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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
第3章 異変の調査
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弟子?

 短めなので19時頃もう一話投稿予定です。

 「俺を弟子にしてください!!」


 「「・・・は?」」


 翌日の夕方、依頼を終えて冒険者ギルドに帰ってきたハルとセーラを待ち伏せしていたらしいジーク少年が、2人に頭を下げながら開口一番そう言った。思わず2人は顔を見合わせる。


 「俺、冒険者になるってことを舐めてました。だから俺に冒険者として必要なことをを教えて欲しいんです!!」


 「いや、昨日の今日で何言ってんの!?というか馬鹿な真似はしないって昨晩言ってなかった?」


 「言いました。だからちゃんと冒険者に必要な物を教わろうと思ったんです!」


 目をキラキラさせながら迫ってくるジークにハルは頬を引き攣らせる。目の前の少年(ジーク)はひょっとしてとんでもない馬鹿なのかもしれない。どうしたものかとハルとセーラが思い悩んでいるとジークを探していたらしいグリシナがこちらに向かって駆けてきた。


 「こんにちは、ハルさん、セーラさん。昨日は本当にありがとうございました。教区長様がフェザースノー草を使った薬を完成させてくださり、シスタージエナの体調も落ち着きつつあります。シスターがぜひお礼を言いたいそうなので、近い内にぜひ孤児院に遊びに来てください。それとジーク、また急にいなくなったと思ったらここで何やってるのよ?あまり心配させないでって言ったでしょ!」


 「大丈夫、あんな無茶はもうしないって!グリシナに心配掛けないように2人に冒険者として必要なものを教えてもらおうと思ったんだ」


 胸を張ってそう言うジークにグリシナは頭を抱え込んだ。


 「何で昨日死にそうな目に遭ったのにまだ冒険者になろうって思うのよ。他にも仕事はいくらでもあるでしょうに・・・」


 グリシナの言葉を聞いたジークが少し真面目な顔をして話し出す。


 「昨日、初めて魔獣に襲われて、とても怖い思いをした。自分に力が無いと街の外ではずっと魔獣の存在に怯えることになる。けど死ぬまで一歩も街から出ずに暮らすのも難しい。それに、街の中も絶対に安全ってわけじゃない。昔、魔獣の大群が街を襲ったって話を聞いたことがあるし、今でも村くらいの規模の場所では魔獣の被害が出ることもあるみたいだし。それに、危ないのは魔獣だけじゃない。世の中には悪い人もいる。もしも孤児院のみんなや、その・・・グリシナが危険に巻き込まれたときに力がなくて何もできなかったら俺は絶対後悔する。だから、冒険者になっていざという時にみんなを、グリシナを守れるようになりたいんだ!」


 「―――ジーク!!」


 頬を赤く染めたグリシナがジークに抱きついた。ジークとグリシナの周囲に桃色の空間が広がっていく気がする。


 「・・・セーラ、行こうか」


 「・・・そうですね」


 目の前でいちゃつくバカップルを無視してハルとセーラは立ち去ろうとする。しかし、ジークがそれに気付き、再び2人に頼み込む。


 「お願いします!俺を弟子にしてください!!」


 さらに今度はグリシナまで頭を下げてきた。


 「お願いします!ジークと一緒に私も弟子にしてください!魔術の素養があるということでシスターから少し魔法を教わっているので少しはお役に立てます!」


 「「「・・・は?」」」


 グリシナの言葉に今度はジークまでポカンとした。


 「ええと・・・、グリシナさん?何を言っているのかな?」


 最初に正気を取り戻したハルが訊ねる。


 「私、ジークのに守られるだけの存在になるのは嫌なんです!私もジークの背中を守れたらって・・・」


 「―――グリシナ!!」


 頬を赤く染めたジークがグリシナを抱きしめた。ジークとグリシナの周囲に再び桃色の空間が形成されていく気がする。


 「・・・行こう」


 「・・・はい」


 さっさとその場を離れようとしたが、やはりまたジークとグリシナに気付かれてしまった。その後もずっと頼み込まれ、いい加減根負けしたハルとセーラはとりあえず情報屋との約束がある5日後までという条件で了承した。ちなみに5日後の朝にはオルタンシアの冒険者ギルドで冒険者講習が始まるので、2人をそこに放り込むつもりだ。






 翌日から、ハルとセーラは依頼の合間に、2人にいくつかのトレーニングの指示を出した。といってもほとんどがただひたすら走り続けるというものであったが。


 「ほら、走れ走れ!走れない冒険者は魔獣の餌にしかならないぞ!」


 「2人ともペースが落ち始めてますよ!!」


 「はあ、はあ、ハルにい、俺もう限界なんだけど・・・」


 「なんだか思っていたトレーニングと違います・・・」


 2人はハルたちから剣術や、魔法などのもっと冒険者っぽい事を教えてもらえると思っていたらしい。しかし、冒険者にとって何より重要なのはスタミナである。だからこそ冒険者講習でも最初に死ぬほど走らされるのだ。


 「そんな顔するなよ。5日後にはオレとセーラがどれだけ優しいか知ることになるんだからさ」


 「「??」」


 ジークとグリシナには冒険者講習を受けさせることをまだ言っていない。昨日しつこく弟子入りを志願してきたことへのささやかな仕返しである。断じて目の前でいちゃつかれたのにイラついたからではない。


 後は、ジークに剣術の基本の型をいくつか教え、繰り返し素振りをさせたり、グリシナに魔力のコントロールの特訓をさせたりした。






 ジークとグリシナの特訓を行い始めて4日目の夕刻。


 「―――それでは明日、9月18日の第二点鐘までに受付までお越しください」


 「は、はい」


 「ありがとうございます」


 ジークとグリシナはハルの指示で冒険者に仮登録し、ギルドカードを受け取った。同時に、翌日の冒険者講習に予約した。なお、2人の登録費用はハルのポケットマネーから出ている。


 「登録終わった?」


 「うん、ハル兄!でもほんとにお金を出してもらって良かったの?」


 「私たち、結局フェザースノー草の分のお金も、ジークたちを助けてもらったお礼も受け取ってもらってないのに・・・」


 ジークとグリシナは申し訳なさそうな表情をしている。2人にとってはギルドの登録費用もかなりの大金なのだ。


 「気にしなくてもいいよ。明日の冒険者講習がたのし・・・ゴホン。2人とも明日からの冒険者講習頑張ってね」


 「「??はーい、頑張ってきます!!」」


 何も知らないジークとグリシナは仲良く手をつないで帰っていった。


 2人の後姿を眺めながらハルは僅かに口角を上げる。セーラは心の中で合掌した。







 翌日の夕方前、この日は情報屋に顔を出す約束があるので、ハルとセーラはいつもより早めに依頼を終えた。受付に報告した後、2人は裏の訓練場に向かった。訓練場には数日前に行った闘技場の観戦席のような見学用のスペースが用意されている。2人はそこに上がってグラウンドを見下ろした。グラウンドには様々なトレーニングをしている冒険者と、戦闘訓練ひたすらダッシュ中の見習い冒険者(ゾンビ)たちがいた。


 「ええっと・・・。あ、いたいた。ははっ、流石にバテてるね」


 ふらふらになりながらも鬼教官にどやされ、走っている見習い冒険者(ゾンビ)たちの中にジークとグリシナがいた。やっぱり13歳の2人は今回の冒険者講習の受講者の中でも最年少のようだ。冒険者に年齢制限はないが、ほとんどの者が成人である16歳以降に冒険者になる。ハルたちの時も14歳のハル、セーラ、パベルの3人が最年少だった。


 2人は砂袋を免除されているようだったがそれでも半日近く走らされているため目が死んでいた。上から見ているハルたちに気付く様子もなく、フラフラと前に進み続ける。


 「頑張れよジーク、グリシナ。この経験がきっと2人を強くする!!」


 「とても楽しそうですね・・・」


 満足げなハルを見て、セーラは呆れたようにため息をついた。










 

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