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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
第3章 異変の調査
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義父からの助言と王都への旅

 「(ハル、聞こえるか?)」


 盗賊討伐から3日程経った夜、清風亭の自室で眠っていたハルの頭の中に、義父レナードの声が響いてきた。声を出さないように意識しながら頭の中で【念話】を返す。


 「(聞こえるよ。どうしたの?)」


 「(ハルに頼まれていた地震の調査に進展があったから連絡した。今は大丈夫か?)」


 ハルは隣のセーラの部屋の気配を窺う。魔法を使っているので魔力で気付かれる可能性があるが、どうやらまだ眠っているようだ。


 「(大丈夫だけど、少し移動するよ。隣の部屋に友人がいるんだけど結構感知能力が高いから。今はまだ気にしてないみたいだけど【念話】を続けていたら起きてくるかもしれない)」


 そう言ってハルは音を立てず窓から抜け出した。そのまま清風亭の屋根まで登り、建物の屋根の上を飛び移りながら周囲に人のいない空家まで移動した。


 「(もう大丈夫だよ。それで、進展があったって言ってたけど何かわかったの?)」


 「(ああ、まず地震が急に増えたのが約半年程前から。それまで、その辺りでは数年に一度程度しか起きなかった地震が、この半年で既に30回以上起きているようだな。)」


 「(それは、やっぱりおかしいね。魔獣の活性化との関係は?)」


 「(まだ、確証はないがかなり黒いな。地震が起き始めた時期と魔獣の活性化の時期だけでなくもう1つ共通点が見つかったんだ。)」


 「(共通点?)」


 「(ああ、地震の発生地点と、魔獣の活性化の広がりだ。先程も言ったが地震が急増したのが半年前。一連の地震の始まりとなったのはおまえのいるウィステリア王国の東隣りの国、アクレスト王国北部のようだ。そこから地震の発生地が同心円状に広がっている。そして、魔獣の活性化もその周辺で最初に確認され、そこから同じく同心円状に徐々に広がっていったようだ。)」


 「(そうなんだ。中心となった正確な地点の特定はできてるの?)」


 「(いや、まだだ。アクレストに潜入していたロッテに引き続き調査をさせているが、最初の地震の発生からそれなりに時間も経っているし、我々はあまりおおっぴらに動けないからな。これ以上範囲を絞り込むのは難しいかもしれない。アクレストの北部と言ってもそれなりの広さがあるからな・・・)」


 「(へえ、ロッテが!しばらく家に遊びに来てないなと思ってたけど、もう外界で活動してたのか。こっちも情報収集くらいはしてたんだけど、関連してそうなのはここ最近で複数の新種の魔獣の発見の報告があがってることと、新しいダンジョンが見つかったってくらいだね。ちょっと行き詰っちゃったかなぁ)」


 「(ふむ・・・。別に地震の件に関連してなさそうなものでもいいからちょっと気になるみたいなことはないか?案外ひょんなところから繋がるかもしれないぞ)」


 「(気になること・・・。気になることねえ・・・。あ、そういえば最近さ、オレのいるカシスの近くで盗賊の被害があって――)」


 ハルは、盗賊事件のあらましをレナードに語った。


 「(謎の黒幕に、消えた魔水晶か・・・。だったらハル、魔水晶の流れを追ってみたらどうだ?その黒幕は足が付かない魔水晶を欲しがっているようだし、その流れを追えれば黒幕にたどり着けると思うぞ。)」


 「(簡単に言わないでよ義父とうさん。足が付かない物の流れを調べるなんてそう簡単にできないよ?だからこそ黒幕も盗賊を使ってまで魔水晶を集めていたんだろうし)」


 「(はは、まあそうだな。まだハルは調査団になって日が浅いし、外界に出てからも短い。自力だけでは厳しいだろうな)」


 「(自力だけでは?誰か救援に来てくれるの?)」


 「(いや、流石にこれ以上人員を割くことは難しいし、近隣国にいるロッテ、アルノー、ヨーゼフも地震の調査で手が離せないだろう。だが、いくつかは調査団員以外でも使える伝手がある。ウィステリアの王都オルタンシアの裏通りに時折調査団が使っている情報屋がある。油断はならないし扱いにくい人物だが、腕は確かだ。彼に依頼すれば取っ掛かりくらいは掴めるかもしれないな。)」


 「(へえ、そんな人が・・・。だったら、一度行ってみようかな)」


 「(だったら彼の居場所を伝えておこう。場所は王都の――)」


 ハルはレナードから情報屋の居場所を聞いた後、しばらくお互いの近況報告をしてから念話を切った。


 「王都か。早速明日セーラを誘ってみようかな」


 何て言ってセーラを誘うか考えながらハルは宿に向かうのだった。









 「ねえ、セーラちょっと王都まで行きたいんだけど・・・」


 「王都ですか?いいですよ」


 「あれ?何かあっさり・・・」


 翌朝、清風亭の食堂で王都に行きたいとハルが切り出すと、朝食のスープを妙に上品に飲んでいたセーラは一瞬きょとんとした表情をしたがすぐに微笑みあっさりと承諾した。


 「自分から誘っといて何だけどいいの?結構急な話だと思うけど」


 「構いませんよ?親しい人は出来ましたけど、私はカシスの出身という訳でもないですし冒険者の半数近くは、明確なホームグラウンドをつくらずに各地を転々としながら活動してますから。ハルは王都に何をしに行きたいんですか?」


 「2日前に支部長から聞いた話があったでしょ?あの件のヒントを王都でなら掴めるかもしれないんだ」


 「そうなんですか?でも、どうして急に・・・?あ、ひょっとして昨晩宿を抜け出してたことに関係が?」


 「え、気付いてたの!?」


 出て行った時も帰ってきた時もセーラは寝ているようだったので気付かれていないと思っていたハルは驚いた。


 「はい。いつ抜け出して、いつ帰ってきたかまではわかりませんが、昨夜、ふと目を覚ました時に隣の部屋にハルの気配がありませんでしたから。実は今までも何回かは夜中にハルが抜け出していることに気付いたこともあったんです。でも、ハルに何か事情があるのは知っていますし、ハルが悪い人ではないとわかってますから」


 「うう、ありがとうセーラ!!」


 こうして、ハルとセーラはウィステリア王国の王都オルタンシアに向かうことになった。それから数日は、必要なものを購入したり、知人に挨拶したり、受けていた依頼を達成したりして過ごした。







 オルタンシアに向かうと決めてから数日後の朝、準備を終えたハルとセーラは、乗合馬車の駅に座っていた。王都までの護衛依頼があれば受けようと思っていたのだが、結局見つからず、冒険者になってからハイペースで依頼をこなしていたこともあり今回は旅行感覚でのんびりしながら行こうということになった。


 「ええと、今日は宿場町ノヴァーリスまで行って宿を取るんですよね?」


 「うん、今日の夕方ごろに着くはずだよ。そこで一晩休んで、翌朝再出発だね。今のところ王都まで1週間掛けて向かうつもりだよ」


 「王都には行ったことがないので楽しみです。あ、馬車が来ましたよ」


 3頭の馬に引かれて20人程は乗れそうな大きめの乗合馬車がカシスの東門の近くにある駅に到着した。王都のある東側に向かって進む馬車である。


 馬車内は前半分がロングシートで後ろ半分がクロスシートになっており、長時間移動する予定の2人は並んでクロスシートの座席に腰をおろした。







 順調に馬車は進み夕方、ほぼ予定通りの時間にノヴァーリスに着いた。


 「ここがノヴァーリスか結構活気があるなぁ」


 「宿場町だけあって宿屋や旅人向けのお店が多いですね」


 ノヴァーリスはウィステリア王国西部の主要な街道が交差する地点のすぐ近くにあり、交通の要衝として古くから多くの旅人や商人たちで賑わってきた。宿屋の中には100年以上続いているような老舗もあるらしい。


 「それじゃあ早速宿を探そう」


 「宿の前の立て板に料金やアピールポイントが書かれているみたいですね。それを参考にしながら選びましょうか」


 数多くの宿が立ち並ぶ激戦区なだけはあって、どの宿も料金あたりの質はかなり高いようだった。ゆっくりと見て回り、ハルとセーラが選んだのは清風亭より少し高いものの夕食と朝食がセットになっており、さらに、翌日の出発時間に合わせて従業員が起こしに来てくれ、昼食用のサンドイッチまで作ってくれるという宿だった。


 「へえ、結構部屋も広いな」


 「夕食も美味しかったですね。あの宿泊費でこの質はすごいですよね!いい宿を見つけれてよかったです」


 ハルとセーラはノヴァーリスで快適に一晩過ごし、翌朝、朝食の後に2人分のサンドイッチが詰められた使い捨てのバスケットを貰い、また乗合馬車に乗って王都への旅を再開した。






 その後も、街や村で休憩を挟みながらハルとセーラは王都に向かった。この1週間は天候に恵まれ、魔獣や盗賊の襲撃を受けることもなく旅は続き、ついに7日目の夕方、視界の遥か先に巨大な建造物の先端が見え始めた。ウィステリア王の住まうフリージア城である。馬車が進むにつれて城だけでなく、城下をぐるりと囲む城壁や大きく開かれた門が見え始めた。


 「いよいよ見えてきたね」


 「はい。楽しみですね!」







 聖陽歴816年9月10日ハルとセーラはウィステリア王国王都オルタンシアに到着した。

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