50 誕生
パキリという音を聞いたアルマはバッと後ろを勢いよく振り返る。
すぐに巣に駆け寄って、小さな通り道から中を覗く。
そこには、ひび割れの入った卵があった。現在進行形でひび割れは大きくなり、どんどんと存在感を増している。ボロボロとかけらが崩れ始めて中の様子が少しずつ見えてくる。
隙間から一本の足が出た。もう一本足が出る。二本の足が小さな卵の割れ目を押し広げていく。
卵の殻は結構固いらしく、三号は押し広げるのにてこずっている様子だった。アルマはそれを親の気分でハラハラしながら眺める。
数分の格闘の末、殻をすべて破り、三号がその姿を現す。
アルマと瓜二つな見た目。しかし、サイズは若干三号の方が小さい。生まれたばかりならばこんなものだろう。
二号と役割が同じなら、最終的なサイズは一メートルほどになるはずである。
一度は失われた片割れが違う姿、生命体になったとはいえ、もう一度アルマの前に顔を見せてくれたという事実にアルマは感極まる。
無事に三号が孵化したという安堵によって、アルマの気は完全に緩んでしまった。
するとどうなるか。これまでの疲労が一気にアルマの体に押し寄せる。数日間、正確な時間もろくに分からないまま、気を張り詰め続けていたのである。
アルマがその場に崩れ落ちて、すやすやと寝息を立て始めるのは当然のことであった。
アルマの意識が二号とつながっていたように、三号もまた、アルマと意識がつながっている。
アルマは、夢見心地のまま三号を操作し、アルマ自身を巣の中に運ばせる。アルマは、寝ぼけながらも、自分の生きるためにするべきことを自覚し、実行していた。
無事に比較的安全な場所に移動が完了したことがわかると、アルマの意識は完全に闇の中へと落ちていく。
三号も、アルマの意識が沈んだため、動きが止まる。生物としての本能だけが残り、周囲への警戒をしているだけで、ピクリとも動かない。
さっきまでが嘘のように魔物はピタリとここに訪れなくなり、二匹だけの静かな時間が過ぎていった。
読んでいただき本当にありがとうございます!
次回、三号と共に………!!
「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。ブックマークと評価もお願いします!!
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