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異世界バンド~俺たちの熱い魂(ソウル)で異世界を救ってやるぜ!  作者: 未羊


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94/110

94曲目 そろうバンドマン

 外が騒がしくなってきている。


「なんだっていうんだ。やかましいな」


 ミクスがかなりイラついているようだな。


「魔物だ! 街に魔物の群れが迫ってきてるぞ!」


「なんだって?!」


 外から慌てた声が聞こえてくる。どうやら、俺様たちのいるティックの街に魔物が襲い掛かってきたらしい。

 さらに聞こえてきた話によりゃあ、首になんかつけた魔物たちが応戦してくれているらしいが、いかんせん数が違いすぎるということらしい。冒険者とやらも、少し出払っているために厳しいとかいう声が聞こえてくる。


「おいおい、どうすんだよ、この状況は……」


 いつも強気なミクスも、魔物相手となるとちょっと怖がる見てぇだな。こういうところは年相応ってやつか?

 となりゃあ、俺様の出番ってわけだな。


『おい、ミクス』


「なんだよ、ドラム」


 ここぞとばかりに、俺様はミクスに声をかける。


『俺様を外に連れ出して、こう叫んでくれ。「変形」ってな』


「なんかわかんねえけど、やってやらぁっ!」


 切羽詰まった状況ゆえに、俺様の発言に疑問も持たず、ミクスは俺を抱えて外に出ていく。


「変形っ!」


 俺様が言った通りに、外に出たミクスが叫んでくれる。

 よっ、待ってたぜ、この瞬間(とき)をよぉっ!

 言葉を受けて、俺はタムをふたつ出現させて、シンバルのスタンドと一緒にどんどんと変形していく。

 キックドラムの前輪と、タムのサドルと後輪、そして、スタンドでそれらをつなぎ合わせて、バイクの完成だ。

 なんで俺様がこんなことをできるかっていうと、バンドの中でずっとドライバーも担当してきたからだ。どうやら、ドラムのパーツを使って乗り物になれるみてえなんだよ。


『おう、俺様にまたがってくれ。音楽が聞こえてきたから、そこに向けて走っていくぜ』


「お、おう。よくは分からねえが、いう通りにしてやらぁ!」


 状況がよく分からねえミクスは、俺様の勢いに押されていう通りにしか動けねえ見てえだ。やっぱ、こういう時は勢いだよな。


『よっしゃ、たぎってきたぜぇっ!』


 ミクスを乗せた俺様は、体に宿る魔力ってやつで車輪となったドラムなどを回転させる。


「うわぁっ?!」


 乗っかったミクスが叫び声をあげる中、俺様はリーダーたちのところへと向けて一気に走り抜けていく。


『オラオラ、邪魔だぁっ!』


 途中、迫りくる魔物どもを跳ね飛ばしながら、俺様は一気に突き進んでいった。

 ここは異世界だ。向こうの世界の刑法も道路交通法も関係ねえぜっ! だが、よいこのみんなはちゃんとルールを守るんだぜ?

 俺様は、ミクスが恐怖におびえる中、悪路を突き進んでいった。


『おう、リーダー、俺様もオケに混ぜてくれよな!』


『ど、ドラム? なんだ、その姿はよ?!』


 現場に到着した俺様の姿を見て、リーダーたちが戸惑っているみてぇだ。まあ、ドラムがバイクになってりゃあ、誰だって驚くだろうぜ。バンドマンなら、なんてことしてんだって文句も言ってくるだろうよな、ガハハハハッ!

 だが、今は緊急事態だ。気にするところじゃねえ。


『ミクス、降りてくれ。いよいよ俺様のビートの見せどころだからよ!』


「お、おう……?」


 完全にヘロヘロになってしまったミクスが、バイク形態の俺様から降りる。

 それを確認した俺様は、リーダーたちの後ろで再び変形する。


 ガッシーンッ!


 見ろ、これが俺様の真の姿だ!

 リーダーたちの後ろで、俺は完璧なドラムセットの姿を披露する。


『さぁ、ミクス。俺様たちの魂のリズムってやつを見せてやろうじゃねえかよ』


「あ、ああ……。わけが分からねえが、こうなりゃやけだ!」


 ノリがいいのか、ミクスは俺様の中心にある椅子に座っている。次の瞬間、その手にはスティックが現れて、しっかりと握りしめられていた。


「初めて見るってのになんだかわくわくが止まらねえ。どうしたらいいのかが、手に取るようにわかってくるぞ」


 ミクスの表情が、続々と興奮した表情へと変わっていく。


『っしゃあっ! リーダー、一発かましてやりやしょうぜ!』


『おうっ! ドラムもそろった、本来の俺たちの音楽ってやつを、見せてやるぜ』


『ふふっ、ノッてきましたね。モニーさん、参りましょう』


『フォルテ、俺たちもアゲていこうぜ』


『メロディ、リリア。いくぜぇっ!』


「はいっ!」


 俺様の声に、全員の心がひとつになる。

 ミクスがスティックを打ち、俺様たちの音楽がその場に響き渡る。

 俺様との初のコンビネーションだってのに、ミクスのやつはまるで分っているかのように俺様を思いっきり叩いていやがる。やはり、俺様とミクスは互いに惹かれ合った存在のようだな。


「くっ、なんだ、これは……。先程までとは、まるで違う……」


 リーダーたちの前で余裕こいた態度で立っていた、眼鏡をかけて細目やろうがびびってやがるな。


『いいぞ。魔物どもも完全に怯み始めた。このまま、俺たちの音楽で、魔物どもの動きを止めてやるんだ』


「はいっ!」


 リーダーの声に、少女たちが元気よく返事をしてやがるな。こいつらが、リーダーたちの相棒ってわけか。

 ふっ、後でゆっくりと話をさせてもらうとしようじゃねえか。

 今はとりあえず、目の前にいる気に食わねえ奴を追い返すことだぜ。


 さあ、俺様たちの音楽をとくと聞きやがれっ!

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