36 自立
アルマは動かない。代わりに、二号が動き出す。
二号の動きは虫の動きであるため、体の大きさから予想できる早さよりは結構早く動ける。素早い動きで、カエルとの距離を詰め、その体と共に比例して長く、太くなった口の針をカエルの頭にぶっさす。
ビチャッ、と血が噴き出す音がして、見ると、もうカエルの顔面は潰れて、絶命した様子だった。
「………。強くない?え…、もう正面から叩き潰せるんだぁ」
虫特有のすばしっこさを活かして距離を詰め、太い針で一撃必殺。あまりにも強すぎる確殺コンボ。
「もうこの階層に敵、いないんじゃない?…って言いたいところだけどさぁ。多分、鱗とか固いものに関してはこっちの針が傷ついちゃうよねー。それに、射程は結局短いから、カエルとかオオトカゲは長い舌で一方的に殴られちゃうかな。」
蚊生とは山あり谷あり。結局、そうも上手くはいかないものである。
しかし、アルマが確実に強くなったのもまた事実。物理で片づけられる相手は物理で。そうじゃない相手は精神攻撃で。このアルマの必勝方程式は完成しかけている。
アルマは、次は、他のスキルの性能も見たいよね。と、言うことで他の魔物を探して徘徊を始める。
前にアルマ、後ろから二号がそれを追って進む。アルマは天井すれすれを飛んでおり、【気配迷彩】と、そもそもの小ささ。それから後ろにいる二号のインパクトの大きさも相まって、その存在に気づけるものはほとんどいないだろう。少なくともこの階層のレベルの魔物には気づかれないと自負している。
しばらく進んだところで、蜘蛛の気配を【ミスティック・ハミング】が捉えた。
向かうアルマと二号。角を曲がった先には、やはりというべきか、蜘蛛が巣に餌がかかるのを待って、巣の奥に鎮座していた。
アルマの常時発動している【ミスティック・ハミング】と【魅惑の羽音】と【幻惑】の三重奏に、新しく【錯乱】が加わり、四つのスキルが一斉に蜘蛛の体内へと侵入していく。
脳をアルマの精神系スキルが犯していく。
その速度は、スキル進化前の比じゃない。
「それはありがたいんだけど、【錯乱】の効果がいまいち分からないなぁ」
【錯乱】の効果が出る前に【魅惑の羽音】と【幻惑】で蜘蛛の精神は乱れ、疑似的な錯乱状態に陥っているため、ほとんど【錯乱】の効果は実感できない。
が、それはいいことでもある。それだけ他のスキルの効果が上がっている、ということだから。それに、常時発動をしておけば、【錯乱】も、すぐに即戦力レベルまで強くなってくれるだろう。
見たところ、もう蜘蛛の精神的自立はなされていない。足元はふらついて地面にへたり込み、きっと視界に認識しているであろう二号への敵意や野生の殺意もなにも感じない。
つまり、
「【支配】」
このスキルが使えるということ、それに他ならない。
読んでいただき本当にありがとうございます!
次回、新しくて古い能力……。
「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。ブックマークと評価もお願いします!!
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