99曲目 問題を解決するか
ミュゼスにミクスのことを任せた俺たちは、新たに配下に加えた魔物たちのところへとやって来ていた。
改めて眺めてみても、ものすごい数がいる。
それにしてもだ。魔族の、しかも魔王四天王の配下にいた魔物たちを自分たちの側に引き込めるとは、俺たちの音楽というのは、まったくもってとんでもないものだということを認識させられていた。
「まったく、こんな数の魔物、どうすればいいというんですか!」
冒険者ギルドはかなり悲鳴を上げているようだった。
まあ、二十や三十って数だからなぁ……。文句を言いたくなるのも分かると思うぜ。
だが、文句を言うならこんなとんでもない魔物を連れてきた、ディスコーとかいうやつに文句を言ってくれ。俺たちは自分たちのできることで応戦しただけなんだからよ。
「文句をいうのは分かりますけれど、支配さえ向こうに取り戻されなければ、心強い味方ができたわけではないですか。となれば、その支配を取り戻させないために、この子たちを手懐けた方がいいと思いますわよ」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ……」
フォルテに言われた職員は、言い返せないのかかなり顔を真っ赤にしている。血管まで浮かび上がって今にも切れそうな勢いだぜ。あんまり怒ると、血圧が上がるぞ。
真っ赤になった職員を見て、俺は心配でたまらなかったな。
「ですが、この街にはテイマーがいません。魔物を手懐けるとはいっても、難しいと思いますよ」
別の職員がやって来て、俺たちに意見をしてきた。よかった、話し合いができそうな冷静なやつがいたな。
『別に手懐けられなくてもいいとは思うぜ。要は、こいつらに自分たちと一緒にいた方が恩恵は大きいと思わせればいいんだからな。俺も、そうやって動物たちを手懐けてきたんでさぁ』
話を聞いていたベスは、自分の経験からそのように話している。
だが、俺たちの声はフォルテたち以外には聞こえない。俺たちが意見を言ったところで、フォルテたちを通さねえと伝わんねえんだぜ。
「あら、ベスさん。それはどのように行うのですかしら」
ベスを背負っているフォルテが、ベスに対して聞き返している。
『単純なところですと、仕事をするとそれに対して褒美を出すことですぜ。褒める、頭を撫でる、餌を与えるといったことでさぁ。動物どもにとって、自分に構ってもらえるっていうのが、一番大きいんですよ』
「なるほど……」
「さっきから、なにごちゃごちゃと一人で喋ってやがる!」
顔を真っ赤にした怒りんぼな職員が、フォルテに対して怒鳴ってくる。
「黙って下さいませんこと? というか、あなたでは魔物の相手は無理ですわね。叱ると恐怖によって支配することはできるものの、自分にとって別の有益なことが発生した時に簡単に離れられてしまうそうですわ」
「なんだと?!」
ギルドの職員が、フォルテに殴りかかろうとしている。いくらなんでも頭に血が上りすぎだ、このおっさん。
ところが、その前にリリアが割り込んで、作ってもらった短剣を突きつけている。
「やめて下さい。女性に暴力を振るうなど、立派な男性のしていいことではありませんよ」
ひゅう。我が妹ながら、ずいぶんな行動をとってくれるもんだな。まさか、相手に対して刃物を突き付けるとか、向こうの世界じゃ考えられねえことだもんな。
多分、フォルテを守ろうとしてとっさに動いたんだろう。この行動には俺もびっくりだぜ。
まあ、俺たちが驚いたのも当然だけど、職員もかなり慌てた様子を見せているな。まさかゴブリンに真剣なまなざしと短剣を同時に向けられるとは思ってなかったんだろうな。
「くそっ、ゴブリンごときが!」
男性職員は吐き捨てると、そのまま立ち去ってしまった。
まったく、これでは魔物の世話どころの話ではないな。俺たちはなんともいえない感じでその様子を見送っていた。
男性職員が姿を消すと、俺たちは改めて目の前に群れている魔物たちへと視線を向ける。スフォルたちとは仲良くしているものの、やはり魔物というのはからだがでかいし、見た目も怖いからな。
これを手懐けるって、普通の人間たちには手厳しいと思うのはまあわかる話だな。
そんなわけで、ミュゼスがミクスの問題を解決してくれるのを待っている間、俺たちはこの魔物たちの問題のことを解決することにした。
この手のことに詳しいベスがいるわけだから、まあ、当然といえば当然の展開か。
『よし、やってやるしかねえな』
俺たちは覚悟を決める。
『メロディ、フォルテ、モニー、リリア。俺たちで手本を見せて、ギルドの連中に魔物の扱い方を教えるぞ』
『そうですなぁ。やはりわからねえっていうんなら、見せつけてやんのがてっとり早え。やってやりやしょうぜ』
「そ、そうですわね。わたくしたちはお金も稼がなければなりませんし、依頼をこなしながらやればいいですわね」
「分かりました。では、早速何か依頼を受けることとしましょうか」
「私、頑張ります」
『私も付き合いますよ。乗り掛かった船ですからね』
俺が声をかければ、みんなやる気になっているようだ。
そんなわけで、魔物問題を解決するために、俺たちは一肌脱ぐことに決めた。
さあ、やってやろうじゃねえかよ。




