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第73話「ゲームを楽しむ心に境界線はない」

 少女の名前は、『但野心奈』ちゃんと言うらしい。

 俺は、ココナちゃんと『スナッチモンスター』で一緒に遊んでいた。丁度良く、俺も携帯ゲームを持ってきていたからな。


「そうか。友達と買い物をしている時に魔物に……」

「はい。大人の方々が魔物から私達を助けてくれました。でも、まだ魔物が外にいるそうなので、助けが来るまでここに隠れているんです」


 ココナちゃんは、自分の身の上話を俺に聞かせてくれた。

 どうやらこのショッピングモールも、世界崩壊の一日目は他の場所と同様に魔物に襲われたそうだ。それを何とか退けて、それからは一度も魔物が現れなくなったらしい。


(その理由は、おそらくココナちゃんのスキルが原因。しかしココナちゃんは、自分が魔物からこの場所を守っていると言う自覚がないようだ)


 もっと言えば、ココナちゃんは自分が『異能者(プレイヤー)』である事すら認識してない風に見える。

 そうなると、どうやってスキルを解除してもらうのが適切か。ココナちゃんが無自覚に発動している『魔物除け』のスキルを解除してくれたら、俺は仲間達をこのショッピングモールに突撃させて略奪可能となる。

 ……ふむ。焦っても仕方がないし、まずはこの子と親睦を深めるのが最良か?


「ん。そのスナモン、俺が持っていない奴だ。どこでスナッチしたの?」

「ああ、これはですね……」


 なんて楽しくゲームをしながら、俺は着実に好感度を上げていく。

 そうしていると、向こうの方からこちらに近づいてくる人物が現れた。


「お待たせー!」

「遅れてごめんなさい。少し手間取ってしまって……って」

「おや、見知らぬ方がいらっしゃいますねー」


 やって来たのは、三人の女子達だ。

 制服は着ていないけど、見た感じ高校生くらいに見える。


「あ。お帰りなさい。二階堂さん、この方々が私のお友達です」

「この人達が?」


 何だ。ココナちゃんの友達というから、てっきり小学生くらいだと思っていたら俺と同世代か。

 どうしよう。取り敢えず、挨拶でもしておくか。


「こんにちは」

「あ、どうも……」


 彼女達は、ココナちゃんの方へ回り込むと、俺を警戒するようにじっと見つめ出した。

 あれ。俺、なんか変だったかな?


「心奈ちゃん。あの人は?」

「さっき声を掛けられたんです。一緒にゲームをしよう、と言われて」

「えっ? 事案じゃないですか?」

「初対面で小学生をゲームに誘わないわよね、普通。……怪しい」


 ……彼女達の話し声がこちらにまで聞こえてくる。

 どうやら、好意的に見られていない感じだな。俺の事を不審者か何かだと思ってようだ。

 こんな状況下だし、皆が神経質になっていても無理はない。普段以上に、警戒心を強めているのだろう。


「怖がらないでください。俺は、二階堂翼。怪しい者ではありません」


 俺は、出来るだけ優しい表情を浮かべることを意識しつつ自分の名前を名乗った。


「この建物を歩いていたら、スナッチモンスターで遊んでいるココナちゃんと出会ったんです。俺は、このゲームが大好きで……つい一緒に楽しんじゃいました」

「……はぁ」

「貴方、見覚えがない人ですけど。もしかして、外から来た人ですか?」

「ああはい。そうです」


 変に嘘を吐くのは疑わられる要因になり得る。ここは、正直に話すとしよう。


「えっ!? もしかして、救助に来てくれた人ですか?」

「いいえ。俺は、他の避難所から来ました。街の様子を見てみようと歩いていたら、このショッピングモールに辿り着いたんです」

「そう、ですか」


 黒髪の少女は、見るからにガッカリした表情を浮かべた。

 うーん。変に期待させてしまった様子。

 このまま落ち込ませておくのも気分が悪い。よし、安心させる言葉選びを……。


「まあ、救助も時間の問題ですよ。こうしている今も、『異能者(プレイヤー)』達が街にいる魔物を狩り続けています。事態が落ち着けば、そのうち助けも来てくれるでしょう」


 実際には、魔物はどれだけ倒しても午前〇時に元の数に戻るので絶滅は望めない。

 だが、今彼女達に必要なのは偽りの希望だ。人は、希望があってこそ前へ進む事が出来るのだから。


「『異能者(プレイヤー)』?」

「不思議な力が使えるようになった人間をそう呼ぶんです。ご存知ありませんでしたか?」

「あ。もしかしてこれの事?」


 そう言うと、金髪ロングの少女が何処からともなく『大剣』を召喚した。武器召喚系のスキルだな。


「貴女も『異能者(プレイヤー)』でしたか。となると、其方の御二方も?」

「はい。一応」

「と言っても、今のところ使う機会無いですけど。最初に魔物と戦って、それ以来全然魔物は来なくなりましたから」


 赤髪の少女がそう呟いた。

 この口振り……この人達も、ココナちゃんの能力を知らない?


(おいスラタロウ。本当に、この子が『ムズムズ』の原因なのか?)

(分かんない。そうかも知れないって言っただけだもん)

(おいおい勘弁してくれ……)


 俺のスキル『魔物鑑定』は、魔物のステータス・スキル・その他詳細を調べられるが、人間は対象外だ。ココナちゃんが、本当にこの場所から魔物を守っている『異能者(プレイヤー)』かは判断出来ない。


(それにしても、こんな女の子達まで『異能者(プレイヤー)』なのか。もしかしたら、この建物内には思った以上に『異能者(プレイヤー)』の数が多いのかもしれないな)


 戦える人間が多いならその分略奪は難しくなる。高LVの『異能者(プレイヤー)』やレアなスキルを習得した奴が潜んでいるなら尚更厄介だ。

 俺は、多くの仲間を得て強くなったが、まだまだこの崩壊した世界で知らない事が多い。

 別に焦る必要性は無いし、ここは慎重に事を進めたほうが良さそうだな。

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