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29 完勝

雨の影響で投稿遅れました。すみません。

 レベリングをする、といってもアルマにはこの階層のレベルの魔物達にはまだ全く一方的な試合なんか作れないだろう。なんなら一方的な試合にアルマがさせられる可能性の方が高い、まである。


 しかし、一方的には勝てなくても、有利な対面というのは存在する。


 それは蜘蛛。さっきの探索と観察でわかった蜘蛛の性質、それは、罠を張る、ということ。蜘蛛の最大の利点、長所は巣を張ることで、敵が勝手に自分に倒されに来てくれる、ということである。


 それは非常にいいことだし、蜘蛛が多く巣を張っている理由もそれであろう。しかし、見たところ、蜘蛛は全員と言っていいほど、巣での狩りにこだわっている。頼りすぎている、という表現の方が正しいのかもしれない。


 蜘蛛は自分から手を下さない。巣の中で待機して、罠にかかった獲物がいたらとどめを刺して、獲物を食べる。そんな戦い方をしている。


 つまり、戦闘経験がアルマよりも少ない。巣より離れた外側から【魅了の羽音】と【幻】をかけ続ければ、大した抵抗もなく、無力化できるのではないか、そうアルマは考える。


「駄目そうだと思ったらすぐ撤退しよう。命だいじに、だからね」


 命がなければすべてが無駄になる。せっかく蚊に転生して、自由に解き放たれた命をアルマは手放したくなかった。




 そうして、蜘蛛を探しに探索を始める。と、言っても、さっきの探索で蜘蛛がいたところにもう一度向かうだけである。


 すれ違う蜘蛛以外の魔物には反応しない。無関心。変に気を向けると勘付かれる可能性が上がりそうだとアルマは考えた。


「先輩は殺気を感じる~とか言ってたこともあったし、僕も、明確な敵意ぐらいはなんとなくわかるし、多分、生物っていうのは自分に向けられる感情に敏感なんだよね」


 そうこう考えるうちに、蜘蛛のもとへたどり着く。


 その蜘蛛はアルマの予想通り巣の内側、中央の辺りの天井で息を殺していた。


「改めて思うけど、この糸、ほんとに細いよね。知ってないと絶対にかかっちゃうよ。【ミスティック・ハミング】にもほとんど感知されないし……」


 そういいつつ、アルマは周囲の索敵をする。


 アルマは周りに他の魔物がほとんどいないことを確認して、【一点集中】を発動した。


「このダンジョンは前の階からそうだったけどさ、あんまり魔物の密度が高くないからいいよね。やりやすいな」



 そうこう言っているうちに、どれくらいの時間が経過しただろう。


 蜘蛛はこちらをまったく認識できずにその場から動けずにいた。蜘蛛の察知能力はオオトカゲほど高くないらしい。アルマが【魅了の羽音】を使っていても、違和感を覚えず、覚えたころにはもう動きは鈍い。その上、動けない原因もわかっていないため、アルマを排除する、という思考に至ることもない。


 アルマは、完全に蜘蛛の動きが止まってから、近寄り、お腹の横辺りに口をつける。


「…………まず。」


 酸味と苦味、えぐみが合わさったような味。若干舌もピリピリする。到底口には入れたくないような味。しかし、アルマの相手を殺すための手段は吸血しかない。【喰血】になったことで魔力も増えるらしいし、いいこと尽くめである、はずだった。


 ここまで不味い血がこの世に存在するとは。前のダンジョンのネズミでももう少し美味しかった。

 恐らく、蜘蛛の毒の影響だろう。こんなにも毒々しい配色の体をしていて毒がなかったらそれはそれで詐欺である。



 そんなことを思いつつ、アルマは最後の一滴をなんとか飲み干し、蜘蛛を殺した。


 この階層の魔物、初めての完勝である。

読んでいただき本当にありがとうございます!


次回、まだまだ、狩り。


「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。ブックマークと評価もお願いします!!


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