63 仲間
アルマが精神系スキルを発動してから、まあ楽な戦いであった。
ゴリラはいつまで経っても三号に追い付けない。それどころかアルマのスキルがどんどん効いてきて、身動きがとれなくなっていく始末。
単純な戦闘力では過去最高クラスだったのだが、搦め手にはとことん弱いゴリラでった。
そんなゴリラは今、アルマと三号の目の前で棒立ちをしている。
【魅惑の羽音】に完全にかかって、機能を停止している。
「【支配】【魔獣合成】」
そうアルマは呟く。すると、ゴリラの体が一度ビクンッと跳ね上がった。それと同時にアルマもビクッと肩を震わせ、それから悶絶を始めた。
アルマは忘れていたのである。【魔獣合成】という強すぎるスキルを発動した時に襲ってくる代償ともいえる辛すぎる頭痛の存在を。
『う”ぅ”』、『あ”っ』などと苦しみのうめき声を上げながら三号の背中の上で情報の整理を始める。
前回は二号と協力して二匹で苦しみながら情報の整理を行っていたのだが、今回はアルマ一匹で行っている。
こんな危険な森林ではアルマと三号両方がダウンした状態でいるなんてことはできやしない。
このゴリラ以外にも強敵がいる可能性は十二分にある。というより、いない訳がないのである。
この脳筋だけでこの森林を支配できるとは到底思えない。
そんなこんな三十分近くが経過し、アルマの頭の中の整理は着実に終わりに近づいていた。
頭痛はピーク時よりはだいぶマシになって、簡単な動きをするぐらいなら無理をすればできる程度には回復している。
そんな不完全に整理した情報の中からでもわかることはある。予想できたことでもありはするが。
それは、ゴリラの筋肉量。
ぱっと見た感じ、量だけで言っても人間の騎士とかの数倍の量。
さらにすごいのは、その密度である。
人間の筋肉がニートの予定だとすると、ゴリラの筋肉量はブラック企業の社員が副業と友人との交流を予定に詰め込んでいるイメージである。
つまり、その差が数倍なんかじゃ言い表せないほどすさまじい。ということである。
そんなことを感じ取ったアルマはこんなすごい奴と戦っていたんだ、という恐怖と共に、今、その恐怖の対象を従えている、という全能感を感じていた。
それから少しして、完全にゴリラの解析が終わった。
しかし、アルマにはこのゴリラと三号を合成する気は微塵もない。
「この二匹が別々の方が戦力として大きそうだしね。」
なにより、数は力である。
大抵の場合、個は強くても数の力の前には無力。それだけ数の力というものは恐ろしい、ということである。
けれども世の中には数の力がなんだと軽く笑いながらすべてを薙ぎ払える存在が、実在する。
そんな理不尽な世の中である。
「ゴリラ、ここの森林の幻惑って消せたりする?」
ゴリラは静かに首を横に振る。
そのジェスチャーは、この森林にはまだ恐怖の対象が存在する、ということに他ならなかった。
読んでいただき本当にありがとうございます!
次回、幻の原因。
「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。ブックマークと評価もお願いします!!
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