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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
第3章 異変の調査
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ウィステリア王国王都オルタンシア

今日の19時頃にこれまでに登場した魔法、戦技のデータを投稿予定です。

 王都オルタンシア。人口約20万人でウィステリア王国最大の都市である。建国以来204年間国の中枢であり続ける城塞都市だ。ウィステリア王国のほぼ中央に位置し、ここから四方に主要な街道が伸びている。11月の末には建国際、1月の初めには新年際と大きな行事があり、国内外から多くの者が観光に訪れるという。街の中央には王城フリージアが威風堂々とそびえたち、街の中心付近から外側にかけて、『貴族区』、『公共区』、『平民区』と区分けされている。『貴族区』は、貴族が暮らすエリアで、王領外に領地を持つ諸侯の王都における別邸や、王領内に領地を持つ領内領主、領地を持たず役人として収入を得ている法衣貴族といった宮廷貴族の邸宅、国交のある周辺国の大使館などがある。『公共区』には、役所や王立の図書館、兵舎、競技場などといった公共性の高い施設が集まっている。『平民区』は、貴族階級でない者たちが暮らしている場所で、商人や職人、冒険者など様々な人たちが暮らしている。


 「おお、凄い活気!最近のカシスやこの前泊まったノヴァーリスも人の出入りが多かったけどやっぱり王都は別格だなあ」


 「どうやらこの辺りは商店街になってるようですね。いろんなお店がありますよ!」


 ハルとセーラが降りた馬車の停留所は八百屋に精肉店、喫茶店や雑貨屋など多種多様な店舗が並ぶ大通りにあり、通りを歩く人々も王都に住む主婦から、冒険者、遠方から訪れた観光客など、この日も多くの人で賑わっていた。ハルとセーラも様々な店を覘きながら人の流れに従って進んでいく。乗って来た馬車の御者に場所を聞いて2人はオルタンシアの冒険者ギルドを目指していた。


 冒険者にどこのギルド支部所属、といったものはなく、それこそ国を跨いで活動している者もいるくらいなので別の街に移動するごとにギルドに報告したり、所属変更の手続きをしなければならないなどといった決まり事はない。では何故2人が王都に着いて早々にギルドに向かっているかというと、当然今から依頼を受けるなどと言った訳でなく、この街の冒険者ギルドには冒険者専用の宿泊施設が併設されているからだ。


 カシスの冒険者ギルドにはなかったが、規模の大きな冒険者ギルドにはよくある施設だそうだ。併設されている支部によって内装や規模などの細かい違いはあったりするものの、部屋の質や利用の際のシステムはどこの宿泊施設でもだいたい同じである。


 部屋にはF、E、D、C、B、A、Sとランクがあり、自分の冒険者のランクと同等以下の部屋にしか宿泊できない。Fランクの部屋は何もない大部屋で、30人程が詰め込まれて雑魚寝になる。Eランクの部屋は2段ベッドが2つ設置された4人部屋になっている。Dランクからは基本・・個室になり、Dランクの部屋はベッドと必要最低限のものが置かれているだけだが、ランクが上がるごとに部屋が広くなり、調度品が高級なものに変わったり、個室にバスルームが付いたりと上質なものに変わっていく。


 また、ギルドの酒場と、宿泊所の食堂で食べられるメニューも冒険者ランクによって制限が掛かっている。何故、このような措置になっているかというと、主な理由は2つあり、一つは身の丈に合わない生活をして身を持ち崩すことのないようにという配慮。もう一つは自分たちより良い部屋に泊まり、良い食事をして暮らしている冒険者を間近で見せることで、『自分たちもいつかあんな生活を!』と、冒険者の向上意欲を煽るためらしい。このシステムはそれなりの成果が上がっているらしく、近いうちに全ての冒険者ギルドで実施しようという話もでてきているようだ。


 なお、基本個室と言っても、必ずしも数人で生活してはならない訳でなく、当然、結婚して家族のいる冒険者もいるため、申請すればDランク以上の複数人用の部屋も用意される。この部屋は同等のランクの個室より広く、ベッドなどは増設されるが、調度品や付加要素などは、同ランクの個室と同じである。夫婦がDランク以上の冒険者同士なら個室を2つか、Dランク以上の複数人用の部屋を選べ、Dランク以上の冒険者と冒険者でない家族ならDランク以上の複数人用の部屋のみ使用できる。また、必ずしも家族同士でないと複数人用の部屋を使えないと言った訳でもなく、かなり珍しいことではあるがパーティーメンバーが集まって同室で生活しているという例もある。


 もちろん、ハルたちがカシスの街で清風亭に泊まっていたように自分で、宿を見つけて泊まっても構わない。しかし、ギルドの宿泊施設は冒険者にとっていろいろと都合がよい条件が整っているのだ。まず挙げられるのが安いこと。冒険者は実入りがいいと言われるが、それなりに稼げるようになるのは初級冒険者、一人前の冒険者と呼ばれるDランクになってからだ。新人冒険者と呼ばれるEランク冒険者なら普通は日々生きていくので精いっぱいくらいの金額しか稼げないし、見習い冒険者たるFランクに至っては、ほとんど金にならないような常時依頼しか受けられないので金銭的にかなり苦しい。しかし、ギルドの宿泊施設はFランクの部屋ならなんと一泊100Jである。Eランクが500J、Dランクが2000J、Cランクが5000Jとなっている。ちなみに、Bランクの部屋からは一気に金額が跳ね上がるが、そのぶん、貴族の屋敷の一室並の豪華さを誇るらしい。Cランク冒険者までは、特別な才能がなくとも、長年冒険者を続けていればいつか到達できると言われている。逆に、Bランク以上に上がれる者は何か特別な才能を持っているということだ。Bランクの依頼はCランクの依頼よりも遥かに報酬が多かったり、貴族や国からの依頼を任されることも増えてくる。冒険者にとって、Bランクというのは特別なランクなのだ。


 次に挙げられるのが冒険者ギルドに近いこと。ほとんどの場合がギルドの宿舎はギルドの隣に建てられており、ギルドに直接繋がっている。どうしても土地が確保できなかったなどの理由ですぐ隣に無い場合でもかなり近い場所に建設されている。宿泊先がギルドから近いというのは大きなアドバンテージだ。冒険者の依頼の受注は早い者勝ちであり、美味しい依頼から埋まっていく。となると、ギルドの近くで生活している者たちの方が有利に依頼を探せるのである。


 他に挙げられるのが、冒険者とのコミュニケーションが増えるということだ。それにより、自分たちに有益な情報が手早く手に入ったり、それを機に親しくなりパーティーを組むようになったりと様々な恩恵がある。


 他にも近くに冒険者目当ての店が集まっていたりなど冒険者に多くのメリットがあるため、ギルドの宿舎はとても人気があるのであった。








 「おお・・・」


 「これは・・・。本当に大きいですね」


 冒険者ギルドオルタンシア支部の前に到着したハルとセーラは目の前の巨大な建物に目を奪われていた。カシスの冒険者ギルドも大きかったが、軽くその10倍以上の敷地面積はあるだろう。さらに、隣には目的地であったギルドの宿舎があり、オルタンシアの支部をさらに巨大に見せている。


 しばらくその威容に呆けていた2人だが、やがて気を取り直しギルドの方に向かって歩き出した。出入りが多い夕方のためか開け放たれたまま固定されている観音開きの大きな入口を抜け、ギルド内に入った瞬間2人に一斉に冒険者の視線が降り注いだ。2人の姿を見てすぐに多くの視線は興味を失ったように離れていったが、ベテラン冒険者や上位の冒険者たちは興味深そうに2人を見続けている。2人は真っ直ぐギルドのカウンターに進み、比較的に空いている冒険者の列に並んだ。








 「お待たせいたしました。ご用件をお伺いいたします」


 ハルたちの前にいたグル―プがカウンターから離れ、ハルたちの番が回ってきた。


 「ギルドの宿泊所を利用したいんですが。Dランク2人です」


 そう言ってハルとセーラはギルドカードを差し出した。受付の女性はカードを受け取り何かの機械に通す。


 「確認できました。部屋はそれぞれDランクの個室でよろしかったでしょうか?」


 「はい。それでお願いします」


 「かしこまりました。それでは、こちらがお部屋の鍵となります。第7棟の4階11号室と12号室、部屋の番号はそれぞれ、070411と070412です。お間違いのないようご注意ください」


 「「ありがとうございます」」


 2人は鍵を受け取り、自分の部屋を目指した。宿舎は1から10棟まであり、第6、7、8棟と9棟の一部にDランクの部屋が割り振られている。ハルたちの泊まる第7棟は5階建てで1階に食堂や風呂場、ちょっとしたお店が入っていた。2階から5階までが部屋になっており、4階と5階が個室で32部屋ずつ3階と2階が数人部屋で、18部屋ずつ計100部屋入っているそうだ。第6、7、8棟は同じ構造になっているらしい。9棟は2階と3階にEランク用の部屋が入っているそうだ。


 「ここですね」


 「早速、入ってみよう」


 自分たちの部屋に到着しドアを開けてみる。部屋は、ハルたちがカシスで拠点にしていた清風亭の一人部屋より手狭だが、宿泊費は遥かに安いし、寝に帰る場所と考えれば十分なスペースだろう。部屋には大きめのベッドと、小さな机と椅子、小物を入れておける棚、衣服をしまっておけるクローゼット、そして冒険者ならではの武器の収納スペースなどが備え付けられていた。どれも冒険者が使うことを見越して頑丈な造りになっている。


 「へえ、悪くない部屋だね」


 「そうですね。冒険者に人気があるというのも頷けます」


 ハルとセーラはそれぞれの部屋に荷物を降ろし、少し休憩を取った後、 一階の食堂に向かった。ハルたちが食べられるのはDランクのものまでだったが、値段は手頃で、種類もそこそこ多く、味も悪くはなかったため特に不満は感じなかった。








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