08 変化
「これで、最後の一匹、っと」
魔法ネズミの特大の風魔法で吹き飛ばされたネズミ達の確殺作業も途轍もない時間を経てようやく終わりを迎えた。辺りを見渡してもダンジョンの特性のせいで崩れ去り、残っている死体はギリギリ数えられるくらいに減ってしまった。
何百匹とネズミを倒したあと、俺のステータスはどうなっただろうか。
「ステータスオープン」
名前:アルマ 種族:イノセント・バス
Lv.3
スキル:
吸血 Lv.6 気配遮断 Lv.8 麻酔 Lv.6 モスキートーン Lv.10 魅了の羽音Lv.2
【吸血】と意識的に使っていた【麻酔】、それからずっと発動させっぱなしだった【魅了の羽音】がレベルアップしたのは嬉しいな。けど、あれだけ倒して基礎レベルが2しか上がらなかったのはだいぶ予想外だった。
「進化の影響か……、もともとネズミの経験値はめっちゃ少ないけど、その経験値で足りるくらい俺の元の種族が弱かったのか、まあ、両方だろうな。」
あの感じだと魅了の羽音は相当強いから、他2つの選択スキルも強かったはず、ってことはそれを選択できる今の種族はもとよりかなり強くなったってことだ。
まあ、強くもなったし、ネズミ以外もどんどん狩っていくぞ!
と、思っていた時期が俺にもあった。
よく考えてみてほしい。この俺が今いるダンジョン、ネズミ以外には何が出てくると思う?
そう、血が抜かれ切った腐肉、ゾンビ。血なんてものは元から通っていない骨、スケルトン。そもそも透けてて物理攻撃なんてほとんど通らないし、もちろん血も通っていない霊体、ゴースト。
今の俺にこいつらへの攻撃手段、皆無。
駄目だ。今の俺が狩れる魔物はもう大して経験値のもらえなくなったネズミしかいない。強くなるためにより強い敵を狩りたいのに、どうしようもなく弱い敵しか狩れないだなんて、そんなこと思わないだろう。
空中を移動しながら考える。そうだな、今後の方針は、とりあえず、このダンジョンを徘徊する。ネズミは見つけ次第狩る。出口が見つかればそれで良し、人間が見つかったら積極的に付いていく。こうしよう。
そうして徘徊を続けること数日、いつも通り徘徊を続ける日常に少しの変化が訪れた。
「この気配、大型でかつ、腐肉でも骨でもないこの形状………人間だ!」
感知範囲ぎりぎりに入ってすぐに出て行ってしまった人間の後を追うため、全力で飛行を始める。レベルアップにより上がった【モスキートーン】の感知射程はおおよそ75メートル前後、直径150メートルにも及ぶ。飛行能力が上がっているといえども複雑なカタコンベの道でそれだけ空いている距離を詰めるは数分を要した。
曲がり角を曲がり、ついに人間の後姿を捉える。
「って、またこいつらかよ!」
そこにいたのは、いつかに出会った3人組の冒険者であった。男剣士、女魔法使い、獣人魔法使いの3人組。そこまで時間は経っていないが不思議と懐かしい感じがする。
あの時と同じよう獣人の足元に張り付いて静かに、今回は本当に少しずつ血を吸い始める。できるだけ長くこいつらから情報を得たい。前回は血に夢中で何も話を聞いてなかったから。
「ここに来るのも何回目かだけど、そろそろ一層のボス部屋くらい見つけたいよね。」
「そうね。出てくる魔物はどれもこれも雑魚のくせして、一度ダンジョンから出たら3日間はこのダンジョンに入れないっていう制約が面倒ね。」
「そうだな。しかもこのダンジョン迷路タイプだから探索にも時間食うってゆーのによ。帰還石も安くねーし。毎回使ってたらキリねーぞ」
今しゃべったのは順に獣人、女、剣士だ。どうやらここのダンジョンは他と違って特殊らしく、入場制限もあれば、罠も格段に多く、どれも殺意が高いらしい。
それから、ここはレリアという国のダンジョンで、ダンジョンでは珍しく冒険者連合ではなく、国家の直接の管理下にあるんだとか。
「俺がもともといた国じゃないな。そもそもレリアなんて国聞いたことがないから、相当距離が離れているんだろうか。」
まあ、国の情報なんて、ここから出られてもいない俺が気にする情報ではないかな。
あとさりげなく出てきていたのは、ここがダンジョンの一層だということ。つまり、入口さえ見つけられればそこはすぐ外だということ。だけど、そんなに甘くはないんだよね。ダンジョンの他の階層へつながる通路、それは階段でできている。けど、ダンジョンの出口と入口、それだけは転移陣を通しての通行となっており、なおかつ、一歩通行だ。
入口からは入ることしかできないし、出口からは出ることしかできない。そして、出口はダンジョン最下層のボスを倒さないと開くことはない。そう死体処理時代の先輩に教えてもらった。名はライル。なんでも元冒険者だったとかでダンジョン攻略にも精を注いでいたらしい。
んで、会話に出てきていた帰還石。これが前回こいつらが突然消えた理由だと思う。察するに消耗品。回数はあまり使えないらしい。
そんな風に情報を整理しながら獣人の血を吸い続けていると、どこからともなく『ガコッ』という音が聞こえた。
深く考える間もなく地面の方から猛烈な光が突如として辺りを包み込んだ。
読んでいただき本当にありがとうございます!
次回、アルマたちを包み込んだ謎の光の正体とは……?
「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。
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