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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
第3章 異変の調査
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情報屋

 ギルドの宿舎の1階で『そこそこ』いけるDランクの食事をとったあと、ハルとセーラは『そこそこ』悪くないDランクのハルの部屋に一緒に戻ってきた。冒険者ギルドの方針としては、Dランクは『そこそこ』の生活を送れ、ということだろうか?さきほど、夕食を食べている時に、隣のテーブルに座っていたのがCランクの冒険者パーティーだったのだが、ハルたちの食事より1ランク上の、『ちょっと高級感』のある料理を食べていた。ハルと目が合い、ハルたちのテーブルの上の料理を見てドヤ顔を浮かべられた時は若干イラッときたハルだったが、同時にギルドの考えも良く分かった。


 (下のランクの冒険者は上のランクの冒険者の生活を見てそれを目指し、上のランクの冒険者は下のランクの生活を見て優越感に浸り、さらに上を目指す訳か。確かに良く考えられているね)


 ハルがそんなことをぼんやりと考えていると、セーラが声を掛けてきた。


 「それで、ハルは黒幕の件についてヒントが得られるかもしれないと言っていましたが今後はどう動く予定なのですか?今日はもう特に予定は無し?」


 「この街にいるとある情報屋を使ってみようと思うんだ。知名度は低いけど腕はいいらしい。明日・・・、いや、少しでも早い方がいいか。今からその情報屋を訪ねてみたいと思うんだけどセーラはどうする?」


 「ハルが構わないなら私も行ってみたいです。私も黒幕のことは気になりますし」


 「もちろん構わないよ。それじゃあ場所は聞いてるから行ってみよっか」


 ハルとセーラはギルドの宿舎を出て、夜の王都の街に繰り出した。行先は大通りから外れた所にある裏通りの1つだ。進むにつれて、風俗関連の店や怪しげな酒場、得体のしれない物を店先に並べている謎の店などが増えてくる。


 変な人に絡まれたらやだなーなどと考えながら歩いていたが幸いそのようなことはなくハルとセーラは目的地に到着した。古いこと以外は特に特徴のない建物の2階だ。明かりが点いていたので、ノックをしてから中に入る。


 部屋の中は様々な本が山のように積まれていたり、空になった酒ビンがあちこちに放置されていたりと、混沌が具現化されたような状態だった。


 「あン?」


 部屋の奥にソファーがあり、そこに仰向け寝ころんで本を読んでいたらしい30代半ば程の男が顔だけをハルたちの方に向けた。


 「あの――」


 ハルが、話しかけようとするが男は読書に戻りながらそれを遮るように話し出す。


 「連れ込み宿なら下の階だぞハル・アルダートン、セーラ・グラディウス」


 「「なっ!?」」


 思わず絶句する2人を尻目に男は構わず続ける。


 「ああ、下は1泊3000Jだ。無駄に高ぇよな。音が響くから聞かれたくないなら声は抑えろよ。あと避妊具の使用を推奨する。そちらのお嬢ちゃんはそろそろ危ない日じゃないか?」


 色々な意味でしばらく固まった後、ようやく再生したハルが男に話しかける。


 「何故、オレたちのことを?それにオレたちはここに用があって来たんだ」


「つまらんことを聞くな君は。俺は情報屋だぞ?それと俺は今自堕落に過ごすので忙しい。俺に依頼があるんなら手持ちがちょっと心配になってくる再来月辺りにしてくれ。1月前に依頼を受けたばかりでな。しばらくは働きたくない」


 「・・・なるほど、油断ならないし扱いにくい人物とは聞いていたけど想像以上だね」


 「そりゃあどうも。わかったらさっさと宿舎に帰るなり、そこで固まっているお嬢ちゃんを下に連こむなりして消えてくれ。読書の邪魔だ」


 「宿舎、ね。随分耳が早いな。というか読書の邪魔っていうのは嘘だよね?その本逆さになってるよ」


 「・・・・・・ちっ」


 ハルに指摘され舌打ちした男は体を起こすとソファーに座りハルたちに向き直った。


 「・・・ったく、めんどくせえなぁ。さっきも言ったが俺はしばらく依頼を受ける気はないぞ。しばらくは金に困ることはないんでな」


 男は、まったくもってやる気を感じさせない口調でそう告げる。


 「そう言わないでよ。ほら、こう考えるんだ。もう1月は休んだし、また仕事をして今貯まっている分と合わせて今度は数か月連続で休もう、と」


 「ほう・・・」


 男はハルが半ば冗談で言った言葉に思案顔になった。どれだけ働きたくないんだと頬を引き攣らせるハルと未だ固まったままのセーラを尻目にしばらく真顔で思案していた男だったが結論が出たらしい。


 「いいだろう、とりあえず話は聞いてやる。どうせカシスで起こった盗賊騒ぎのことだろ?」


 「あ、ああ。それであの件の裏には――」


 ハルは、男に事件の黒幕のこと、魔水晶の流れを追いたい話などをした。黙って話に耳を傾けていた男はハルの話が終わると一拍おいてから口を開いた。


 「話は分かった。実は、魔水晶と魔石の流通に関して気になる情報を2つ持っていてな。もっとも、その情報の裏はまだ取ってないから確実とは言えず、情報屋として売れる状態じゃあない。けど、そうだな・・・。盗賊の一件の調査と情報の裏をとるのを合わせて・・・10日貰えたら充分やれるだろう」


 そこで一度話を切った後、男はハルに値踏みするような視線を向けながら再び口を開いた。


 「けどな、俺への依頼料は高いぞ。そうだな・・・この件ならば500万J程貰おうか」


 「ご、500万Jですか!!?」


 ようやく再生してきたセーラが再び固まってしまった。ハルは苦笑いしながら男に頷いた。


 「構わないよ。今、それだけの手持ちは無いけど、オレが持っている物を換金すればそれくらいは十分だせる」


 無論、ハルが言っているのは外界ではオーバースペックすぎるアキト国の魔道具や武器などのことではなく、こっちでも普通に取引されている宝石や貴金属などのことだ。ミスリルなどは貴重過ぎて、売ることが難しいが、ダイヤや金、銀などなら、比較的簡単に換金可能だろう。それらも外界では貴重だが、アキト国では、それこそ秘境に出るまでもなく、ロックベルにある鉱山で山のように採掘できる。純金の買い取りの時価が大体1g当たり、5000J前後なので真っ当な所で換金するなら1kgの純金のインゴット相当だ。出所を聞かれると困るので、少々ぼったくられることになるが裏で取引してくれるところに持って行ってもインゴット2つ出せば充分500万Jは手に入る。500万Jの出費も予言に関連する可能性があることを調査するのに必要な経費と考えればそれほど惜しくない。


 ハルは男に金のインゴットを2つ見せた。男はまじまじと見つめていたがやがて本物とわかったらしい。男はインゴットの1つをつまみ上げながら口を開いた。


 「いいだろう。その依頼、確かに引き受けよう。情報料を値切ろうとしないところも好感を持てる。最近の馬鹿どもは当たり前のように情報を買う時でも値切ろうとしてくるからな。俺はそんなアホどもからは依頼を受けない主義だが君は合格だ。それと、インゴットはこの1つでいい。俺なら正規のレートで換金できる。こいつは後日、報告の前に貰おう。先ほども言ったが10日程欲しい。10日後のこの時間帯にまた顔を出してくれ」


 そう言うと男は本の山から書類を数枚抜出したり、鞄に必要になりそうなものを詰め込んだりときびきび動き始めた。どうやら仕事モードに入ったらしい。


 ハルも、固まっていたセーラを再稼働させると帰路に着いた。


 一旦ハルの部屋に戻り、2人で今後の予定について話し合い、明日は王都の観光、それ以降は冒険者として依頼を受けてみようということに決まった。それから少し雑談をしてセーラは自室に戻り、明日に備えて2人は眠りに就いた。


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