41 馬鹿
「いやぁ、面白いなぁ。どうなってるんだろう。スキルってホントに不思議」
アルマは、目の前でひとりでに体が裂け、入れ替わり、元に戻った二号と蜘蛛の体をまじまじと観察しながら感嘆する。
目の前の光景は全て、スキルの効果である。アルマはこんなに【魔獣合成】が楽だとは思ってもいなかった。スキルはやはり、反則級の強さである。
前世でもこういう特殊なスキルを持っていたらアルマだって、すごく手際のいい死体処理係になれていたかもしれなし、他の職業に就けていたかもしれない。
アルマは、そんな物思いにふけていると、二号の体に蜘蛛の機能が適応した気がした。
瞳を開けて、まじまじと二号を観察する。
「内臓が入れ替わっただけだからやっぱり外身に変化はないね。不自然に張ってるとかへこんでるとかもないし、いいじゃん」
アルマは二号の周りをくるくると旋回して、全体像を眺める。
ひとしきり観察が終わった後、ふと、横目で蜘蛛を見る。
「……あれはもう、抜け殻だね」
抜け殻――文字通りである。脳みそを抜き取られてしまった蜘蛛は、もう何もできない。考えられない。体を動かせられない。
唯一、無意識に動く、心臓や、肺が動いているだけで、無意味に生きている。そこらの死体と価値はなんら変わりがない。
「来い」
蜘蛛に命令をする。しかし、蜘蛛の体はピクリとも動かない。
いくらスキルの効果であっても、脳がない相手には効果はないらしい。
と、いうよりも、アルマの【支配】は精神干渉系のスキルのため、脳がない時点でもう効果はない。解除されている、と考えるのが自然かもしれない。
「ってなると、とうとうお役御免かなぁ」
そう呟いたアルマは、ゆらゆらと蜘蛛に近づき、その体に止まる。
そうして、口を突き立てて血を吸い始める。
しばらくして、ようやくアルマが口を話す。その下の蜘蛛の息は、もうなかった。
「経験値も入るし、血も補給できるし、スキルも上がるし、二号も強化できたし、この蜘蛛最高だね。ありがと!」
そう楽しそうな雰囲気を出して蜘蛛から足を離す。
そして、周りを見渡す。
「まずは、ここから出るところからだね。………気が遠くなってきた…。」
辺りは一面真っ白。蜘蛛の糸のシェルターである。
脅威から逃れるために囲ったシェルターが、今、アルマと二号を外界隔離していた。
実に面倒である。後処理のことを一切考えていなかったアルマは、当然抜け出せる隙間など用意させているはずもない。
「二号、頑張って……」
現実から目を背けて二号に出口を作るようお願いする。そしてすぐに二号は動き出す。その巨大な脚で、蜘蛛の巣をべりべりとはがしていく。
剥がした糸は二号の足にすぐに絡まっていく。粘着質の糸のため、なかなか取れない。
一見、二号だけが働いて、アルマはぼさっとしているだけのように見える。
しかし、考えてみてほしい。アルマと二号の意識は共有されている。体を動かす意思も同一である。
…つまり、アルマのさっきの言葉は完全に現実逃避なだけであり、アルマ自身への精神的ダメージを和らげるために半分冗談で言っているだけだったのである。
アルマは働いていない、全部二号がやってくれる、と自身の心に言い聞かせないと悲しくなってしまうのであろう。
それからしばらくして、二号が問題なく通れるくらいの穴が開く。途轍もない時間がかかった。
「こういうところが体が大きいデメリットだよね。僕みたいな大きさのままだったらもっと早く出られたのに。」
穴をあけられたのも、体が大きくて、力が強い二号のおかげ、という事実からは目を背ける。アルマのようなか弱い蚊一匹であったら一寸の穴もあけられなかっただろう。
軽口を言えるくらいの精神的余裕が出てきた、ということだろう。素晴らしいことである。
それからまたダンジョンを探索して、オオトカゲと巡り合った。これでやっと性能テストができる。アルマは想定外のところで時間を使ってしまっていたため、はやく二号の実力が見た過ぎて、もう我慢できない。
「行くよ、二号!」
読んでいただき本当にありがとうございます!
次回、最初、命を脅かしたオオトカゲ、今のアルマは圧倒できるのか………?
「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。ブックマークと評価もお願いします!!
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