98曲目 王族ってのは強いんだ
まさか現在の国王の弟だと思わなかったぜ。どことなく周りの態度からそれなりに地位のある人物だとは感じていたが、さすがに王族とはな。
だが、あんまり畏まらなくていいっていうから、俺たちは今まで通りの態度を……貫けそうにねえな。
王族だと知るなり、そもそもガッチガチにしていたメロディが、さらに固まってしまっていた。
まあ、メロディは元々が平民。しかも村人だったからな。王族なんていったら、雲の上過ぎておそれ多いってことだろう。
俺たちでいうのなら、そこらの一般人が天皇陛下や皇族の方々と会うようなもんだからな。そりゃ、畏まってしまうってもんだ。
メロディの心境が察せてしまって、俺はなんと声をかけていいやら、困ってしまったぜ。
とはいえ、そのミュゼスは街の連中が対応してくれているので、俺たちはまだ気楽なもんだ。
とりあえず、同じ側の手と足が同時に出てしまうくらいに緊張したメロディと一緒に、俺たちはフォルテたちのいる会議の場へと足を運んだ。
俺たちが会議の場に姿を見せると、一斉にこちらに視線が向く。が、その視線はメロディではなくミュゼスに集まっていた。
「ミュゼス様? どうしてこちらに」
「ミュゼス・テヌート王弟殿下!?」
「えっ?」
フォルテとたちが驚く中、ティックの人間が言い放った言葉で、更なる衝撃が走っていた。
フォルテとモニーは、ゆっくりとミュゼスへと顔を向けていく。
「すまなかったね。俺はミュゼス・ミシア・テヌート。先代の国王の三男なんだ」
「ええええっ?!」
驚いたフォルテは、ソファーから立ち上がってカーテシーを決めている。さすがは子爵とはいえども貴族令嬢、カーテシーが美しすぎる。
「お、王弟殿下とは存じ上げず、数々のご無礼をお許しください」
「そんなにかしこまらなくてもいいよ。俺は王族ではあるけれど、今は冒険者ギルドのマスターだ。平民と同じに扱ってもらって構わない」
「そ、そういうわけにはまいりませんわ」
ミュゼスが畏まらなくていいというものの、さすがに貴族のフォルテにそれは無理だろうよ。
二人のやり取りはしばらく平行線になりそうだった。
「今はそれどころじゃないね。すまないが、ティックで起きたことの詳細を報告してもらいたい」
「はっ!」
どうにも解決しそうにないと思ったミュゼスは、フォルテとの話を打ち切って、ティックでのできごとと現状の報告を優先させた。こういうところは、さすが王族でギルドマスターといったところだ。
ティックの街の冒険者ギルドと自警団からの話を聞き終えたミュゼスは、今度はフォルテたちへと話を振ってくる。
「君たちからの報告はあるかい?」
「もちろんございます、王弟殿下」
ミュゼスから声をかけられると、モニーが畏まって答えている。
「その呼び方はくすぐったいから、今まで通り名前で構わないよ。それで、どういうことがあったのかな?」
「これは失礼しました、ミュゼス様。私たちの方はと申しますと……」
改めて報告を求められて、モニーは背筋をぴしゃりと伸ばして答えている。王弟殿下と呼ぶなとは言われたものの、さすがに王族相手じゃ、背筋を伸ばさざるを得ねえよなぁ……。
モニーも聖女だから、それなりにくらいは高いが、ここはメジョールカ大陸じゃなくてマイネリア大陸だもんな。向こうと同じように振る舞えないことは、モニーが一番わかってるってわけだ。
ミュゼスに対して、ティックの近郊で何が起きたのか、モニーたちが事細かに説明していく。当然だが、内容を聞いてミュゼスの表情はとても深刻なものへと変化していた。
「魔王四天王の一人、ディスコーですか……」
「はい。細目で眼鏡をかけた長身の魔族でした。その魔族が、魔物を操ってティックに襲撃をかけてきたのです」
「なるほど……」
ミュゼスは深く考え込んでいる。
しばらく悩んでいたかと思うと、モニーたちの方へと顔を向けてくる。
「今までの魔族の襲撃で、四天王が出てくることはなかったんだ。ということは、魔王軍にとって不利となる状況がティックに集まっていたということになるだろう」
ミュゼスは、そういいながら俺たちへと視線を向けていた。
「おそらくは、聖器が揃うことを恐れたのでしょうね」
「なるほど」
あごに手を添えながら、ミュゼスはそのように推測している。俺たちとしても同感だ。
そうかと思えば、ミュゼスは俺たちへと視線を向けてくる。
「聖器は、全部でよっつではなかったですかね。もうひとつは、一体どこにあるのでしょうか」
「そ、それは……」
頭が切れる男だな。さすがは王族ってところか。国をまとめる連中だから、このくらい頭の回転が速くねえとやってられねえってわけなんだな。
俺が感心している中、質問をされたモニーたちが答えに窮してしまっている。まっ、残りの一人の性格を考えりゃ、こうなるかなぁ……。
ドラムの野郎はやる気十分なんだが、使い手であるミクスがかなり頑固だ。あの親父譲りっていう表現がぴったりなくらいだぜ。
モニーもフォルテも話そうか迷っているみたいだが、ミュゼスから強く迫られると、すべてを話すことにしたようだ。
「……なるほど。分かりました、そちらも俺に任せてもらうとしようか」
事情を聞いたミュゼスは、何か策ありといった感じで笑みを浮かべている。
一体何をするつもりなんだかな。お手並み拝見といこうじゃねえか。




