第四話 『みんな違う』
「人って、
みんな反応違うんだよねえ……」
昼休み。
私は机へ頬杖をつきながら、
しみじみ呟いた。
「また始まった」
悠真くんが、
パンを食べながらため息をつく。
でも。
これはかなり大事な発見なのだ。
◇
例えば。
ひまりちゃん。
「ねえ見て見て!」
「今日プリン二個持ってきた!」
「なんで二個?」
「一個はテンション上がった時用!」
意味がわからない。
でも。
ひまりちゃんは、
とにかく明るい。
思ったことが、
全部そのまま口から出る。
「ひまりちゃんって、
嘘つけないよね」
「えっ」
ひまりちゃんが固まる。
「つ、つけるし!」
「今、
動揺した」
「してない!」
「声高くなった」
「うっ」
わかりやすすぎる。
私は思わず笑ってしまう。
「だってひまりちゃん、
隠し事ある時すぐ顔に出るもん」
「ええー!?」
「昨日も、
給食のゼリー二個食べたでしょ」
「なんでわかるの!?」
「今認めた」
「あっ」
ひまりちゃん、
頭を抱える。
悠真くんが、
横で笑っていた。
「ほんとわかりやすいな……」
「うぅー!」
でも。
そういうところが、
ひまりちゃんっぽい。
◇
そして。
さくらちゃん。
この子は、
また全然違う。
「……愛衣って、
絶対人の反応見るの好きだよね」
図書室。
本を読んでいたさくらちゃんが、
ページをめくりながら呟く。
「好き!」
「即答……」
さくらちゃんは、
少し呆れた顔をする。
でも。
その反応も面白い。
さくらちゃんは、
分析するタイプだ。
「なんでそうなるの?」
を、
ちゃんと考える。
だから最初は、
心理実験にもかなり警戒していた。
でも。
意外と。
流されやすい。
「さくらちゃんって、
意外と“まあいいか”で動くよね」
「そんなことない」
「あるよ」
「ない」
私は、
にやっと笑った。
「じゃあ実験」
「急だなあ……」
さくらちゃんは、
少し警戒した顔をする。
でも。
逃げない。
そこが面白い。
「今から、
絶対右向かないでね」
「……?」
さくらちゃんが、
ぴたりと止まる。
私は続ける。
「絶対だよ?」
「だから何――」
その瞬間。
さくらちゃん、
右を見る。
「あ」
私は、
思わず机を叩いた。
「見た!」
「っ……!」
さくらちゃんが、
悔しそうな顔をする。
「いや今のはズルいでしょ!」
「“右”って言われると、
気になるんだよ!」
「うぅ……」
さくらちゃんは、
顔を赤くしながら抗議する。
でも。
私は知っている。
この子、
分析してるくせに。
意外と、
その場の流れに乗せられやすい。
◇
「つまりだね!」
私は教室の机へ身を乗り出した。
「ひまりちゃんは、
感情がそのまま出るタイプ!」
「さくらちゃんは、
考えるけど流されるタイプ!」
「で、
悠真くんは?」
ひまりちゃんが聞く。
私は、
悠真くんを見る。
悠真くんは、
嫌そうな顔をした。
「その顔も含めて、
警戒しながら引っかかるタイプ!」
「なんだそれ!」
教室に笑いが広がる。
でも。
本当に、
みんな違う。
同じ言葉でも。
同じ状況でも。
反応が全然違う。
それが。
たまらなく、
面白かった。
◇
「……愛衣ってさ」
帰り道。
悠真くんが、
少し不思議そうに聞いてきた。
「なんでそんな、
人の反応見るの好きなの?」
私は少し考える。
難しい理由は、
よくわからない。
でも。
たぶん。
「人の心って、
面白いから!」
それが、
一番近かった。




