89曲目 帰りが遅いです
私はリリアです。
兄さんたちから言われて、私は別行動をしていましたが、無事に依頼をこなして街に戻ってきました。
冒険者ギルドで報告を終えて宿に戻ってくると、どういうわけか兄さんたちはまだ不在でした。ものすごく時間が経ってるんですけど、どういうことですかね。
宿の人に確認をしてみますと、ジョッカ鍛冶工房へと向かったまま、まだ戻ってきていないとのことです。ならば、私たちも向かうことにしましょうか。
ですが、さすがに大所帯では難しいですね。ウルフのみなさんには宿の警備を兼ねて残ってもらいましょうか。
私が言い聞かせますと、スフォルたちはとても残念そうにしていましたね。逆に同行できることになったアニマートは誇らしげにしています。
さすがにお留守番だけでは可哀想なので、お土産を持って戻ることを約束しておきますと、少し機嫌を直したようです。なんとも現金なウルフたちですよ。
私は宿の人たちにスフォルたちをお願いしますと、場所を確認したジョッカ鍛冶工房へと向かっていきました。
「あのー、すみません」
私はジョッカ鍛冶工房までやってきました。肩にアニマートを乗せたまま、声をかけながら中へと入っていきます。
「おや、リリアちゃん」
「わっ、ピッコロさん。オカリナさんとフルートさんも」
鍛冶工房の中では、護衛と監視を兼ねてついてきて下さった冒険者の三人が立っていました。
「な、何をなさっていらっしゃるんですか?」
「なに、武器を見てもらっているんですよ。せっかく鍛冶の街の鍛冶工房に来たのですから、状態などを確認してもらおうと思いましてね」
「な、なるほど……」
事情を聞いて、私はとても納得がいきました。
そしたら、今度はオカリナさんから質問をされてしまいます。
「それより、別行動で依頼を受けていませんでしたか?」
「あっ、それなら先程終わりました。宿に戻ったら誰もいませんでしたので、こうやって様子を見に来たんです」
「そうなのね」
みなさん、意外と私の行動にも納得して下さいましたね。
「なんでい、その小娘は」
次の瞬間、なんともガラの悪い声が聞こえてきました。
バンダナ筋肉ひげ親父さんがこっちを見ています。
はっきり言って怖いですよぅっ!
「肌の色といい、耳の形といい、ゴブリンか。よくもまぁ、人里にやってこれたもんだな。この嬢ちゃんたちと話しているところを見ると、悪いやつじゃあなさそうだがな」
すっごく睨んできてます。なんというかあっちの道の人たちっぽい感じで怖いですよ。
「まあ、おめえさんも欲しいもんがあったら何でも言ってくれ。そこいらの汎用装備でもいいが、やっぱ装備ってのはその人に合ったものってのが一番だぜ?」
見た目は怖いですけれど、言っていることは優しいですね。人は見た目に寄らないとは言いますけど、まさにその通りですね。
目の前のおじさんがそういうことを仰ってくれましたので、せっかくなので、私はお言葉に甘えましょうかね。護身用の短剣くらいは持っておきたいです。
せっかくだからと私は注文を出すことにしました。そうすると、おじさんは私の手をじろじろと見てきます。
「右手用か? 左手用か? あとは詳しい用途も聞かせてくれ。どういった状況で使うかによって、装備ってのは細かく調整しなきゃいけねえんだ」
「護身用の短剣です。右手で使います」
「分かった。じゃあ、右手をもっとじっくり見せてくれ」
おじさんにそう言われましたので、私は右手を差し出します。
見せてくれと言っていたくせに、おじさんは私の右手を両手でぐりぐりと触り始めました。くすぐったい。
しばらくすると、おじさんはようやく手を放してくれました。押しつぶされるかと思いましたよ……。
「金属は、そうだな……。魔力があるみたいだし、魔法銀でいくとしようか」
「魔法銀?」
なんか聞き慣れない単語ですね。
私が首を捻っていますと、魔法使いのフルートさんがわざわざ説明をしてくれました。
その説明を聞いて、私はあの金属のことかとすぐに理解しました。なるほど、大人の事情というやつですかね。つい苦笑いをしてしまいます。
装備のことで話をしていると、奥の方から騒ぎ声が聞こえてきました。
「あれっ、奥の方に誰かいらっしゃるんですか?」
「ああ、娘が客人と話しているんだ。連れなら、覗いてきたらどうだ? でき上がるまでには時間があるわけだしな」
「分かりました。それではお邪魔させていただきます」
私はピッコロさんたちと別れ、工房の奥へと入っていきます。
声の頼りに、私は部屋へと近付いていきます。
もう少しで、声の聞こえてくる部屋だと思いましたら、いきなり扉が開きました。
「出てけ出てけ! お前らみたいな失礼な奴は、二度とごめんだぜ!」
それと同時に、大きな叫び声が聞こえてきました。
「えっと、あの……」
目の前で扉が開いたので、私はびっくりして声を出してしまいました。
「あん? 誰かいんのか?」
驚く私の声に、中から声が聞こえてきます。
中からひょっこりと顔を出したのは、赤い逆立った髪の毛が特徴の、男の子……いや、女の子でした。




