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ぼーっとながら、ふわっと考える  作者: 仲麻呂


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いやいやと、許せない僕たち

 欧米の人たちに比べて、日本の人々は自分の意見をはっきりと言わないことで知られている。周囲の意向や雰囲気に合わせて、その場を乱さないようにするのが得意だ。子供の頃から自分の考えや意見を言葉にするよう練習している人間とは反対に、日本では周囲をみて自分がすべきことを判断するように教えられる。「周囲を見てごらん」「みんなどうしているかな」と小学校のときに言われなかっただろうか。


 地理的な観点でみると、日本は島国で、山や川が多くて住める場所に限りがある。平地や盆地に人間が集まるので、お互いの距離間が近くなり摩擦が起こりやすくなる。そのため、喧嘩やいざこざが起きないように、直接的な表現は避けて物事を伝えることで円滑なコミュニケーションを培ってきた。自分の意見をはっきりと言わないのも、揉め事を事前に避けるための予防策だろう。


 「いつも綺麗にトレイをご利用いただきありがとうございます」という貼り紙は、暗にトイレを綺麗に使ってほしいというメッセージを伝えている。

 役所や店の人が「それを行うのは難しいですね・・・」と言った場合、それは「できない」「ムリです」を意味しているので、協力してなんとかできるものではない。「また機会があれば・・・」の「機会」が訪れることはほとんどないし、「また来てくださいね」という言葉は形骸化している。

 相手を騙すことが目的ではなく、衝突を未然に防ぐことが目的なので、嘘とはいえない。


 良いところもあれば、悪いところもある。事前にトラブルを避けようとする行為は、「奥ゆかしい」「謙虚な心」と賛美される。一方で、直接的な対立を避けるあまりに、意見をぶつけ合う議論や討論がうまくいかない。会議や話し合いでは、各人が周囲の意見を気にして、自分の意見を明確に打ち出さないので、誰がいったい何を考えているのか分かりにくい。議論が深まることなく、表面的な話し合いに終始することが多い。


 ズバリと自分の意見を伝える人がいると、その威圧に負けて周囲の人が追従してしまい、話し合いにはならずに、一方的に結論が決まってしまうこともある。

 つまり、「どういう意見か?」よりも「誰の意見なのか?」が重視される傾向がある。特定の人に付き従えば権威主義に近づき、前例や伝統などの過去のものに従うと、お役所のような官僚主義に近づく。どちらにしても、内容よりも形式や世間体を整えることが優先される。


 そのように考えると、事前にトラブルが起こらないようにする日本的なコミュニケーションは、いざ人間関係がうまくいかなくなったときに関係性を修復するのが苦手だともいえる。相手を許すのが苦手だともいえる。

 芸能人の不祥事やネットの誹謗中傷がわかりやすい例だ。問題を起こした人間がいると、周囲は徹底的にその人を叩く。標的となっている人間だけでなく、その人をかばったり、許そうとする人も敵として攻撃される。


 謝罪をしても、弁償をしても、罰を受けても、日本では許されない。罪を償っても、本人から汚名がなくなるわけではない。周囲の人間が忘れるまで汚名はまとわりつく。

 そう考えると、日本で「許す」というのは、「忘れる」や「知らない」という言葉に近いのかもしれない。積極的に許すのではなく、みんなが忘れるという消極的な理由によって許された状態になる。「許される」度合いは、時間の経過とともに比例している。


 しかし、そもそも「許す」という行為は、過ぎ去った時間とは関係ないはずだ。殺人を犯したものが10年逃げ続けても、許される度合いが大きくなるわけではない。法律に時効が存在するが、時効が過ぎても法的に許されるだけで、倫理的に許されるわけではない。

 許す方法がわからなければ、どういうペナルティを与えるのが適正なのかもわからない。その場の感覚でペナルティを与えて、しばしば暴走しているように見えるときがある。日本人は、相手を許すのが苦手だから、自分が失敗することを恐れる。勇気の有無ではなく、自己防衛の行動といえる。

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