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22 公平

 音に反応してアルマは音のした方向をみる。気が緩んでいて【ミスティック・ハミング】を気にしていなかったようだった。


 アルマが視界に捉えたのは大きなトカゲのようなワニのような大きな爬虫類。成人男性より二回り大きいサイズで、全身をうろこで覆っていて、つやつやと光が反射している。


「爬虫類は聞いてないよね。血、吸えないじゃん」


 アルマが唯一敵を殺す手段。それは吸血である。しかし、うろこにおおわれていれば文字通り歯が立たない。


 普通なら潔く逃げるべきだろう。だがしかし、アルマは違った。まだ策がある。覚えているだろうか。アルマの生前の職業を。


「腕とかの関節を曲げないといけないところは、固いもの、配置できないんだよ。鎧だってそう。曲げられなくなるからね。それは、鎧に限った話じゃないよね。」


 アルマは元死体処理係である。死体を解体する過程で、鎧を引っぺがしたり、鎧の隙間から刃を入れてばらばらにしないといけないことは一日に何回もあった。鎧のどこに刃が入りやすいか。それだけで言ったら知識は鍛冶職人と同レベルである。


 魔物も例外はない。固かったら関節を曲げられない。だから内側は柔らかくするしかない。固くしたいと曲げたいは共存できない。


 アルマの生物の体の構造の知識はプロ。解体させられていた死体は人間に限られた話ではないのだ。


 アルマはとりあえず、といったように【一点集中】を発動し、【魅了の羽音】と、【幻】をオオトカゲにかける。


「問題はそこからだなぁ。関節から吸うことはできるけど、曲げられたら一瞬でぺちゃんこだよ。」


 アルマがいくら進化しようと、蚊である時点で紙装甲なことは変わらない。叩けば死ぬ。潰されれば死ぬ。それがアルマである。


 今までアルマは先手必勝。最初に魅了して無力化をしてから相手と戦うことを徹底していた。自分より素早い相手と戦ったら負ける可能性が高いからだ。それはこれから先も蚊である限り変わらない。


 こういう公平な状態で戦いがスタートすることはアルマにとって相当不利な戦いだった。加えて、相手に吸血がとてもしづらい。こうなれば魅了と幻で時間を稼いで無力化する他ない。


 既にロックオンされているため、【気配迷彩】も意味をなさない。


 すると、これまでにらみ合っていたオオトカゲがこちらに飛びついてきた。早い。デカい図体からは想像できないほど素早い一蹴り。


 しかしアルマは慌てない。飛び込んでくる予備動作は【ミスティック・ハミング】で確認済み。一足早く反応したアルマは舞うようにオオトカゲの飛びつきを避ける。


 オオトカゲが口を開けた。何かが勢いよく飛び出してくる。


 何かはアルマに直撃。アルマは後ろに吹き飛ばされることとなった。その体は少し濡れている。攻撃を食らったせいである。


「舌、伸びるんだね。カメレオンみたい」


 伸びてきたのは舌。唾液にくっついて丸呑みされなかったのは運がよかったと言えるだろう。



 今この場には少しずつ魅了と幻の影響を受けつつあるオオトカゲと唾液に濡れて体が重くなった蚊が対面していた。

読んでいただき本当にありがとうございます!


次回、オオトカゲとの決着です。アルマの戦略とは……!


「蚊の主人公、面白そう!」「アルマのサバイバルの続きが楽しみ!」とおもっていただけたら次回も読んでいただけると嬉しいです。ブックマークと評価もお願いします!!


毎日18:30に更新中です!

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