30 罠
「うぇ。気持ち悪い」
アルマは現在、絶賛体調不良であった。
蜘蛛の血の味が不味すぎたのか、本当に毒が混ざっていたのかは誰にもわからない。しかし、蜘蛛の血を吸った影響であることは間違いないだろう。
「この調子だとカエルの方もこの調子かな……」
見た目だけで言えば、蜘蛛よりもよっぽど毒々しい色をしているカエル。血の味を想像するだけでアルマの戦う気力がどんどんと削がれていく。
「これが盤外戦術……。恐ろしい」
実際にそういう効果もあるのだろう。だからそういう色の個体が生き残ってどんどん増えていったのだと思われる。魔物に一般的な進化論が適応されるかはわからないが。
毒々しい色で相手の食欲を削ぐ。魔物を除くほとんどの生物が相手と争うのは食事のためなことがほとんどである。これほど簡単で身を守るのに適しているものもそうそうないだろう。
さて、どうして今こんなにもカエルの話をするのか。それは、今アルマの目の前にカエルがいるからである。しかも、蜘蛛の巣に引っかかっている。
「間抜けだなぁ。っていうか蜘蛛も動かないのはなんで?」
現在アルマの視界には、蜘蛛の巣に引っかかっているカエル一匹。それから、そのカエルを静かに見守る蜘蛛が一匹である。
恐らくだが、蜘蛛は確実に、安全に、食事をするために、カエルの体力が尽きて、暴れなくなるのを待っているのだと思われる。反撃されて怪我を負うのは咄嗟に逃げられなくなったり、命に直結する。
「にしても、大型犬ぐらいある蜘蛛より大きいカエルってなんか、こわいよね。ホラーなんだけど」
そう言いつつアルマは【一点集中】を発動する。上手く、蜘蛛とカエルの両方が範囲に入るように調整をする。
端から見れば異様な光景であった。
蜘蛛の巣に捕らえられてじたばたと暴れるでかいカエル(アルマには気づいていない)。その様子をじっと動かずに見つめ続けるこれまたでかい蜘蛛(アルマには気づいていない)。気づかれていないことをいいことに、天井に張り付いて、相手を魅了し続けるアルマ。
この三すくみは誰一人として自分から動くことはなかった。一匹は動けない、とも言う。
このフォーメーションはしばらく続いた。
一番最初に動き出したのは、蜘蛛。体力の減りと、【魅了の羽音】の効果も相まって、ほとんど動きがなくなったカエルにとどめを刺そうと動き出す。
しかし、アルマはそれを阻止するべく、【幻】を発動する。蜘蛛に対して、カエルが暴れて見えるよう【幻】をかける。
蜘蛛の動きがぴたりと止まる。慎重派な蜘蛛にとって効果は絶大。完全に暴れているようには見えなくとも、暴れている可能性がある。この事実だけで蜘蛛は簡単に動けなくなる。ちょろいものである。
「せっかくなら二匹分の経験値、欲しいもんね」
そう小さく笑って、二匹の動きが止まるのを待つアルマであった。
読んでいただき本当にありがとうございます!
「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。ブックマークと評価もお願いします!!
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