第22話「リリー、パーティー脱退」
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前回までのあらすじ。
仲間が寝取られた。
「いやいや。寝取られたってそんな……」
「くっ! でも、どれだけリリーが心変わりしようと、俺のステータス画面にはちゃんとお前の名前が…………な、なにぃ!?」
俺は、驚愕した。
ステータス画面には、このように表示されていたのだ。
仲間11/19
・アーサーLV18 経験値4668
・タニグチ ヒカルLV13 経験値2626
・ラムレイLV13 経験値2500
・スラタロウLV14 経験値1844
・ヒューマンゾンビLV2 経験値121
・ヒューマンゾンビLV1 経験値100
・ヒューマンゾンビLV1 経験値100
・ヒューマンゾンビLV1 経験値100
・ヒューマンゾンビLV1 経験値100
・ヒューマンゾンビLV1 経験値100
・ヒューマンゾンビLV1 経験値100
仲間一覧の中に、『リリー』の名前がなかった。どこを探しても記入されていない。
先程のリリーの態度。そしてこの一覧。
間違いない。どういう訳かわからないが、リリーは俺のパーティーから抜けている状態となっていたのである。
「これは一体……。いや、だったらもう一度スナッチすれば」
俺はそう考えて、直後漆黒の鎖を召喚する。幾つもの鎖が一斉に交差して、まっすぐリリーへと向かって放出される。
「ちょ、ちょっと!」
コトノハさんは、驚き戸惑うがもう遅い。放たれた漆黒の鎖は勢いを弱めることなく突き進む。
一方リリーは、特に鎖に対して抗おうともせず、静かに座っていた。
そして。
バリィィン!!
…………何と、漆黒の鎖はリリーの体に触れた瞬間、ガラスが砕けるような音を立てながら、バラバラに壊れてしまったのだ。
「こ、こんなことがっ!」
砕けた鎖が、煙のように消えていくのを眺めながら、俺は苦汁を舐めた。
謎の不審者によって強くされたリリーは、俺の元から離れてしまった。俺が確認してきた限りの最高戦力が、味方か敵かわからないこの状況。……これは非常に危険だ。
「みー」
「ああ、ビックリした。ねえ二階堂くん。いきなり鎖を出すのはやめてよ。ていうか、どうしたの? 突然慌て出したりして」
何が危険かって、リリーはどうやらコトノハさんに懐いているようだからだ。
コトノハさんは、今回の事件を起こしたであろう『羽の少女』。その当人ではないかという疑惑が掛かっている人物だ。そんな彼女に、リリーという戦力が味方をするとなれば、俺に危害をもたらす可能性が出てくる。
……漆黒の鎖が、リリーに通じなかった原因はおそらく『ランク』。星二つのオークでも効かなかったのだから、星三つのスパイダーガールにも効かなかったのも道理。
そうなると、だ。今の俺に、リリーを止められる術はない。対抗手段は『逃走』か『懐柔』の二択に絞られる。『隷従』という選択肢はないね。そうなるくらいなら死んでやる。だが、もちろん俺は死にたくないので、何れにせよ対策を打たねばならないだろう。
「二階堂くん?」
「ああ、なに?」
「……そんなに、ショックだった? リリーのこと」
「ショックだよ! リリーは、俺が最初にスナッチしたホワイトスパイダーだった。そりゃあ、数時間程度の関係だけど、少なくとも俺にとっては死戦を共に乗り越えてきた信頼できる仲間だったんだ! それが、急に素っ気なくされたら誰だって傷付くってものだよ!」
「ん〜。リリーが二階堂くんのパーティー?から外れたってことだよね? でも、この子私のいうことはちゃんと聞くみたい」
「そのようだね。そうでなかったら、ここまでついて来なかっただろうし。もしかしたらコトノハさんが、俺の持つ『モンスターマスター』のような力に目覚めたのかもしれないね。どこからともなく音声が聞こえてきたり、目の前に突然ステータスが表示されたりする?」
「そういう事は、今のところ起こってないけど……」
「ふーん。しかし、そうなるとこのままリリーを俺達の側に置いておくのは怖いよね。どっかに捨ててくる?」
「……さっき、『信頼できる仲間』だって言ってなかった?」
「うん。でも、今は信頼できないから仲間じゃない」
「…………」
あれからまだ数時間。突如として手に入れた『モンスターマスター』の力を、俺は全面的に信頼している訳ではない。それでも、ここに至るまで様々な場面で助かってきたのは事実だ。その力が通じない相手、それも会話すら出来ない異形のモノなんて、普通怖くて信頼なんて出来ない。
信頼は大事だ。信頼関係の大きさ深さで、交友とは広がっていくのだから。
「まあ、捨ててくるっていうのはもちろん冗談だけどさ。不確定要素は出来るだけ排除したいんだよ俺は。なので、リリーには当分お留守番してもらおう」
「えっ。それって、外には出さないってこと?」
「リリーは確かに強い。それはステータスを見ても明らかだ。だけど、その力が万が一暴走でもしたら? 要らぬ事故が起こりかねない」
まあ、外に出さない一番の理由は、リリーを自由にさせないことにある。
俺が目を離している隙に、外でレベルアップでもされたらますます厄介だ。対抗手段が整うまで、リリーには大人しくしてもらうべきだろう。
「……確かにそうかも」
「だろう? という訳で、リリーと一緒に保護者のコトノハさんもこの拠点に」
「みー」
その時だった。
コトノハさんの隣で静かに座っていたリリーが突然鳴き声を上げたのだ。
「ん。どうした?」
「…………ねえ、二階堂くん。何か聞こえない?」
「えっ? ……何も聞こえないけど」
少し耳を澄ませてみたが、異質な音らしきものは何も聞こえなかった。
「ううん。やっぱり聞こえる。これは……人の声?」
「何だって?」
俺は最初、首を傾げたが、しばらくして思い当たる節があることに気づく。
体育館に立て籠もっていた生存者達だ。彼らは、あのオーク達に襲われた後、どうしたのだろう? 劣勢だったように見えたし、もしかしたら逃げてこの付近まで移動してきたのかもしれない。
「うーむ。様子を見にいくか無視するか、悩みどころだなぁ」
「みー」
「って、おい!」
俺がどう動こうと隙を見せたその瞬間。
リリーが、茶道室の扉を開いて、勢い良く外へと飛び出したのだ。あまりの速度に、油断していた俺は、見す見すリリーを逃してしまう。
「リリー! ちょっと、急にどこ行くのー!」
「ああ、なんてこった! これじゃあ、外に出るしかないじゃないかよ〜!」
良くも悪くもリリーは、現状での最高戦力。そんな奴を見失う訳にはいかない。
俺とコトノハさんは、外で飛び出したリリーを追いかけるため、急いで拠点を後にするのであった。
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