も呼べよ!」


私は、

思わず笑った。


「うん!」


「また実験しようね!」


「だからその言い方やめろ!」


でも。


大地くんは、

ちゃんと笑っていた。


クラスが、

少しずつ賑やかになっていく。


それがなんだか、

とても楽しかった。


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