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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
終章 大地の王冠
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大地の王宮1階層

本日2話目です。

 ハルが押し開いた扉の先には洞窟のような雰囲気の場所が広がっていた。光が差さない環境の筈だが、岩肌に張り付いた珍しい苔がぼんやりと光を放っており洞窟内はそれほど暗くはない。


 「この感じ、間違いなく迷宮だな。エド城の地下にこんな場所があったとは」


 レナードが周囲を見渡しながらハルに続いて足を踏み入れた。セシリアたちも続く。


 「これは・・・。ただの迷宮ではないわね。ハル、あなたも感じるかしら?」


 「うん、どうやらダンジョン全体にかなり濃い土属性の魔力が漂ってるね」


 「土属性、ですか?ということは土属性の魔獣が現れるのかもしれませんね」


 「それなりの強さの魔獣がうろついているみたいだけど・・・兵士たちはポータルで移動してるみたいだね」


 ポータルの付近にいくつもの足跡が残っている。魔石の運搬をしていた兵たちはポータルで一気に奥に向かったのだろう。


 「急いで追跡するニャー!気を引き締めて探索開始だニャー!」


 ハルたち一行は早速迷宮の探索を始めた。








 「はぁっ!!【Xクロススラッシュ】!!」


 アダマンタイト製の刃が牛と人を合わせたような容姿を持つBランク魔獣、ビーストホーンの体を鋭く切り裂く。ビーストホーンは膝から崩れ落ち、ずしんと音を立て斃れた。


 「ふう、無事倒せました」


 最後のビーストホーンを倒したセーラがハルたちの元に戻ってきた。


 「お疲れセーラ。強敵だったけど充分戦えてるね」


 「いえ、やっぱり装備の性能によるところも大きいです」


 「ふふ、そう謙遜することはない。確かに装備の助けもあるが、それだけで倒せる相手ではない。その歳でそれだけの力量なんだ。もう少し胸を張ってもいいだろう」


 「あ、ありがとうございます」


 「それにしてもBランククラスの魔獣がごろごろいるとか外界にしては凄いダンジョンだね」


 「そうね。とはいえ私たちなら駆け足で突破できるレベルでしょう。私たちの侵入もいずれはばれてしまうことだし急いで進みましょう」


 「了解ですニャー」


 ハルたちは迷宮の中をどんどん突き進んでいた。既に1階層は大部分を制覇し、下層への階段付近だと思われる場所に来ている。アキト国の4人はもちろん、装備で実力を底上げしたセーラもBランクレベルの敵なら蹴散らせるようになっていた。


 「あー、またビーストホーンだ。【ライトニング】!!」


 近寄ってきたビーストホーンを魔法で瞬殺し、通り過ぎざまに【アイテムボックス】に収納しながら洞窟内を進んでいく。 突き当りを曲がったところでハルたちは足を止めた。


 「あれは・・・ボス部屋の扉じゃないか?」


 ついにハルたちの前に巨大な扉が見えてきた。階層の主が住むボス部屋への入口だ。


 「気配を感じる。何かいるようだな。慎重にいくぞ」


 レナードの言葉に頷いて、禍々しい雰囲気の扉を押し開き、ハルたちは1階層のボス部屋に入った。


 部屋の中は真っ暗で良く見えない。奥から感じる気配に警戒しながら進んでいくと、背後でぽっ、と明かりが点いた。明かりは横へ連鎖しながら広がっていく。戦鬼のダンジョンと同じように、松明に火が点いていっているのだ。無数の松明が広々とした部屋をぼんやりと照らし出す。そして部屋の中央付近には大きな影が浮かび上がった。


 「Bランク魔獣の中ではビーストホーンが多かったからひょっとしてと思っていたけど・・・」


 松明の淡い光が照らし出すのは天に向かって伸びる2本の曲がった鋭い角、ギラギラと輝く血に飢えた瞳、筋骨隆々とした巨大な体躯、その腕には幾多の血を吸ってきたかのような真っ赤な両刃の斧。


 「ビーストホーンの亜種、ミノタウロスか!」


 「グオォォォォォ!!!!!」


 この層の階層主はAランク上位の魔獣ミノタウロスのようだ。ミノタウロスは巨大な斧を振り上げながら大声を上げて威嚇してくる。ハルたちもミノタウロスに武器を向け臨戦態勢に入る。その時、セーラが皆より一歩前に出て口を開いた。


 「すみません。ここは私一人にやらせてもらえませんか?」


 ミノタウロスをじっと見据えながら後ろの4人に声をかける。


 「一人で?」


 「はい、この装備でなら十分戦えると思います。今は少しでも皆さんに追いつきたいんです」


 「ふむ・・・」


 確かに装備で実力を底上げしている今ならAランクのミノタウロス相手でも一人で戦えるだろう。パーティーを組んで魔獣を倒せば全員が成長をするが、戦闘中の貢献度合いによって成長量は変わってくる。それに魔獣を倒して得られる成長は、自分本来の実力よりも上の相手を倒せば大きくなる。より強い相手を倒せばより大きな成長ができ、逆に自分本来の実力より弱い魔獣を倒してもそれほど成長はせず、より弱い相手であるほど得られる成長量は小さくなっていく。Aランククラスの魔獣相手ではハルたち4人はそれほど成長が見込めないのも事実だった。


 「うん。オレは構わないよ。皆は?」


 「そうだな。いざという時は手を出させてもらうが、俺も構わない」


 「そうね。この先でもっと強い敵と遭遇する可能性もあるんだし存分に戦っておきなさい」


 「セーラ頑張るニャー!」


 4人も特に異論はなかった。いざという時に動けるように警戒は続けながらも、セーラに場所を譲って後退する。


 「ありがとうございます」


 セーラは4人に礼を言い改めてミノタウロスと対峙した。


 「グオォォォォ!!!」


 ミノタウロスもセーラ一人で戦うつもりだと理解したらしい。侮られたと感じたのか苛立たしげに吠えるとセーラに向かって駆けだした。


 「行きます!!」


 セーラは【身体強化】をし、ショートソードを下段に構え、ミノタウロスを迎え撃つ体勢をとる。


 ミノタウロスは大きなステップでセーラに駆け寄るとリーチを活かして先制の一撃を振り下ろした。セーラはギリギリまで呼び込んでから斧を躱し、一歩踏み込んでカウンターの斬撃を放つ。ミノタウロスは体勢的に躱すのは難しいと判断し、驚異的な腕力で斧を引き戻し、柄の金属部分でセーラの剣を受け止める。そのまま押し合いになると、純粋なパワーでは劣るため不利になると判断したセーラが素早く後退し、再びミノタウロスと向き合った。ミノタウロスもセーラのスピードと武器の切れ味は危険なものと判断したらしく無理に追撃はかけず、距離をとって睨み合いになった。互いに一歩も動かず睨み合いながらもパッと見ではわからないような細かいフェイントを交えた駆け引きをし、互いに隙をつくろうと集中している。


 均衡を崩したのは再びミノタウロスからだった。先程とは打って変わり小さな歩幅でセーラに迫ると膝元を狙って斧を横薙ぎにした。セーラは一歩下がり斧をやり過ごした後、間合いを詰め懐に入り込む。しかし、セーラの動きを読んでいたミノタウロスは斧を横薙ぎにしたことにより生まれる遠心力を活かし、そのままぐるりと体を回転させ勢いをつけて肘打ちを放った。躱し切れずセーラに肘打ちが直撃し、セーラは勢いよく弾き飛ばされた。しかし、高い防御力を誇る防具と、肘が直撃する瞬間に跳び上がることによって衝撃を上手く逃がしたことにより体勢は崩されたもののほとんどダメージは入っていない。


 だが、その隙を逃すほどAランクの中でも上位に位置するミノタウロスは甘くない。大きな歩幅でセーラに迫ると斧を上段に振り上げた。その斧は闘気を纏って強い光を放っている。ミノタウロスがセーラ目掛けて斧を振り下ろした。次の瞬間、衝撃波が巻き起こり、さらに地面が砕け、そこから多数の太い槍状の岩が飛び出してくる。斧系統武器の上級戦技【ガイアクラッシャー】だ。勝利を確信しミノタウロスが巻き上がる土煙を見下ろす。しかし、そこにセーラの姿は既になかった。直後、ミノタウロスは真横から強い殺気を感じた。視線を送ると闘気を剣に纏ったセーラが斬りかかってくるところだった。戦技の後の硬直で動けないミノタウロスは全身に力を籠め筋肉を鋼のように硬くすることでなんとかセーラの攻撃を耐えようと試みる。しかし、アダマンタイト製の剣の切れ味とセーラの技量はミノタウロスの防御を軽く凌駕した。


 「グラディウス流【烈風斬】!!」


 セーラの剣は風の刃を纏い、ミノタウロスの胴体を一文字に深々と切り裂いた。


 「グオォォォォ、ォォ・・・」


 ミノタウロスは悲鳴をあげた後、力を失いぐらりとバランスを崩して倒れこみ、そのまま動かなくなった。


 ミノタウロスが完全に絶命したのを確認し、セーラは剣を鞘に戻した。直後ハルが声を掛けてきた。


 「やったねセーラ!!怪我はない?」


 「はい、大丈夫です。肘打ちを受けた時はそれなりのダメージを覚悟しましたが、ほとんどダメージがなかったのでとても驚きました。この防具は本当に凄いですね」


 「まあね。でも、実はその防具がなくてもギリギリ勝てたんじゃない?セーラがあの肘打ちを受けたのわざとだよね?しばらく組んでたからわかるけど、セーラが得意なのは守りの剣術、後の先をとってカウンターを叩きこむスタイル。肘打ち喰らって吹き飛んでバランスを崩すっていう一連の流れはミノタウロスの大技を誘う罠だった。けど、いままで碌にダメージを受けてなかったしその防具の正確な防御力は知らなかったわけで、それでもあの作戦を実行したのは【身体強化】と衝撃の受け流しだけで一発なら確実に耐えられるって判断したからでしょ」


 「流石ハル。よく見ていますね。実際私もそう考えてあの手段をとりましたから。でも、防具がなかったら今頃気絶くらいはしていたかもしれませんね」


 「まあとにかくセーラが無事でよかったよ。これで第1層もクリアだね」


 ハルとセーラの元に他の3人もやってきた。


 「お疲れ様。いい戦いだった。少し休むといい」


 「この魔法薬を飲んでおきなさい。体力の回復と魔力の回復が早まるわ」


 「一応奥のドアを確認してくるニャー」


 セーラはセシリアから魔法薬を受け取り飲み干す。その間にハルがミノタウロスを回収し、ロッテが部屋の奥のドアの先を覗いてきた。


 「やっぱりあの先には下への階段とポータルがある小部屋があったニャー」


 「そうか。よし、少し休憩したら次の層に進むぞ」


 ハルたちはセーラの回復を待ってから再び歩き出し、奥の小部屋に向かった。




 







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