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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
終章 大地の王冠
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大地の王宮5階層

 しっかりと休憩を取った後、ハルたちは5階層に降りてきた。5人を出迎えたのは煉瓦のような物で造られた明らかに人の手によるものとわかる通路だった。


 「さっきの神殿と同様に人工の遺跡だね。でも、これはただの煉瓦じゃないなぁ。一体何だろう?」


 「ふむ。これはひょっとしたら古代文明の遺跡かもしれないな。セシリア様はどう思いますか?」


 「そうね。正確なことはわからないけどこの煉瓦風の建材はとてつもなく高い技術を駆使して造られているようね。古代文明の遺跡にこれと似たような建材で造られたものも見つかっているし可能性は高いと思うわ」


 「古代文明の遺跡って時折太古の遺産アーティファクトが見つかるというあの?滅多に見つからない上にかなり対処が難しい罠などが仕掛けられていることが多いと聞きましたが」


 「そうらしいニャー。発掘作業の度に大きな被害が出るらしいニャー」


 「とにかくまずは進路を決めよう。ハル、気配を探ってみてくれ」


 レナードの指示を受け、ハルは5階層の気配を探り始めた。近くから始め、徐々に索敵範囲を広げていく。


 「うわぁ・・・。最低でもAランク上位、上はSSランク下位。普通にSランク以上の魔獣が歩き回っているよ。数はともかく、魔獣の質は秘境に近いくらいだね。あと、妙な雰囲気を放っているというか、生気を感じさせない相手がいるな。アンデットって訳でもなさそうなんだけど・・・」


 「ハルの言う生気を感じさせない相手というのは、古代文明の遺跡の一部で見られる特殊なゴーレム、正確に言うと、自立式魔動兵器という奴だろう。古代人が造り上げた機械の番人だ。そこに罠が加わるとかなり厄介そうだな。それで、ボス部屋の位置は特定できるか?」


 「ちょっと待ってね・・・。――!!これは、多数の人間の気配!?特殊な土属性の魔力に満たされた広い空間に数百の人間が集まっているよ。一人妙な気配を放つ奴が混じっているけど」


 「それって!!もしかして魔石と魔水晶を運んでいた兵士たちに追いついたのではないですか?」


 セーラが身を乗り出して尋ねてくる。ハルは慎重に気配を見定めてから頷いた。


 「そうみたいだね。人間たちの傍で何かの魔道具が作動しているみたいだ。かなりの数が稼働しているみたいだし、魔石と魔水晶はその魔装具を動かすために集められていたのかも」


 「なるほど。ようやく終わりが見えてきたようだ。これよりその人間たちが集まっている場所に向かう。強敵が歩き回っているようだし、ここが古代文明の遺跡ならばかなり厄介な罠も設置されている筈だ。目的地まで後一息だ。気を引き締めなおして出発しよう」


 5人は遺跡の通路を歩き始めた。どうも、迷路のように複雑な構造になっているようなので、アイテムボックスから紙とペンを取り出し、マッピングしながら進んでいく。


 「ストップ!魔獣が1体やってくるよ」


 そのまま進むとちょうど交差点付近で魔獣と鉢合わせしそうだったので足を止め、攻撃の用意をして魔獣が姿を見せるのを待つ。数十秒後角から姿を見せたのは1層の階層主だったミノタウロスだった。


 「ボスクラスが雑魚として彷徨うろついているのか。【ライトニング】!!」


 ミノタウロスに気付かれる前に魔法を放ち攻撃を仕掛ける。反撃する暇も与えずにミノタウロスを倒し、ハルたちは再び歩き始めた。







 「っと、足元に艶消ししたワイヤーがあるよ。気を付けて」


 トラップの起動装置になっているのであろうワイヤーを跨ぐように越え、通路を進む。落とし穴や、壁の穴から矢が飛んでくるという単純な罠から、竜を模した石像から超高温の火炎放射が放たれたり、センサーに感知されると周囲の壁が動いてあちこちから銃口のような物が飛び出し、レーザー系の魔法が乱射される罠、部屋に入ると閉じ込められ、急いで罠を解除し部屋を抜け出さないと徐々に床から洒落にならない威力の溶解液が湧き上がってくるトラップなど様々な罠がハルたちを待ち受けていた。それだけでなく、通路が壁に隠されていたり、離れた場所にあるギミックを作動させてからでないと進めない場所があったりし、さらにはマッドスライムキングやドラゴンモドキなど、上位の魔獣の存在もある。ハルたちでも思うように進めない厄介な遺跡だった。


 それでも、ハルたちは力を合わせてそれらを乗り切り、人間たちの気配にかなり近付いてきていた。


 「もう一息だ。頑張ろう」


 「うん!あ、何かの気配が近付いてくる。これは・・・義父さんが言っていた特殊なゴーレム?」


 生気を感じさせない何かの接近を感知しハルたちが身構える。


 少ししてハルたちの目の前に奇妙なものたちが現れた。


 金属風の謎の素材で構築された様々な形のゴーレム。いや、ゴーレムと言うには語弊があるだろう。土属性の魔法により生み出されるゴーレムと違い、目の前の存在は魔法と製作の高い技術をもつ者が設計し、自らの手で組み立てた機械や魔道具と言ったほうがしっくりくる。


 人や動物、魔獣を模したと思われる精巧な機械のゴーレム。これが自立式魔動兵器というものらしい。


 機械の番人たちはしばらくハルたちを観察するかのように停止していたが、どうやらハルたちは外敵だと認識されたらしい。一斉に動きだし口や肩から飛び出してきた銃口のような部分から様々な属性のレーザー系の魔法を撃ってきた。


 ハルとセシリアがバリアを張り攻撃を防いだ後、すぐさま魔法で反撃する。しかし、自立式魔動兵器を構成する謎の金属に魔法の効き目は小さいようで、かなり強力な魔法を撃ってもなかなか倒れない。


 「魔法はダメか。だったら物理だ!!」


 背中の剣を抜き、ハルは人型の自立式魔動兵器に斬りかかった。しかし、謎の金属は恐ろしく硬く、アダマンタイト製の剣があっさりと弾かれた。


 「くっ、なんて硬さだ!ひょっとしてオリハルコンよりも硬いんじゃ!?戦技でも使わないと傷一つ付けられそうにないな・・・」


 攻撃を受けた人型の自立式魔動兵器が腰に差していた剣の鍔より下の部分のような物を手に取った。すると柄の先に焔の刃が現れ、それを振り下ろしてくる。直感で剣で受けたらすぐにアダマンタイトの剣が溶かされて折られてしまうと判断したハルは身を捻って躱し、カウンターで闘気を纏った斬撃を相手に叩き込む。ようやく有効なダメージを与えられたようで、人型の自立式魔動兵器は傷口から煙を上げ、2、3回ぎこちなく震えたかと思うと機能を停止し動かなくなった。


 「戦技でならちゃんとダメージを与えられるみたいだ!」


 ハルの勝利を受け、セシリアはサポートに回り、他の4人が戦技を駆使して自立式魔動兵器を破壊していく。


 自立式魔動兵器の様々な属性のレーザーの魔法も焔や氷などの魔力で形成される刃もかなりの威力を誇るため、攻撃を受けないよう慎重に戦ったことにより時間は掛かってしまったもののなんとか敵集団の殲滅に成功した。


 「思っていた以上に手強かったな。アキト国うちよりも遥かに高い技術で造られたようだ」


 「イゴールに見せたら大喜びするかもね。一通り回収してから行こう」


 壊れた自立式魔動兵器を回収し、ハルたちはその場を離れた。罠と魔獣に警戒しながら謎煉瓦で造られた通路を進んでいく。そこから2、3回角を曲がり、火炎放射をしてくる竜の石像を破壊したところで、前方に巨大な扉が見えてきた。


 「ボス部屋の扉に似ているけど、少し違うみたいだね。禍々しいと言うよりは神々しいというべきかな」


 「だが、ボス部屋と同質のものなのだろうな。奥から不思議な気配を感じる。それと多くの人間と何かの魔道具だな」


 「私たちがこの迷宮に入ってからそれなりの時間が経過しているわ。恐らく私たちの存在は露見しているでしょうね」


 「そうですね。顔はフードで見られる心配はないし、正面から突入しましょう。彼らの目的はわからないが、ツァイト様の予言がこのことを指しているのはほぼ間違いない。制圧して話を聞くことにしましょうか」


 「?」


 「ああ、セーラはわからないよね。まあ、ここまで関わったんだし、後でちゃんと説明するよ。今回の件のことも、オレのことも」


 「ハルのことは表沙汰にできない秘密だと思っていたんですけど私が聞いてもいいんですか?」


 「さっきも言ったけどここまで関わっちゃったからね。今更さ。いいよね義父さん、セシリア?」


 「俺は構わないと思っている。セシリア様はどうですか?」


 「そうね・・・。問題ないと思うわ。しばらく様子を見せてもらったけど、この娘なら私たちの事情を知っても大丈夫でしょう。それよりも今は目の前のことに集中しましょう。私たちのことを話す前にこの件を片付けてしまわなければね」


 ハルたちは扉の前で魔法薬を使いコンディションを整える。


 「みんな、用意はいい?」


 ハルの問いに全員が大きく頷いた。


 「わかった。じゃあ開けるよ!」


 ハルは巨大な扉に手のひらを押し当て、腰を落としグッと力を込める。


 徐々に巨大な扉が開きだし、扉の向こうから明かりと不思議な気配がハルたちの立つ通路に漏れ始めた。










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