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60 大猩猩

 アルマは一度冷静になって辺りを見回す。


 森林の幻に気付けなかったように、何か大事なものを見逃している可能性がある。


「パッと見た感じは何もなさそうだけど………」


 念のために【ミスティック・ハミング】の方も確認する。


「…………うん。とりあえず何もいなさそうかな。」


 まだ気づけていないだけの可能性もあるけれど、のほほんとしていたときよりは安全な確率が上がった。


 でも、それは同時に危険が上がったことも意味する。


「僕が探知できる範囲外から、森の端まで、幻を見せることのできるナニカが、ある」


 アルマの意見は正しい。しかし、この森はアルマの想像以上に異常である。


 アルマは幻の範囲が森の端だと考えているが、実際はそうではない。アルマが最初に青空を見た場所、そこの上空からこの森を確認したはずである。


 つまり、そこまでの範囲に幻を見せる能力が存在する、ということである。


 それに気づいていないアルマは警戒心を上げるが、本当はもっと警戒をした方がいいのである。


「………流石に出る?」


 アルマの頭の中に一つの選択肢が浮かび上がる。


 この森から出ていく。それが今とれる最も安全な道だろう。

 しかし、アルマはそんな選択肢は選ばない。


 むしろ、不敵な表情を浮かべて見せる。面白い、とでも言うように。


 そんなアルマはさらに森の奥へと進んでいく。





 音がした。


 ガサっという音。何かが草木を踏みしめる音。


 その音を聞いたアルマはびくっと肩を跳ねさせたあと、すぐに音がした方向に振り返る。


 そうして振り返ったアルマの目の前には、ゴリラの顔があった。




 息が詰まる。静寂の世界でゴリラの鼻息だけが音を立てている。


 数秒間の沈黙。

 それを破ったのは、ゴリラの悲鳴に近いような方向であった。


 見ると、三号が口でゴリラの背中を刺している。


 それはすぐに振りほどかれてしまったが、その隙にアルマは上空へと昇っていく。

 もちろん、精神系スキルは発動しながら。


 それを追って三号も上空に避難してくる。


 あのゴリラは格が違う。大蛇なんかよりよっぽど強い。オーラが違う。佇まいが違う。表情が違う。


 その全てが完全に歴戦の猛者のそれであった。


 引きで見ると、よりゴリラの大きさが分かる。でかい。


 そんな巨大ゴリラとの交戦が今、始まろうとしていた。

読んでいただき本当にありがとうございます!


次回、ゴリラ。


「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。ブックマークと評価もお願いします!!


毎日18:30に更新中です!

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