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第71話「支配者の仕事」

 人間の『王』になる。

 我ながら御大層な目標だと思うが、それが俺にとって一番良い事なのだから仕方がない。

 俺だって、誰かが魔物という脅威を押さえ込んでくれたならその人に任せたさ。でも、誰もやらないんだもの。待ち切れないから俺がやることにしたよ。


「スナッチ合成スナッチ合成スナッチ合成…………ふぅ」


 さて、人間の王になるには力がいる。

 その為には、経験値が必要だ。『ステータス』が世に現れてからは、筋肉を鍛えるよりずっと効率良く強くなれる。

 俺の場合、経験を得るには魔物を見つけて仲間にして合成する……面倒臭い事をしなければならない。

 いちいち外に出るのも怠いので、今は楽な手段を用いて経験値稼ぎをしている。


「魔物の眼は、最高だな。これがあれば家の中に居ても外が視える」


 職業スキル『魔物の眼』。

 魔物の視覚情報を空中ディスプレイに投影させる。

 そうやって発見した別の魔物をスナッチして合成。その作業を続けていた。


「今ので五〇〇体くらいか。あれ、一〇〇〇体だっけ? まあ、どっちでも良いか」


 無心でLV上げしているからちゃんと数えてない。

 いずれにせよ、街にはまだまだ魔物が潜んでいる。そいつらを経験値にして戦力強化だ。


「おや? 誰かが戦っている」


 ディスプレイのチャンネルを切り替えていると、人間と魔物が争っている光景が映し出されているチャンネルを発見した。

 人間の数は、四人。対して魔物の数は十五体か。

 さて、どっちが勝つか……。


「ふむふむ。武器召喚が使える前衛が二人で、後衛が……なんだ? 植物を操れるのか? これはトリッキーな『異能者(プレイヤー)』だ。そしてもう一人は、後ろの方で隠れている。非戦闘員かな?」


 魔物サイドは、ランク☆の雑魚が多数とランク☆☆が少し。しかし数の優劣はあっても、上手に戦えば人間サイドにも勝ち目はある。

 俺は、クッキーと紅茶を嗜みながら彼らの戦いぶりを観戦していた。


「おっ。あの魔物、スキルを持っているな」


 人間と戦っている魔物のうち、一体が相手をガンガン突き飛ばしている。

 あの様子……単に力で突き飛ばしているんじゃない。スキルによるものだ。

 ちょっと魔物鑑定で調べてみるか。



 コボルトLV8

 HP270/270

 ATK40

 DEF21

 経験値994


 スキル

 バウンド



 スキル『バウンド』。おそらく、向かってきた相手を跳ね返す能力。

 なかなか優秀そうなスキルじゃないか。後でいただいてやろう。

 そして、コボルトによって守りを崩された人間サイドは、敵に追い込まれてピンチに陥っていた。このままでは彼らは死ぬ。


「仕方ない助けてやろう。貴重な人的資源を失う訳にはいかないし……んっ?」


 俺が加勢をしようとした直後、何者かが画面の中に現れた。


「なんだ?」


 それは、バイクに乗った人間の男性だった。

 男は、今にも彼らに襲い掛かろうとしていた魔物達を跳ね飛ばすと、バイクを横にスライドさせて急停車する。

 画面の中で、男が何かを大声で叫んでいるのが見える。すると、四人が慌てたように男の方へと駆け寄ると、一斉にバイクにしがみつき出したのだ。

 そのまま、バイクは急発進。五人も乗せているとは思えない軽快な動きで、バイクはそこから走り去っていった。

 魔物達は唖然としている。何なら俺も唖然としている。


「おーおー! 凄かったねー今の!」

「……ああ。あの人、どうやら彼らを助けたみたいだ。凄いドライブテクニックだった」


 取り残された魔物達をスナッチしながら、俺はさっきの出来事を思い返す。

 まるでヒーローのような登場の仕方だった。

 あんな人が、この街にいたというのが驚きだ。彼にちょっと興味が出てきたぜ。


「少し追跡してみるか。デビル、あのバイクを追うんだ」


 スキル『テレパシー』で、仲間の魔物に指示を送る。

 映像が動き出し、走っていくバイクを追いかけ始める。向こうの彼らは、空にいる仲間の存在に気づいていない様子だ。いや、気づいていても気にしていないのか。

 しばらく追跡を続けていると、やがて彼らはとある場所に辿り着く。


「ここは……ショッピングモールじゃないか」


 彼らがやってきたのは、この街で一番でかいショッピングモール。バイクで裏口の方へと移動すると、そこには警備員と思われる人達が立っていた。

 男は、警備員と何やら会話をして、やがて一人が出入り口のゲートを開け始めた。彼らは、そこから建物の中へと入っていき、見えなくなってしまう。


「バイクの彼は、あのショッピングモールを拠点にしているのか?」

「御主人様。『しょっぴんぐもーる』ってなになに?」

「一つの建物に沢山の店が集まっている場所さ。そして物資が大量にある」

「おー物資! 御主人様が大好きなものだね!」

「そうだな」


 それに土地は広いしから、彼処を奪えれば第二の拠点だって作れるはず。そうなれば、今より手広く侵略が進められる。

 ただ、ショッピングモールには沢山の『異能者(プレイヤー)』がいる。制圧するには時間が掛かるだろう。


「いや、今のうちに手を打っておくべきか?」


 例えば、魔物を手引きして定期的に襲撃させれば奴らはその度に疲弊する。いや、いっそ昼も夜も休みなく魔物を差し向けようか? 魔物はいくら倒されても、午前〇時になれば元の数まで増えるからな。


「ふむ。そうと決まれば早速パーティーを編成するか。まずは小手調べに五十……いや百体の魔物を準備しよう」


 俺は、空中ディスプレイの映像を切ると、部屋を出た。

 これから始まるのは、ショッピングモールの占拠作戦だ。

 魔物を率いて敵陣を攻略する。……シミュレーションゲームみたいだな。

 ふっ。楽しくなってきやがったぜ。

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