81曲目 テヌート国王との謁見
国王への謁見だが、意外とすんなりいけた。普通こういうのは何日も前に予約して、待たされるものじゃないのだろうか。
うん、実に一日も待たされなかったぞ。城に到着して門番にちょいちょいと話をしたら、すぐに会ってくれることになったんだからな。いいのか、これで?
もしかしたら、これが聖女パワーとかいうやつなのだろうか。
……モニー、君は思ったよりもすごいやつなんだな。
俺がちらりとモニーへと視線を向けると、モニーは無言でにこりと返してきた。よく、目のない俺の視線が分かったな……。
それはそれとして、俺たちは謁見の間まで通されていた。
今までスコア国王、ビブラート国王と会ってきたが、国が違えば、また違った緊張感があるな。モニー以外はガッチガチだぞ。
『だ、大丈夫か?』
「へ、へ、平気ですわ」
「国王様にお会いするだなんて、心臓が口から飛び出す勢いです……」
あ、ダメだ。メロディはしょうがないとしても、フォルテまでこれじゃなぁ……。リリアにいたっては無言になっているぜ。
そんな中、俺たちをここまで連れてきたミュゼスが声をかけてくる。
「緊張は分かるけれど、もう少し気楽に構えてほしい。俺もいるのだし、フォローはいくらでもしよう」
「そうですよ。程よい緊張の方が、失礼はしにくくなります。なるべく普段に近い感じで構えていて下さい」
ミュゼスの言葉に、モニーも乗っかってくる。
そうは言われても、感情も声も表情も出ることのない俺たちならまだしも、さすがにメロディたちには酷というものじゃないだろうか。
あまりのガチガチっぷりに、俺たちはつい心配になっちまう。
とはいえ、早くドラムを見つけ出して、魔王を倒しに行かなきゃいけないんだ。頑張ってもらうしかないな。
俺たちがいくらまごつこうが、問答無用で俺たちは謁見の間の中へと入って進んでいく。こうなったらなるようになれというところだ。
フォルテすら頼りにならないこの状況では、モニーとミュゼスの二人にほぼかかっている。頼むぜ、聖女様よ。
謁見の間に入ると、メロディたちは国王を前に跪く。ドレスだろうとなんだろうと関係ない。
「おお、ミュゼスではないか。話があるからというからすぐに呼んだのだが、なんだね、その少女と魔物たちは」
テヌート国王が、俺たちの方を見て首を傾げているようだ。
そりゃまあ、少女たちが変な物体を抱え、魔物たちを従えているんだからな。そういう感想になるのも無理もない話だ。
「この者たちは、メジョールカ大陸からやってきた者たちになります。どうやら、あちらで魔王を討伐するように命令をされているようなのです」
「なんだと?! それは真なのか?」
テヌート国王の反応を受けて、ミュゼスはこくりと頷いている。そうかと思えば、モニーへと近付いていく。どうやら、向こうで受け取った国王からの令状を見せてほしいようだった。
モニーは申し出を受け入れ、スコア国王から受け取った王令状をミュゼスに渡していた。
謁見の間にいる兵士を介して、王令状はテヌート国王の手に渡る。その令状に目を通したテヌート国王は、なんともいえない表情を浮かべて書面を読み進めている。
「なるほど……。聖女殿たちが持つものは、『聖器』というわけか。とはいえ、さすがに少女たちには酷すぎるのではないだろうか」
テヌート国王は、頭を抱えていた。どうやらこの国王はまともな感性の持ち主みたいだな。
「して、そなたらはこの国に何を望む」
王令状を読み終わったテヌート国王は、俺たちへと問いかけている。正確には、モニーたちだがな。
こういう質問をしてくるのも、当然といえば当然だ。ただの冒険者であるならば、国王に会う必要なんてものはまったくない。冒険者ギルドで事足りるからな。
だが、国王にまでわざわざ会いに来たということは、冒険者ギルドでは足りない何かがあるということだ。そこをわざわざ突いてきたというわけだ。この国王、ずいぶんと頭の回転がいいな。
「はい、私たちには魔王を倒すという目的がございます」
テヌート国王の質問を受け、聖女であるモニーが回答を始める。さすが、国王相手でも物怖じしないな。
「そのためには、私たちの持つ聖器をすべてそろえる必要があると思うのです」
「ふむふむ。その聖器とやらが、どこにあるのか分かっているような口ぶりだな」
「はい。マイネリア大陸にあることは分かっています。でなければ、私たちメジョールカ大陸の人間が、わざわざこちらまで渡ってくることはございませんからね」
「その通りだな」
モニーの言い分に、テヌート国王は分かっているという感じだった。これが為政者というやつか。
互いに理解力が高いということもあって、交渉は実にスムーズに進んでいく。
内容は実に充実したもので、ひとまず、自分の権力が及ぶテヌート国内で自由に動けるように王令状を出してくれることになった。
「とりあえずは、テヌート王国の中ではこれでスムーズに動けるようになるだろう。さすがに他国へは口利きくらいしかできぬが、それでよいかな?」
「はい、十分でございます。ありがとう存じます、テヌート国王陛下」
十分すぎる成果だと、モニーはテヌート国王に頭を下げていた。
なんにしても、これでテヌート王国内では自由に動けるようになりそうだ。
待ってろ、打弾弩羅夢。必ず見つけてやるからな。




