第96話「精鋭部隊」
警察署付近が変だと思い、仲間を集め始めてから少し経った頃。短い時間で大勢の仲間がこの場所に集合された。
俺が予想していた以上に迅速な行動である。おかげでゲームする暇すら無かったぜ。
「大分集まったようだな。いやー見事なもんじゃないか」
我ながら惚れ惚れする光景だ。
眼前に広がるのは、魔物達の群れ。しかしただの群れではない。
全員が高ランクの星三つ、更に経験値を与えて強化している選りすぐりの精鋭達だ。その数、ざっと三十人といったところだろうか。
ここに居る全てが俺の仲間。このメンバーを引き連れて、俺はこれから警察署へと向かう。
これだけの戦力を用意すれば、何やら様子がおかしい警察署付近に向かっても対応する事が出来るだろう。
「ギャギャッ!」
「グルルッ!」
「アーサー。ラムレイ。よく来てくれたな。お前達が居てくれたら百人力だ」
呼び集めた中には、最初期メンバーの二人も含まれている。この二人は、特に頼れる奴らだ。きっと役に立ってくれるはず。
そして、シェフの『パン子先輩』に相方の『アリサ先輩』。おまけに『タニグチヒカル』も今回の遠征に呼んでおいたぜ。
抜かりは無い。これならアトラス級の魔物が現れても余裕で勝てる自信があるぞ。絶対に安全だ。
「手筈は整えた。まずは第一陣として、十人の魔物を先に向かわせる。さあ、行け!」
『ゴォオオオオオオオオオ!!』
魔物達は、雄叫びを上げて活気良く出陣する。
士気は上々。やはり強い者同士が集まっていると安心感が違う。自然とやる気が湧いてくるというものだ。
「さて、俺はディスプレイ越しに向こうの様子を見てみるか。スキル『キャンピングルーム』」
俺がスキルを発動すると、目の前の空間からこじんまりとした家……というよりも小屋と呼んで差し支えない大きさの建物が出現した。
スキル『キャンピングルーム』。屋外での居住スペースを作る能力。要するにテントのようなものだが、そこらのテントよりずっと居心地が良い。四畳半程度の広さの中にベッドとテーブル、テレビ。更にはトイレやキッチンまで完備してあるのだ。俺、料理出来ないからキッチン使わないけど。
ベッドをソファー代わりにして腰掛け、『魔物の眼』で空中ディスプレイを表示。第一陣の魔物の視覚情報を確認していく。
「やっぱり、魔物が全然居なくなっているな。それに人の気配も無し」
まあ魔物だらけのこの世界で無闇矢鱈に出歩く奴は、余程強いか経験値稼ぎか物資調達かのどちらかだ。人が見当たらない事に関してはさして気にする程度ではない。
それにしても……無人の街、か。
これだけ建物が集中している場所で全く人の姿が無いなんて数日前までほぼあり得ない事だった。しかし、今となってはそれも当たり前。
大勢の人が魔物に殺され、生き残った人達も魔物に恐怖して身を潜めている。
今ここを歩いているのが、第一陣の魔物達十名だけ。
……では、なかった。
「んっ。なんだアレは?」
俺は、映像内に出てきた人影を凝視する。
見過ごしたのだろうか? その人物は、何も無い場所からいきなり姿を現したように見えた。
遠くなので年齢はよく分からないけど、服装の感じと長髪である事からおそらく女性。傷付いているのか体調が悪いのか、彼女の足取りはふらふらと覚束ない様子がディスプレイ画面に映し出されている。
何やらただならない雰囲気。さて、どうしたものか。
「うーん……、いいや。弱っているようだし助けてあげよう」
相手が何者かは知らないけど、無償の善意は富者の特権。
俺は、仲間達にテレパシーを送り、ふらふらの女性を介抱するように指示を出した。カメラがゆっくりと女性の方へと近づいていく。
「ねえ御主人様。あの人、モンスターが襲ってきたって勘違いするんじゃないかな?」
「大丈夫だスラタロウ。俺達は、良い事をしようとしている。だからあの女性もきっと分かってくれるはずさ」
それに何かあったとしても、彼奴らはランク☆☆☆の魔物だ。応戦してきても全く問題は無い。
カメラも女性とどんどん近くなっていく。近づいた事で、その人の顔もより鮮明に見えるようになった。若者じみた顔立ちで、おそらく俺とそう変わらない年齢だろう。
……あれ、この人。何処かで見たような?
なんて考えていたら、突然ディスプレイの映像が『プツッ!』と音を立てて切れた。
「あららっ?」
「切れちゃったね」
「おかしいな。取り敢えず様子を……」
俺がそう言葉を続けようとした……、その時だった。
刹那。
俺以外の世界が、突如『ゆっくり』になり出したのだ。
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