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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
第3章 異変の調査
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再び情報屋へ

本日2話目です。

 ジークとグリシナの訓練をしばらく見守った後ハルとセーラは一旦宿舎に戻り、入浴後食堂で夕食をとった。夕食を終えたくらいには10日前情報屋に向かったくらいの時間になっていた。


 「そろそろ、あの情報屋に向かおうか」


 「そうですね。何か情報が入っているといいですね」


 ハルとセーラはギルドの宿舎を出て、怪しげな裏通りの一角にある情報屋を目指した。古い建物の二階に上がり、情報屋の中に入る。


 「ああ、来たか」


 既に情報屋の男は、ソファーに腰掛けて2人を待っていた。2人に机を挟んで対面にあるソファーに座るよう促し、机の上に数枚のレポートを置いた。


 「こいつが、今回調査したことを纏めた資料だ。報酬のインゴットと交換で引き渡そう」


 「わかった。それじゃあこれを」


 ハルは用意しておいた純金のインゴットを情報屋に渡した。


 「・・・確かに。それじゃあこちらを渡そう」


 チラッとインゴット確認した男は、机の上の資料をハルたちの方に押し出してきた。ハルが手に取ったのを確認し、口を開く。


 「その資料に書いてある通りだが、一応口頭でも説明しておく。まず君たちから聞いた盗賊事件についてだが、同様の手口の事件がウィステリア国内で2件、周辺国でも7件、計9件ほど起きているようだ。黒幕個人の特定はできていないが、この一件にはどうもラフィーク商会ってのが関わっていたようだ。このラフィーク商会ってのは表向きは魔石の卸売りをしている至って普通の商会だが、実はここのオーナーはブリオネス傭兵団ってとこの団長が兼任してる。ブリオネス傭兵団については4枚目の資料にまとめている。構成員は70人程度の中規模の傭兵団だな。実力は中堅クラス。本拠地はウィステリア南東の隣国、アクレスト王国北東部、国境の街アルモア。超巨大傭兵団フェンリルの傘下に入っている。最近、このラフィーク商会に出所不明の魔水晶が集まっていたようだ」


 「じゃあ、そのラフィーク商会の人間・・・つまりブリオネス傭兵団所属の傭兵が事件の黒幕で、各地で盗賊を利用して魔水晶を集めていたってこと?」


 ハルが身を乗り出して確認する。情報屋は少し考えてから口を開く。


 「直接この事件に関わっていた黒幕と言う意味ならイエス、だ。ラフィーク商会が、各地に傭兵を派遣して盗賊を扇動していたのは間違いない」


 「と、言うことは事件に直接関わっていない黒幕、ラフィーク商会をさらに裏で動かしていた本当の意味での黒幕がいるということですか?」


 情報屋の言い回しからこの件にはさらに裏があると察したセーラが情報屋に尋ねる。


 「ああ、どうやらそのようだな」


 情報屋はあっさりと頷いた。


 「10日前に君らが来た時に、魔水晶と魔石の流通で2つ気になる点があるって言ってたろ。2枚目と3枚目がそれについてだ」


 情報屋はハルとセーラが資料に目を通し始めるのを確認してから話を再開する。


 「半年程前から大陸西部にある複数の魔水晶の鉱山で、魔水晶の産出量の減少が各々の国に報告された。1つ2つならそう気にするほどのことでもないが結構な数の鉱山で同じ時期に産出量の低下が報告されたんでな。どうにも怪しいと思っていたんだが、今回その内の数か所を訪れ、鉱員たちに話を聞いてみたが決して産出量が減ったなどということはないらしい。じゃあ、その減った分の魔水晶はどこに行ったのか?間違いなく鉱山を管理している貴族なり、役人がこっそりと横流しをしたんだろうな」


 「それって・・・」


 「完全に汚職ですよね・・・。でも、このことと盗賊の一件にどう関係が?」


 2つの件の繋がりが見えてこずセーラは思わず首をかしげた。


 「心配しなくてもすぐにわかる。俺が裏を取って来たもう一つのことだ。魔石や魔水晶の取引をしている商会のことで、俺が少し調べただけでも28の商会で魔石・魔水晶の入荷量と放出量に違和感があった。詳しく調べてみると、どうやらこれらの商会はこちらもだいたい半年前から入荷量に対し放出量を少し減らして魔石・魔水晶を少しずつ貯めていたようだ」


 「魔石と魔水晶をを貯める?業者たちが価格の高騰でも狙っているってこと?」


 「いいや、違うな。君らは、人々の生活に欠かせない重要なエネルギー源である魔石・魔水晶といった魔力資源にはどの国も国外への流出に厳しい制限を設けているのを知ってるか?」


 「へえ、そうなんだ。セーラは知ってた?」


 「はい、聞いたことがあります。だから、各国で採れた魔石と魔水晶の大部分はその国の中で消費されることになるって・・・」


 外界と隔絶されたアキト国で生まれ育ったハルは知らなかったが、セーラは普通に知っているようだった。


 「知っているなら話が早い。要は、とある国で急に魔石の使用量が増えてしまっても他国からの輸入量を増やすことは難しい。つまり、自国内で手に入る魔石と魔水晶でどうにかするしかない。しかし、国内での産出量はそう急に増えたりしない。その結果、深刻な魔石・魔水晶不足に陥る・・・違法なルートを使わないならな」


 「「!!!」」


 盗賊が奪った足のつかない魔石、鉱山管理者の魔水晶の横流し、一部の商人が密かに貯めていた魔石と魔水晶。これらのキーワードでハルとセーラには閃くものがあった。


 「ひょっとしてどこかの国が裏のルートを使って魔石と魔水晶を集めているってこと?」


 「じゃあ、盗賊事件の黒幕の商会のさらに裏にいる黒幕というのもどこかの国だってことですか?」


 2人の出した答えを聞き情報屋は満足げに頷いた。


 「正解だ。これらの『裏』の魔石・魔水晶がどこに流れていたか判明した」


 ハルとセーラは最後の5枚目の資料に視線を落とす。


 そこには『アクレスト王国王都リッテンバニア』の文字が記されていた。








 深夜、ハルは宿舎のベッドの上で今後のことを考えていた。消えた魔水晶の流れを追ってみろという義父の助言に従い、情報屋を使って調査を進めたところ事件には隣国が絡んでいるという想像以上に大きな事態に繋がっていた。相手が一つの国家となると明らかに個人が踏み込める範疇から逸脱している。となると、最もリスクが低く面倒が無いのは知らんぷりして何事もなかったかのように過ごすことだ。そうすればこれまで通り自由気ままに冒険者生活を続けられる。事件の解決を目指すのであれば、しばらくの間、ハルとセーラはお偉いさん方から厳しくマークされることになるだろうが、ウィステリア王国か冒険者ギルドに報告するという手段をとるのが一番現実的な手段だろうか。国家というとてつもなく大きな存在に正面から対抗できるのは同じく国家、もしくは国家クラスの影響力を持つ組織くらいだろう。盗賊の被害や、魔石・魔水晶の流出の裏に隣国がいたのならウィステリアも黙ってはないはずだ。また、冒険者ギルドと言う組織は、国家クラスの影響力を持ちながらも特定の国家に所属せず、中立的な立場にあるので国家間の揉め事の仲介をすることが多々ある。どちらか、もしくは双方に事情を話せば、以降はそちらで対応してもらえるだろう。しかし、ハルはこの件を放っておくつもりも第3者に丸投げするつもりもなかった。


 王都に来る前、義父は地震の発生と魔獣の活性化は半年・・アク(・・)レス(・・)()王国・・北部で起き始めたと言っていた。


 半年・・から魔水晶の横流しと魔石・魔水晶の密輸が起き始め、それらがアク(・・)レス(・・)()王国・・に流れていたと知った地点でハルはこの2つに何か関連性があると確信を持った。ハルが、時の大精霊の予言を受けて動いている以上異変の調査は最優先事項だ。見て見ぬふりはできないし、ウィステリア王国や冒険者ギルドの介入はハルにとってはむしろ調査の障害になりかねない。これから自力でこの件のさらなる調査を行う必要があるだろう。


 「となると・・・。こっちの事情にセーラは巻き込めないよね――」


 ハルの呟きは夜の闇の中に吸い込まれていった。






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