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第29話「自己中、人間の仲間を得る」

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「そのワンちゃん可愛い〜! ねえねえ、名前とかってあるの?」

「ラムレイって言います。強く勇敢な雄になるよう命名したんです」


 あれ? そういえば、ラムレイってオスとメスどっちなんだろう?

 俺は、傍らで寝そべるラムレイを撫でつつそんなことを思った。

 そもそも、魔物にも性別があるのかどうかが気になるな。スライムなんかは、性別無さそうだし。

 …………見た感じ、アーサーもラムレイもチンチンが付いていない。まさか、メス?

 そうだ! 俺が持っているスキル『魔物鑑定』なら、こいつらの性別がわかるかも知れないぞ!

 早速、俺はラムレイを見つめ、ステータスを表示させる。幾つもの情報が出てくる中、俺は目的の欄を発見する。魔物の性別についての欄だ!



 ラムレイ

 性別:メス



 メスなのかよ!? マジか、全然気付かなかった!!

 まさかと思い、次に俺はアーサーの性別について調べた。



 アーサー

 性別:オス



 お前はオスなのかよ!! チンチンが付いていないのに、一体何が基準なんだ!?

 俺は、仲間達の衝撃の真実を知り、思わず天を仰ぐのだった。


「それで、パン子先輩。アリサ先輩は、そろそろお話できそうですか?」

「……どう? アリサ、もう落ち着いた?」


 パン子先輩は、自分に寄りかかり項垂れる知的少女……だった彼女にそっと呼び掛けた。そうすると、アリサ先輩は外していた眼鏡をかけ直して顔を上げる。


「すいませんでした。恥ずかしいところを見せてしまいましたね」

「いやぁ……」

「ふっ。どうやら私自身、内心不安を抱えていたようですね。あのような失態を見せることなど、本来あり得ないことです。ねえ、ぱん子」

「確かに人前では絶対に見せないねー。でも、二人きりの時は週に一回くらい私に甘えて痛いぃッ!!」


 話の途中で、アリサ先輩がパン子先輩の頭を叩いた。痛そう。

 アレだね。アリサ先輩って、見た目と違って『パワー系』なんだな。言葉で戦うのではなく、腕力で相手を黙らせる感じだ。


「それで、先輩方。俺と一緒に、屋上まで来てくれるんですね。危険なお願いなのは重々承知していますが……」

「任せてー! これでも私、結構魔物と戦っている方なんだから! 大船に乗った気でいてよねっ!」

「……まあ、我々も八方塞がりな状況です。貴方と同行して何か進展があれば現状の回復に繋がるかも知れません」


 最初から賛成してくれていたパン子先輩に加えて、アリサ先輩も渋々と言った様子で賛同してくれるようだ。

 さあ、これで戦力は増えた。屋上にいるあの二人に対抗できるかは分からないが、それでも人間の仲間が増えたのは心強い。

 最悪、二人を盾にすれば俺が逃げ切れる確率も上がるだろうし……居て損は無いはずだ。


「では、早速屋上に向かいましょう。アレから結構時間が経ちましたし、そろそろ向こうで状況の変化が起こっているかも知れません」


 俺達は、倉庫を後にして校舎に向かうことにした。

 先輩方は、外にいる魔物を警戒して倉庫から離れるのを躊躇っていた。しかし、俺がいれば大抵の魔物は無力化出来る。エスコートならお手の物だぜ!


「……な、なんか。魔物に囲まれながら歩くのってちょっと怖いね」

「安心してくださいパン子先輩。この数時間で、こいつらが反旗を翻したことはありません。これからも無い…………はずです」

「不安!」

「大丈夫。何があってもぱん子だけは私が守るから」

「それよりありさは、私から引っ付くのをやめてよ。歩き難い」


 アリサ先輩は、この数十分の間ずーっとパン子先輩にベッタリ引っ付いていた。


「そうだ。これから戦闘があるかも知れませんし、俺にお二人の職業とスキルを教えてくださいませんか?」


 俺は、自然な流れで二人の力の詳細について尋ねた。


「私の職業は『シェフ』! 色んな調理器具を召喚したり、作った料理を相手に食べさせるとその人にバフ効果を与えることが出来るよー!」

「バフ? ……それはRPGで言うところの『攻撃力アップ』だったり『スタミナアップ』だったりする現象のことですか?」

「多分、そんな感じ。あと、この良く切れる包丁は武器代わりにもなるよー!」


 そう言ってパン子先輩は、何も無いところから包丁を召喚してそれを掲げた。……なるほど、さてはアーサーを滅多斬りにしたのはあの包丁だな。

 アレは目にも止まらぬ早技だった。弱い魔物なら一瞬でバラバラにしてしまうことだろう。


「ありさの職業はちょっと変わっていて、『囲碁棋士』って言う職業なの」

「囲碁?」

「私、中学まで囲碁をしていたんです。それに関係しているかは分からないですが、このような職業に。スキルは、『陣地形成』。四角形の陣地を築けます」

「それって、さっき段ボールを囲っていたあのバリアみたいなやつですか?」

「はい。召喚した碁石を四方に配置することで結界を作ります。外敵から身を守るためのスキルです」

「おー。それなら魔物と遭遇しても安全ですね!」


 これで二人の職業とスキルがわかったな。

 一応、ステータスの方も聞いてみるか。


「因みに、お二人のLVは幾つですか? 俺は、LV4なんですけど」

「LV3です。職業LVは4になっています」

「私、9ー! 職業LVは6!」

「パン子先輩強いですねー!」


 ランク☆の魔物を倒す毎に、約20〜50の経験値が手に入ることを考えると、パン子先輩は少なくとも十体を超える魔物を倒している計算になる。アーサーを滅多斬りにしたこともあり、戦力としてはかなり使える。

 それにアリサ先輩。彼女のスキルもなかなか有用そうだ。いざという時は、守ってもらうとするとしよう。

 ……まあとはいえ。これから向かう先にいる魔物二人は、きっと今までにない強敵だ。

 俺は、後衛で行く末を見守り、戦況が怪しくなったら即逃げるぜ!

 出来る限りの戦力を用意したが、最悪ここにいる全員がやられても俺だけ無事なら問題ない! 自己を優先してこその自己中心主義だ!

 ……さて、そろそろ到着するな。

 俺は、周囲の警戒を厳にしながら、すぐ目の前に聳える校舎を見上げて、生唾を飲んだ。

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