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第三話 『新しい実験相手』



「……なんで俺ばっかりなんだよ」


昼休み。


机へ突っ伏しながら、

悠真くんがぼやいた。


私は、

そんな幼馴染を見ながら首を傾げる。


「だって反応わかりやすいし」


「それ褒めてないよな?」


「褒めてるよ?」


「絶対違う」


失礼だなあ。


でも。


実際、

悠真くんはかなり観察しやすい。


急に名前を呼ぶとびっくりするし。


褒めると照れるし。


嘘つく時はちょっと目が泳ぐ。


見ていて、

すごく面白い。



でも最近。


私は少し考えていた。


“悠真くん以外でも試してみたい”


人によって、

反応は違う。


だったら。


もっと色んな人を観察したら、

もっと面白いんじゃないだろうか。


そんなことを考えていた時だった。


「ねえねえ!」


元気な声。


振り向くと、

女の子がこちらへ走ってきた。


短めの髪。


明るい笑顔。


やたら距離が近い。


「愛衣ちゃんって、

心理学好きなんでしょ!?」


「えっ」


話が早い。


「なんで知ってるの?」


「昨日、

男子が“また悠真が実験されてた”

って話してた!」


「おい」


悠真くんが抗議する。


でも。


女の子は全然気にしていなかった。


「面白そうだから、

私にもやって!」


「えっ、いいの!?」


「うん!」


即答だった。


私は思わず、

目を輝かせる。


新しい実験相手だ。



「私は水瀬ひまり!」


「よろしくね!」


「愛衣!」


「知ってる!」


「えへへ」


元気な子だなあ。


私はさっそく、

ひまりちゃんを観察し始める。


動きが大きい。


表情がころころ変わる。


あと、

思ったことすぐ口に出るタイプ。


たぶん、

かなり反応が面白い。


「……愛衣、

今絶対観察モード入った」


悠真くんが呆れた声を出す。


「わかる?」


「長い付き合いだからな……」


「ねえねえ、

何するの!?」


ひまりちゃんが、

わくわくした顔で聞いてくる。


私は少し考えてから、

にやっと笑った。


「じゃあ簡単な心理実験!」



「まずね」


私は机へ身を乗り出す。


「“赤”って聞いて、

何思い浮かべた?」


「りんご!」


ひまりちゃん即答。


「信号」


悠真くん。


「へえー」


私は頷く。


「じゃあ“青”は?」


「空!」


「海」


「ふむふむ」


私は腕を組む。


「なんかわかったの?」


悠真くんが聞いてくる。


私は少し得意げに笑った。


「ひまりちゃんは、

イメージをぱっと出すタイプ」


「悠真くんは、

ちょっと考えてから答えるタイプ」


「えー!

なんでわかるの!?」


ひまりちゃんが目を丸くする。


私は、

ちょっと嬉しくなる。


「答える速さ!」


「あと、

ひまりちゃんは声大きくなる!」


「ほんとだ!」


ひまりちゃんは、

さらにテンションが上がった。



その時。


後ろの席から、

別の声がした。


「……何それ」


振り向く。


そこには、

本を読んでいた女の子がいた。


長い髪。


静かな雰囲気。


あまり騒ぐタイプではなさそう。


「心理学ごっこ?」


少しだけ、

疑ってる顔。


私は、

その反応を見て思わず笑う。


面白そう。


「違うよ!」


「心理学!」


「同じじゃん」


「違うもん!」


すると。


その子は、

小さくため息をついた。


「……まあ、

ちょっとだけ気になるけど」


私は、

さらに目を輝かせる。


「名前は!?」


「……結城さくら」


「さくらちゃん!」


「距離近」


ひまりちゃんが笑う。


悠真くんは、

また嫌な予感がする顔をしていた。


でも。


私はもう、

わくわくが止まらなかった。


クラスには、

まだまだ知らない反応がいっぱいある。


それって。


すごく、

面白そうだった。


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