しーんっ、知らないから興味ない
僕は野球の試合を見るのが好きだ。僕自身も中学生のときまで野球をやっていた。高校でも3日間だけ野球部に所属していたが、覚悟を決めて頭を刈り上げたのにも関わらず、体育会系の上下関係と独特の挨拶習慣をみて興醒めして、野球をやめてしまった。高校野球を見てみると、いまだに坊主頭でプレイしていることに驚く。
野球の人気はここ数年だけみても低迷している。聞いた話だと、高校野球の参加校の数は、年々減少していて、バスケやサッカーの大会参加校の数よりも少なくなっている。野球は、遊ぶにしても道具の種類が多くてお金がかかる。その上、遊ぶにしても少人数では試合ができない。公園や空き地でボールを使うことが迷惑になっている現代では、野球を遊ぶ環境も少なくなった。一度も野球をすることなく、大人になる人がこれからは増えるだろう。
テレビで登場する元プロ野球選手は、野球の人気低迷をプロ野球と紐づけてコメントする。参加する人間が多いほど、競争が激しくなり優秀な選手が現れる可能性が上がるので、人気の低迷は野球界にとってマイナスだと説明する。
野球における一番の欠点は「ルールの難しさ」にある。子供の時から野球をしている人は忘れがちだが、野球はサッカーやバスケと比べてルールが難しい。どういうときにランナーは走ってよくて、どういうときにランナーはベースに戻らないといけないのか、テレビ中継を見ているだけではわかりにくい。野球は、直感的にわかるようなゲームではない。押し出したり、地面に手をつけたら負けになる相撲とは大違いだ。
人間はわからないものには興味を抱きにくい。興味がなければ、無関心になる。野球に無関心な人にとって、野球に関するテレビやニュースの放送は、あっても無いようなものだ。無意識のうちに排除されてしまう。興味がないから知らないのではなく、「知らないから興味がない」。知ってもらうことが人気商売では重要となる。
今に至るまで日本で野球の人気があったのは、戦後のテレビ放送のおかげだろう。その当時、野球といえば巨人だった。巨人戦だけがテレビで放送されていて、地域によっては巨人が攻撃しているシーンだけが放送されていたらしい。どうして当時の人が野球を見ていたのかといえば、野球以外にテレビで見るものが少なかったからだ。
同様のことはヨーロッパのサッカー人気と似ている。どうしてヨーロッパではサッカーが人気なのかと聞けば、休みの日にテレビで見ることができて、実際に観に行けるスポーツはサッカーぐらいしかないそうだ、
環境や状況の助けもあって、日本では野球の人気があった。しかし、現代はテレビに縛られずに、知りたいものや、見たいものをインターネットで自由にアクセスできるようになった。野球以外のスポーツも放送している。これまでのような独占的な人気の維持はできない。野球で遊ぶ以前に、「そもそも野球のルールがわからない」という人が増えている。実際に、プロ野球の球場ではスクリーンで野球のルールが紹介されている。
ルールを知らないのは、男性よりも女性に多い。女性が野球に参加できる環境をつくってこなかったツケが回ってきた。最近になって女子高校野球や女子プロ野球という言葉を聞くようになったが、対応が遅いといえる。女性の野球審判がいないのも不自然だ。男性でないと務まらない仕事ではないと思うが、いかがだろうか。
ますます高齢化していくことを考えれば、野球のシニア大会を充実させることもできる。ルールをシニア用に変更して、複数回の交代を可能にして、打撃だけの選手や守備だけの選手を使えるようにしてもいい。サッカーと違って、野球は走り続けるような持久力は必要ないので、高齢になっても遊べるのは利点だ。プロ野球選手だけでは見えてこない野球のよさがあるはずだ。
野球が好きな人は、「野球には野球のよさがある」と言う。僕もそうだと思う。時間制限では試合が終わらないところ、逆転が起こりやすいところが野球の面白さだと僕は思う。しかし、それを知るためには、見る人が野球のルールを知っていることが前提だ。野球が抱えている問題は、面白さよりも前にある。分からないが無関心へ変わる前に、手を打たなければならない。




