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ハル・アルダートンと大地の王冠  作者: ゆう
第2章 外の世界
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冒険者講習終了とパベルの旅立ち

 光が消えた時、ハルたちは人だかりの中にいた。


 「敵襲か!!?」


 「何だ?何が起こった!?」


 「ここは・・・ダンジョンの外か!」


 「今の光はいったい・・・」


 突然の事態に混乱が広がっている。ハルたち3人はその隙に人だかりから離れた。


 「ふう、混乱のおかげであっさり抜けられたね」


 「ああ。大きいダンジョンだから人数が多かったっていうのが大きいかもな」


 「そうですね。とりあえずギルドに戻っておきましょう。ダンジョンが無くなってしまいましたからもうすぐ他の人たちも戻ってくるはずです」


 ギルドに戻っている最中、ハルの視界に一つの出店が入った。


 「あ、ちょっとだけそこの出店で飲み物買ってきてもいい?喉乾いちゃって」


 「なら俺も行く。あの店のゴタの実にストローを刺しただけのフレッシュジュースが超美味いんだ」


 「そうなんですか?ちょっと飲んでみたいです」


 パベルおすすめのゴダの実ジュースを3つ注文した。本当に大きく堅そうな木の実に穴をあけ、ストローを刺しただけだ。いざ、ハルが一口飲もうとした時、すぐ隣でビシッという何かが割れるような音がした。


 「・・・何やってんのパベル?」


 見るとパベルの手の中のゴダの実が割れて手がびしょびしょになっていた。


 「いや、果汁の出が悪かったから少し絞ろうとしたら・・・いつもはこんなことにはならないんだが」


 パベルは不思議そうな顔をしている。そこでハルはふと一つの考えにたどり着いた。


 「ひょっとして2人ともオレとパーティー組んであの場にいたから成長・ ・したんじゃないの?」


 「成長ですか?言われてみれば確かに・・・」


 人が強くなるには3つ方法がある。1つは肉体的な成熟によるもの。当然、赤ちゃんよりも大人の方が力が強い。2つ目は鍛錬によるもの。厳しい鍛錬を積むことで人の能力は底上げされる。3つ目が魔獣を倒すこと。人は魔獣を倒すことで少しずつ強くなる。しかし今回倒したのは大災害級1体に災害級1体、特級4体である。パーティーメンバーとして同じ場所にいたのだから2人が大幅に成長していても不思議はない。


 ハルは2人にギルドに戻りながら体の様子を確かめてもらった。やはり2人とも身体能力が上がっているようだ。


 「強くなってるのは嬉しいけど座って眺めてただけだからな。なんだか申し訳ない」


 「私も複雑な気分です」


 2人は嬉しそうな表情と申し訳なさそうな表情が混じった微妙な顔をしていた。


 「まあまあ、そんなに気にしないでいいじゃんか。あれだ、口止め料の代わりだとでも思ってさ!お、ギルドが見えてきた。」


 ハルのその言葉に一応納得したようで二人は頷くとハルと共にギルドに入っていった。







 「どういう訳かわからんが戦鬼のダンジョンが消滅した。試験の結果をどうしようかと悩んだのだが、非常時のために第1層に配置していた冒険者たちの話を聞いたところどのパーティーも十分な力量を持っていたということだった。よって、今回は最奥まで来れなかったパーティーも含め全員合格とする!!なお、ハルとセーラの二人にはギルドから1ランク上位の依頼を受けられるよう認可状が出される。胸を張れ!今この時よりおまえたちは1人前の冒険者だ!!冒険者としての自覚を持ち、世界に羽ばたいて行け!!!」


 「「「「「Sir,Yes,Sir!!!」」」」」


 こうして1週間に渡る地獄の冒険者講習は幕を閉じた。その後はもちろん・・・


 「おい、今から下の酒場でみんなで打ち上げしようぜ!!」


 「お、いいね!行く行く!!」


 「ふっ、ならば僕も参加しよう」


 全員で打ち上げすることになった。抑圧から解放された解放感から宴は夜遅くまで続き・・・


 「知ってる天井だ・・・」


 だれも宿を取ってなかった上に、探し始めたのが深夜でどこも宿が空いてなかったためギルドに頼み込んで結局その日も第2会議室で寝る羽目になったのだ。締まらない最後だったが同期メンバーは一人、また一人と皆に別れを告げて新しい日常に踏み出した。


 ハルたち3人もみんなに別れを告げ、ギルドから出てきた。


 「とりあえず宿を確保しなきゃ。オレは清風亭っていう宿に行ってみようと思ってるんだけど二人はどうする?」


 「あ、じゃあ私も行ってみます」


 「うー、頭が痛い。俺もそこに行ってみるか。というかなんでおまえはそんなに平気そうなんだ!?あまり酒を飲まなかったセーラはともかくおまえは罰ゲーム用の馬鹿みたいにきつい酒をノリノリで飲んでいただろ!!?」


 二日酔いが酷いようで気持ちが悪そうにふらふらと歩きながらパベルがハルを見る。誰よりもきつい酒を飲んでいたハルはいつも通りのようだ。


 「知らなかったかいパベル。【身体活性】を使えばアルコールなんて一瞬で抜けるんだぜぃ。後は、回復魔法や解毒の魔法の一部でも同じことができるね」 


 「だったらその魔法を俺に掛けてくれよ。油断したら吐きそうだ」


 「はいはーい」


 ハルが解毒魔法を掛ける。すぐにパベルは気持ち悪さが無くなっていくのを感じた。


 「助かった。やっぱり魔法は便利だな。今まで学んだことがないけど俺もこれを機に手を出してみようか」


 「いいんじゃない?戦技よりも汎用性が高いしね。初級以上の魔法は術の開発者の権利を守るためとかで相応の対価なしに教えることが禁止されてるみたいだけど入門レベルのものならただで教えてあげるよ。セーラもどう?」


 「私は入門レベルの魔法は使えるので大丈夫です。初級の魔法も習ったことはあります。ただ、放出系の魔法が苦手で使えません。もしかしたらそのうちそちらの助言をお願いするかもしれません」


 「ん、了解。着いたね。ここが清風亭だ」


 1週間ぶりに清風亭に戻ってきた。ドアを開け中に入る。


 「いらっしゃい。あら?この間のお客様だね?」


 宿の女将さんのアンナさんが出てきた。


 「こんにちは。冒険者ギルドの講習がやっと終わったんです。3人分部屋空いていますか?」


 「おや、それはおめでとう。部屋は空いてるよ。ただ、1人部屋の空は1部屋しかないから2人部屋と1人部屋という形か3人部屋という形になってしまうけれど構わないかい?」


 「あ、ちょっと待ってください」


 ハルは2人の方に振り返った。


 「どうする?全員個室は出来ないみたいだけど」


 「俺とハルで2人部屋で、セーラが個室っていうのでいいんじゃないか?」


 「えっと・・・今更なので私は3人部屋でも構いませんが。3人部屋の方が安いのでは?」


 「いやいや、空いてるなら個室にしときなよ。それにやっぱり着替えの時とかお互いに不便だろうしね」


 ハルの主張でハル、パベルの2人部屋、セーラの個室という部屋割りになった。セーラはかなりの美少女である。思春期真っ盛りの2人にとって美少女に同じ部屋で寝起きされるなど精神衛生上非常によろしくない。


 セーラが部屋に荷物を置いた後、3人は2人部屋に集まっていた。


 「さて、今後のことについて話をしようよ。これからオレたちは()()()()?オレとしてはこのままパーティーを続けたいと思っているけど」


 ハルとしては自分の事情の一部を知られている2人と一緒に行動できるのが1番ありがたかった。2人ならわざと情報を漏らすことはないだろうが、ふとした拍子にぽろっと口から出てしまう可能性があることは否めない。2人は初めてできた人間の友達だし、さらには既に自分の力を知られている2人となら今更余計な気を張らずに一緒にいられる。そういった点でもこの2人とパーティーを組めたら嬉しい。


 2人はしばらく黙考したあと、先にセーラが結論を出した。


 「私もこのまま2人とパーティーを組みたいです。ここ数日、とても楽しかったですし、良く知らない人に声を掛けてパーティーを組むのはちょっと不安ですから」


 「そっか。パベルは?」


 「・・・・・・」


 パベルは何か悩んでいるようだった。そのまましばらく黙考を続けてようやく口を開いた。


 「俺も2人とパーティーを組みたいと思ってる。けどやっぱり今すぐは無理だ」


 「「えっ?」」


 パベルからでた否定の言葉にハルとセーラは戸惑う。


 「それは・・・どうして?」


 「理由は2つある。1つは単純に一度故郷の村に顔を出さなきゃいけないんだ。冒険者になれてもなれなくても一度村に戻る約束だったから。数日中に出発することになると思う。」


 「それでしたら私たちもパベルさんの村に着いていきますけど?」


 セーラが提案するが、パベルは首を振る。


 「どちらかと言えば2つ目、こちらが主な理由なんだが・・・今の俺は2人と比べて弱すぎるんだ。確かにあの鬼たちをハルが倒した影響か、以前より遥かに強くなってると思う。けどまだまだ足りないんだ」


 「そんなことオレたちは気にしないよ?パーティーを組んでいる内にもっと強くなれるだろうし」


 ハルの言葉にパベルはやはり首を振った。


 「このままじゃ当分の間俺は2人のお荷物になる。2人に寄生するようなもんだ。くだらない見栄だと思うかもしれないけどやっぱり俺はおまえらと対等な友人でいたい。おまえらは気にしないだろうが、俺がおまえらに対して勝手に引け目を感じてしまうことになると思う。だから今は(・ ・)おまえらと一緒にパーティーは組めない。少し時間はかかるかもしれないけどきちんと自分で力を着けてから胸を張っておまえらに会いに行く。だからそれまで待っててくれ」


 パベルははっきりと言い切った。決意は固いみたいだ。


 「わかったよ。だったらこれを渡しておくから」


 ハルは【アイテムボックス】から1つの魔道具を取り出した。


 「何だこれ?方位磁石か?」


 「それにしては方向がおかしい気がしますけど・・・」


 「これは魔力を登録した者の方向を指し続けるコンパスだよ。こいつはオレの魔力を登録してる。これがあれば離れた場所にいてもきっとまた会えるさ」


 「へえ、便利だな。それじゃあこれはしばらく借りておく。いずれ必ず返すからな」






 それからパベルが旅立つ日まで3人で狩りに行ったり、先日の地震で崩れた建物の瓦礫の撤去を手伝ったり、街で買い物したりしてすごした。そして旅立ちの日・・・





 「よし、それじゃあオレはそろそろ行くよ。しばらくはカシスにいるのか?」


 旅の準備を終えたパベルが街の門の所で聞いてきた。


 「どうだろ。オレたちは冒険者だからね。しばらく留まってるかもしれないし、ふらっと街を出るかもしれない。何とも言えないね」


 「まあ、おまえらならどこに行ってもやれるだろうしな。とりあえずこのまま2人で組むんだろ?」


 「はい。そのつもりです。低ランクの依頼なら2人でも――。いえ、ハルさんならどんな依頼でも余裕でしょうね・・・」


 セーラが遠い目をする。数日前のダンジョンの光景を思い出しているのだろう。


 「ははは。おっと、乗合馬車が来たみたいだ。そろそろ行くか。それじゃあ()()()


 「()()()、パベル!!」


 「お体に気を付けて!」


 ハルとセーラはパベルの乗り込んだ馬車が見えなくなるまで見送った。


 






 次回から今の1日1回投稿からペースを落とすと言っていましたが思いのほか執筆が進んだのでいけるとこまで今のペースで続けます。

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